かつて土曜日18:30のフジのアニメと言えばタツノコの時間帯だった…
という発想になる方はすでにアラフォーなんですよね。
日曜18:00と共にこの時間帯はまさにタツノコの独壇場でした。
今回は2018年5月現在、その時間帯に放送された
最後のタツノコアニメがお題です。

炎のアルペンローゼ ジュディ&ランディ

1985年4月6日〜10月5日 全20話
フジテレビ系放映・製作 タツノコプロ




第二次大戦を舞台に激しく生きる二人の運命
あらすじはこんな感じ。

時は第二次世界大戦の前夜。
場所は戦火と軍靴の音が近づきつつあるヨーロッパ。
記憶を失い、自分の両親を求めて旅をする少女がいた。
名はジュディ。旅の途中で出会った少年ランディは運命的な出会いを感じ、
ジュディを命がけで守るため共に旅をする決心をする。
記憶を失ったジュディの脳裏に閃光の如く浮かんでは消える
謎の歌・アルペンローゼ。その意味とは何か?
そしてジュディを執拗につけ狙う冷酷無比なグールモン伯爵と、
その背後に見え隠れするナチスの影。ジュディの過去の秘密とは?
そしてジュディは両親にめぐり合えるのか?
不気味な戦争の影が迫る中、
様々な障壁を乗り越えて二人は旅を続けていく…。



タツノコ入魂の歴史大河アニメになるはずが…

タイムボカンシリーズ以降、タツノコアニメの時間帯だったフジ土曜18:30の枠。
本作ははからずもその最終作となってしまった作品です。
タイムボカンシリーズが「イタダキマン」を機に土曜19:30枠に移動し、
もう一つのタツノコ枠だった日曜18:00枠を廃して土曜18:30枠に統合。
イタダキマンが打ち切りになって土曜19:30枠が消滅したため、
タツノコ枠は1983年以降、土曜18:30枠一本に絞られてしまいます。

この枠は日曜から移ってきた「未来警察ウラシマン」が4クールの放映を全うした以降は
「OKAWARI‐BOYスターザンS(全34話)」
「よろしくメカドック(全30話)」と、3クール未満の作品が相次ぎ、
また番組自体もローカル枠セール扱いになってしまったので、
地方によってはオンエアすらされないという扱いを受ける事になります。

この時期のタツノコは機甲創世記モスピーダ(1983.10〜1984.3 全25話)
超時空騎士団サザンクロス(1984.4〜9 全23話)などの
リアルロボットものも手がけていましたが、
何れも評価は芳しいものではなく、打ち切りとなってしまいます。

柱となるシリーズを失った事、次世代のシリーズを生み出せなかった事もあってか、
タツノコは製作を一本体制として挑むようになり、
その先駆けが本作「炎のアルペンローゼ」だったのですが…

タツノコプロの製作アニメとしては初の少女漫画原作のアニメーション
(風船少女テンプルちゃんはオリジナルなので)
本作を皮切りにタツノコは少女漫画原作アニメを三本続けて製作する事になります。
(炎のアルペンローゼ・昭和アホ草紙あかぬけ一番!・光の伝説)
そんな少女漫画原作のチョイスにおいて、歴史大河ロマンの様相を呈する
「炎のアルペンローゼ」をチョイスするあたり、タツノコの意地と意気込みを感じますね。

スタッフも「ただの少女向けアニメにはしない」と言わんばかりに、
熱い想いを雑誌のインタビューで語っています。


  

うえだひでひと(チーフディレクター)
基本的に赤石さんの原作に沿って進行していますが、
アニメでは各キャラクターの性格を明るめに設定しています。
まあ、主役の少女ジュディが最初は看護婦見習いの
役で登場するのが原作と違うところです。
また、時代的に当然ナチスが関係してきますが、
あまり前面に出ることは無いでしょう。
また、主人公ジュディは別れた母親を探すのが目的ですが、
それよりも一人の少女が様々な人間と出会い、
無くした自分自身を発見していくドラマを見てほしいです。
ランディなど、魅力的な少年も登場しますし、
グールモンなど悪訳も美形で、「母子もの」というよりも
「女児ものハードロマン」と受け取ってほしいですね。
小さい女の子を泣かせてあげて、
年長の女性にはニコニコ笑ってもらい、
男の子には可愛いジュディを見てもらう。
そんなアニメにしたいと思ってます。

敵があってこそヒーローが存在する。ということは、
平和で安定した現代は、敵なきヒーロー不在の時代なのです。
その点こちらは少女が主役の愛と感動のドラマなので
「スチュワーデス物語」のようにテレずにやります。


澤井幸次(サブディレクター)
時代背景が50年前とは言え、実在のヨーロッパですので、
ウソが描けないので苦労します。建物などは同じヨーロッパでも
国によって違うはずですので、スイスならスイス、フランスならフランスの
それぞれ代表的な建物を参考にして、
特徴のポイントを掴んで変化をつけるようにしています。
衣服についても「その時代」のイメージをわかせるようなものを
選んでいます。とにかく古すぎてもいけない、
新しすぎても駄目なわけで。
(この時代のヨーロッパの風俗を)全て一から勉強しなおしですよ。


由井正俊(プロデューサー)
戦争が舞台の大河ドラマ的展開、
ジュディのかわいさ、
見せ場の盛り上げの三つを見どころにする。


恩田尚之(作画・原画担当)
ひとくちに「少女マンガ」と言っても、ぼくらがすきなのは「くらもちふさこ」や「内田善美」であって、
"純少女もの"ではないんです。だから「今度うち(ビーボォー)で
「ちゃお」に載ってる「アルペンローゼ」をやるから」と聞いてから、
はじめて本を見たんです(笑)。
ビーボォーではリアルなものばかりをやっていたので、この作品みたいな絵は難しかった。
すぐ骨格を持った立体になり、絵が硬くなってしまう。
もっと清楚な感じを出したいんですけどね。


庄司菜穂子(文芸担当)
月刊ちゃおでおなじみの赤石路代原作「アルペンローゼ」が
いよいよスタートしました。(中略)
少女アニメらしからぬスリルとサスペンスを盛り込んで、
タイトに、そしてメロウにと展開されていく愛の少女ハードボイルドの開幕。
どうぞご期待下さい!

月刊ジ・アニメ&月刊アニメージュインタビュー記事より抜粋





失われた私の記憶を求めて…そして
アニメは冒頭の出会いと、原作では途中ジュディが髪をバッサリ切るくだりをカットした以外は
基本的に原作に忠実に進行していきます。
失われたジュディの記憶を求めて、父や母を訪ねてヨーロッパを旅するジュディとランディ。
そのジュディを始末せんものと執拗につけ狙うナチスの兵士たち。
CDのうえだひでひと氏は「ナチスはあまり前面に出てこない」と言ってましたが、
何の事は無い。メチャメチャ物語に絡んできます。
ジュディの両親がザルツブルグにいると知り、列車に乗り込んだジュディを爆弾で殺そうとしたり、
父親がスイスとオーストリア国境にある療養所にいると知り、
ジュディが向かうとナチの兵隊が追いかけてきて乗り込んできたりと、
とにかく何が何でもジュディを始末せんものと、これでもかこれでもかと追撃の手を伸ばします。
ストーリーは自分の記憶と両親を探してヨーロッパ中を旅するジュディとランディ、
追撃し続けるグールモンとナチスの面々からの逃避行、
その道中で天才音楽少年レオンハルト、スイスの英雄ギザン将軍などの
出会いなどを中心に進行していきます。
途中ジュディは父に出会うのですが、記憶がないため本当に父かどうかすらジュディには解らないというのが悲しいです。
行く先々で網を張るグールモンとナチの面々。その都度その都度人々の思わぬ助けを授かって、
彼女らはナチスやグールモンから逃れ逃れて旅を続けていきます。

そんな折、ランディは、グールモンのギザン将軍暗殺計画を知るに至ります。
ギザン将軍をにこの事を知らさねば!
しかしギザン将軍は身を隠していて連絡の取りようがありません。
このままでは朝10時に暗殺計画が遂行されてしまう!
どうしたらこの計画をギザン将軍に教えることが出来るのか…?



ハード少女ロマンアニメの壁
以上が19話までの大まかなストーリーの流れ。
なぜジュディはグールモンやナチスにここまで執拗に狙われるのか?
アルペンローゼの歌の秘密とは?謎が謎を呼ぶミステリアスな展開。
追跡と逃避行を繰り返すサスペンス感あふれる演出。
歴史大河少女アニメと呼ぶにふさわしい作品と言えます。

しかし、視聴率は正直ずっと低空飛行のままでした。
前番組「よろしくメカドック」が常時15〜6%の視聴率をマークしていたのに対し、
アルペンローゼは最高で9・0%。(ビデオリサーチ・関東地区)
この時間帯はタイムボカンシリーズをはじめ
「ウラシマン」「スターザンS」など、どっちかというと男児むけ番組をやっていた枠。
そこに突然女児向けアニメが始まったのですから、
従来の視聴者にはこれがきっかけで離れた子供も多かったのでは
と考えられます。結局一度も二桁の視聴率に届く事はありませんでした。
この状況にフジテレビの対応は早く、あっという間に打ち切り決定。
2クールに満たない20話をもって、強引に最終回にされてしまいました。
故にこの最終回たる20話、ラスト2分前までは本当に普通の第20話として進行しています。
驚くのはラスト2分…。



驚愕!ラスト2分の最終回!
では、結果として最終話となってしまった20話とはどのようなエピソードだったのでしょうか?
以下に概要を紹介します。


グールモン伯爵は暗殺部隊を街中に張り巡らせ、スイスの英雄ギザン将軍の暗殺作戦を敢行しようとしていた。
しかし、ジュディがラジオを通じて暗殺部隊が潜んでいる事を発言。ラジオを聴いていたギザンは
事の真相を知り引き返し、暗殺は失敗に終わる。


ジュディたちは潜んでいたルノーらに捕まり、強制収容所に送られそうになる。
が、護送車を運転していたジドが脱出の機会をわざと作って彼女らを逃がす。
「お前らをずっと追い掛け回していくうちにな、ナチの連中に殺させたくないな、って思っただけさ。」
が、思わぬアクシデントで脱出は失敗。ジドともども全員処刑されそうになるが、
そこに現れたギザン将軍に助けられる。


ギザンをスイスに行く前に必ず殺さねば…グールモンは執念で暗殺を強行しようと目論むが
ギザンは飛行機でスイスに出航。「俺の夢が…」崩れ落ちるグールモン。
自分を救ってくれたジュディたちにギザンは感謝する。
「ジュディ、ありがとう。私は君たちに救われたこの命をスイスの為に捧げるつもりだ。」
無事ギザンを見送った後、ジュディとランディはマルセイユへ、
レオンハルトはオーストリアへと別れて旅立つことに。だが、ジュディの前にギザン暗殺に失敗した
グールモンが現れ、彼女に銃を向ける。が、何もせず、ほくそ笑みながら去っていく。
「もう失うものは何も無い。手に入れるのはこれからだ。フフフ…」


グールモンの不敵な笑いの意味は?そしてその笑みが暗示するかのように、
戦火は拡大の一途を見せ始めていた。ランディはつぶやく。
「どんなことがあっても、ジュディを守ってみせる!」

そして…1940年6月14日、ドイツ軍はパリに侵入した。この年フランスは降伏し、
パリはドイツ軍の占領下におかれ、厳しい苦難の時代を迎える事となり、
戦乱の嵐は衰える事を知らず、全世界にと拡がっていった…。


と、ここまでが第20話Bパート終了2分前までの展開。そうか、これから過酷な運命に…と思ったのも束の間


突然図の様な画面に変わり、


火の悪魔が右から左、左から右へとGIFアニメみたいに動き回ります。
…これって、戦火の戯画化?と驚く間も許さないように
突然スイスの雪山と吹雪の画。


これに火の悪魔がかき消されて、
「だが、幾多の困難を抱えながらも、スイスを救ったのは、氷に閉ざされたアルプス連峰と、
ギザン将軍をはじめとする、多くの人々の勇気であった」
というナレーション。
あれだけ20話かけて引っ張ったナチスの驚異が
あっけなく消える展開に唖然としてたら、
高らかに主題歌が流れ、突然


図のような画面に変わります。
いきなり時代は戦後?
平和を謳歌するようなものに。
なに?なにがあったの?という動揺を見せる間もなく
いきなりこの画面。


おいおい、視聴者ぶっちぎり過ぎですよ。
そして、ラストいきなりこの画にジュディの語りがカブります。


高山に咲く薔薇と呼ばれる紅の花・アルペンローゼ。
風雪に耐え、可憐に咲くその姿は
山往く人々を和ませる…。


視聴者は和むどころか混乱してますよ。この唐突な展開に。
グールモンの野望とは?ジュディの記憶は?アルペンローゼの歌に秘められた秘密は?
そんなもん全部スッ飛ばしての無理矢理ハッピーエンド。
当時TVで観て頭が真っ白になりました。

このあとシリーズスタッフのテロップが出て強引にエンドマーク。
この急転直下のラストに愕然とした視聴者はどのくらいいたのか…?

低視聴率が理由とはいえ、あまりにも突然の打ち切り。
スタッフの無念さがジンジン伝わってくるような強引なラストの展開。
当初一年の予定で始まった本作は、
結果として非常に歪な形で終了することになりました。
そして、この作品を最後にタツノコアニメはフジテレビから姿を消し、
(2011年4月、ノイタミナ枠で放送された
「C」まで、実に25年間も空白が生まれることになりました。)

これ以降タツノコは発表の場を他局にシフト(テレビ東京・テレビ朝日・日本テレビなど)しますが、
2クールに満たない短命作品を連発し、「タツノコ冬の時代」と呼ばれる
不遇の時代を送ることになります。本作はその先駈けと
なってしまった、ある意味不運な作品ですが、
もし、予定通り大河ドラマとして一年の放送を全うしていたら…?

ちなみに後番組として放送された「ゲゲゲの鬼太郎(第三期)」は初回でいきなり16・8%。3週目には20%を突破。
…視聴率って残酷です。



炎のアルペンローゼ スタッフ
製作/吉田健二
原作/赤石路代(小学館「月刊ちゃお」掲載)
企画/井上 明・内間 稔
プロデューサー/前田和也(フジテレビ)・遠藤龍之介(フジテレビ)・大野 実(読広)由井正俊(タツノコプロ)
制作担当/石川光久
シリーズ構成/富田祐弘
文芸担当/庄司菜穂子
チーフディレクター/うえだひでひと
チーフディレクター補/澤井幸次
キャラクターデザイン/高田明美
メカニックデザイン/アンモナイト
オープニングアニメーション作画/湖川友謙
制作協力/読売広告社

音楽/久石 譲
OP/夢の翼(作詞・及川恒平/作曲・久石 譲/唄・コニー)
ED/やんちゃなエンジェル(作詞・及川恒平/作曲・長沢ヒロアキ/唄・コニー)


炎のアルペンローゼ 放映リスト

放送No放送日サブタイトル脚本演出絵コンテ作画監督
1985.4.6愛・激流への序章 富田祐弘澤井幸次澤井幸次浜崎博嗣
1985.4.13光の中の天使 富田祐弘貞光紳也貞光紳也佐久間信計
1985.5.3汽笛は死を越えて柳川 茂鴫野 彰義野利幸鄭雨英
1985.5.18秒きざみのワナ 中 弘子茂木知里広瀬ちえこ林 隆文
1985.5.25過去を秘めた花園富田祐弘貞光紳也貞光紳也西城隆詞
1985.6.1赤いバラの旋律富田祐弘澤井幸次義野利幸浜崎博嗣
1985.6.15響け! 祖国の空へ富田祐弘小林哲也うえだひでひと佐久間信計
1985.6.22華麗なる逃亡者 中 弘子上村 修上村 修林 隆文
1985.6.29剣の騎士ランディ 柳川 茂貞光紳也貞光紳也水村十司
101985.7.13記憶は別れの朝に富田祐弘茂木知里澤井幸次鄭雨英
111985.7.27燃えつきた野望 富田祐弘小林哲也義野利幸浜崎博嗣
121985.8.3二人のアリシア!? 中 弘子澤井幸次澤井幸次井口忠一
131985.8.10聞かせてよ愛の歌 中 弘子石山タカ明石山タカ明林 隆文
141985.8.24安らぎにさようなら 柳川 茂貞光紳也貞光紳也西城隆詞
151985.8.31ひとりぽっちのピアノ 中 弘子貞光紳也茂木知里浜崎博嗣
161985.9.7逃がし屋ハンス柳川 茂上村 修上村 修林 隆文
171985.9.14パリの殺人鬼富田祐弘貞光紳也貞光紳也浜崎博嗣
181985.9.21愛の歌が霧の中に 柳川 茂貞光紳也茂木知里恩田尚之
191985.9.28自由に向けられた銃口 中 弘子石山タカ明石山タカ明林 隆文
201985.10.5夢のつばさを広げて 富田祐弘澤井幸次澤井幸次西城隆詞

キャスト
ジュディ(鷹森淑乃)
ランディ(難波圭一)
グールモン伯爵(池田秀一)
プランタン(勝生真沙子)
レオンハルト(井上和彦)
フランソワーズ (吉田理保子)
ルノー(上田敏也 )
フリードリヒ(仲村秀生 )
マルタ(日高のり子)
ズグ(稲葉実)
ジド(西村智博 )
ロバート(小滝進)
ナレーター(堀内賢雄)


と、なんとか終了。
本作品は幸い手元に録画テープが残っていたので
最終回の画像をなんとか用意することが出来ました。
打ち切りゆえの突然怒涛のラストだった本作。
そのブツ切り加減ゆえか、作品としては非常にアンバランスなものに
なっており、故に再放送の機会もさして多くないのですが。
80年代はこういう問答無用のぶった斬りラストな打ち切り作品が
ホント多いですよね。
バルディオス・イデオンに始まり、
アクロバンチ・忍者マン一平・こてんぐテン丸・
ドルバック・ガルビオン・レイズナー…
そういう歪で奇異な終わり方をしているから逆に
記憶に残っているというのも皮肉なもので。
では次回。

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