今尚打ちっぱなしの練習場で聞こえる「チャーシューメン」の声。
ドリフ大爆笑のコントのネタにもなってたほど超メジャーな掛け声ですが、
すべてはこの漫画から始まったものでした。
あした天気になあれ
1984年10月6日〜1985年9月27日 全47話
フジテレビ系放映・製作 NAS
本邦初のTVシリーズゴルフアニメ
原作はちばてつや氏が1981〜92年にかけて少年マガジンに連載したゴルフ漫画。
藤子不二雄A氏の「プロゴルファー猿」とともに少年漫画にゴルフを持ち込み
普及させたゴルフ漫画の代表作の一つです。
ちば作品のアニメ化は1977年の「おれは鉄平(日本アニメーション・シンエイ動画)」以来
7年ぶりの作品になりますが、世間では青木のハワイアンオープン逆転優勝や女子ゴルファーの岡本綾子の奮闘などが
話題になっていた頃で、テレビ化に際しては時期的に追い風のタイミング。
アニメのゴルフは2年前にスペシャルアニメとして「プロゴルファー猿」がシンエイ動画の手により
2時間の作品として世に放たれていますが(3年後のTVシリーズとは別のスタッフ体制で作られています。)、
TVシリーズとしては本作が本邦初。
ゴルフをアニメにするために
とは言え、ゴルフをアニメ化するという事は想像以上に難しいとされていました。
格闘技や球技のように訴えかけるアクションに乏しいというのがその理由です。
ゴルフ中継を御覧になられた方はお分かりと思いますが、基本ショットの際は引き、固定アングル。
ショットで打たれた球の軌道をカメラが追っていくという感じのもので、絵的には大人しいもの。
アニメでこれをこのままやっても間が持たないということで、誇張表現を含めた斬新な表現方法が作られました。
向 太陽がショットをする際を例に取りますと、
太陽の顔のアップ、握りのアップ、あおり、俯瞰、瞳に映るコースの予想軌道。
意を決し、グラブを振りかぶる。同時に背景が特殊効果の動画に。グゴォォというSEが被る。
「チャー、」まるで蚊にカメラを付けて撮ってる様な、太陽の周りをグルグル回る画になり、
「シュー、」アングルはそのまま手からドライバーのヘッドに、さらにヘッドから見た(!)ピン上のボールの画に。
「メン!」猛烈にボールをひっぱたく。パカパカのストップモーションが入り、刹那、吹っ飛ぶボール。
今度はカメラの視点がボールからの視点に変わる。
背景動画で木や山がうしろにドンドン流れていく(!)。
ボールはグリーンにオン、今度はグリーンの上をボールが転がる様が背景動画で表現。
ボールをつけパンで撮るような画。迫り来るカップ!
画面はカップからの視点(!)に切り替わる。カップの底から空を見上げるような構図に。
ゆっくり、ボールが顔を覗かせた、と思ったら、ゴトン、とディンプルの描き込まれたボールが
目前にデカデカと落ちてくる。
日常を丹念に
最初からプロ目指して竜谷と二人三脚状態の原作と違い、
アニメは向太陽と竜谷との出会いから描き、
ゴルフのゴの字も知らない太陽に1からゴルフを教えるところから始まります。
その為はじめの1クールくらいまでは実家の食堂の手伝いや兄弟とのふれあいといった
日常描写が多く、のちのゴルフ対決三昧の展開を考えるとまるで別の作品のような趣すら感じられます。
とはいえ、
あしたのジョーでもドヤ街の子供たちとのふれあいなどを効果的に挿入し、
殺伐としかねない空気を独特のムードで和ませていた前例がありますから、
こういうのって、ちばてつや先生の世界なんだなぁと感じてしまいます。
例を挙げると、朝早く起きて弁当を売りにいく光景とか、研修生になって、朝早く床をモップで磨くシーンとか、
日常描写が今見るとホントに細かい。当時のラブコメ&リアルロボ路線全盛期に、
ほかにこんな細かい日常描写を挟み込んだアニメがあったでしょうか?
地味ではありますが堅実な、どっしり腰の座った作品と言えましょう。
太陽は昇り続ける
この「あした天気になあれ」が放送されたのは1984年。
先に申し上げた様に、世に言うところのラブコメ全盛期です。うる星、みゆき、かぼちゃワイン…
美少女がでてナンボ、お色気あってナンボという御時勢にあって、正統派スポーツもの(スポ根ものではない。)、
しかも前代未聞のゴルフアニメということもあって、その存在は一種異色作として映った事でしょう。
番組も当初の中学生編では、エッコとのラブコメシーンが散見できて、時代の流れなのかなと
思わせる場面もありましたが(スタッフは「さすがの猿飛」と同様ですし。)、ストーリーが進行するに連れ、
そんなラブコメの気配は微塵もなくなってしまいます。
中学→アシスタントプロテスト→プロテスト→プロトーナメントと行くに従い過酷さと熾烈さが増し、
緊張感が尋常でなくなっていく状況にあって、浮いた惚れたの入り込む余地は無くなってしまいました。
エッコは殆ど出てこなくなるし、そも、女性キャラが殆ど出てこない。(あ、キャディーのおばさんは別ね。)
「断っておくが、俺たちゃ仲良しこよしのお友達クラブじゃないんだぜ。」
アシスタントプロテストにおける牛島の、太陽に向けて発したセリフですが、
この言葉のように、コースに出ればみな生き残るため、
勝ち進むために必死のサバイバル状態。
太陽は持ち前の豪放磊落かつ図太い神経で
そのサバイバルを生き抜いていきます。無論天賦の才能もあっての話ですが。
そんな中で出会うライバルたちとの死闘、
師匠竜谷氏の与える試練などにより、太陽は次第に磨き抜かれ、
ついに日本最年少のプロゴルファーとしてトーナメントに挑むまでになります。
最終回間際は残された話数が少なかったこともあってか、かなり駆け足な展開になってましたが
東太平洋トーナメントにおいて、チャンピオンのバレンチノと太陽が一騎討ちとなり、
プレーオフの末に太陽が優勝するという形で番組は幕を下ろします。
「俺の目標は、セントアンドリュースに行って、全英オープンで優勝することだ!」
と、最終回で太陽は語っていましたが、
このあたり、まだ原作が途中だったということもあって叶わなかったのでしょう。
(原作は1992年に完結)うまくすればその後続編もあったかもしれませんが、
1986年に製作の土田プロダクションが倒産。太陽の全英オープン編は
ついぞ映像化されることはありませんでした。原作は完結していますので
興味のある方はそちらを御鑑賞下さい。
あした天気になあれ スタッフ
原作/ちばてつや
企画/土屋登喜蔵(フジテレビ)
プロデューサー/片岡義朗(NAS)、原田一男、茂垣弘道、清水賢治(フジテレビ)
シリーズディレクター/光延博愛
OP・EDアニメーション製作/FLAFRA
美術監督/阿部行夫
撮影監督/高橋明彦
総作画監督/金沢比呂司
製作協力/土田プロダクション
音楽/梅垣達志
OP/明日はシャイニング・スカイ(作詞・竜真知子/作曲・東郷昌和/編曲・梅垣達志/唄・野口きよみ)
ED/夕焼けに歩きたい(作詞・竜真知子/作曲・東郷昌和/編曲・梅垣達志/唄・高橋伸明)
あした天気になあれ 放映リスト
放送No | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 演出 | 作画監督 | 視聴率 |
1 | 1984.10.6 | ゴルフとの出会い | 城山昇 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 10.0 |
2 | 1984.10.13 | めざせ!プロゴルファー | 城山昇 | 三沢伸 | 奈須川充 | 10.9 |
3 | 1984.10.20 | 初めてのゴルフレッスン | 城山昇 | 吉田健次郎 | 金沢比呂司 | 8.0 |
4 | 1984.10.27 | 賞品はゴルフセット | 八木良一 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 10.2 |
5 | 1984.11.3 | ゴルフ部の期待 | 城山昇 | 三沢伸 | 金沢比呂司 | 9.8 |
6 | 1984.11.10 | 初出場!ゴルフ競技 | 八木良一 | 鈴木幸雄 | 富沢和雄 | 10.6 |
7 | 1984.11.17 | 消えたゴルフボール | 照井啓司 | 高林久弥 | 奈須川充 | 11.0 |
8 | 1984.11.24 | ライバルは腹の虫 | 照井啓司 | 吉田健次郎 | 一川孝久 | 10.4 |
9 | 1984.12.1 | 計算されたゴルフ | 城山昇 | 三沢伸 | 金沢比呂司 | 10.6 |
10 | 1984.12.8 | 牙をむいたライバル | 八木良一 | 鈴木幸雄 | 押大三 | 10.3 |
11 | 1984.12.15 | 三段グリーンの対決 | 城山昇 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 10.6 |
12 | 1984.12.22 | 思わぬアクシデント | 海老沼三郎 | 三沢伸 | 奈須川充 | 9.7 |
13 | 1984.12.29 | 谷底からの叫び | 照井啓司 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 11.9 |
14 | 1985.1.5 | 勝負のバーディパット | 城山昇 | 三沢伸 | 一川孝久 | 12.7 |
15 | 1985.1.12 | プレッシャーとの闘い | 海老沼三郎 | 石踊宏 | 妻洋二 | 11.3 |
16 | 1985.1.19 | ライオンの頭を越えろ | 照井啓司 | 三沢伸 | 宇田八郎 | 12.3 |
17 | 1985.1.26 | 雨の中の決戦 | 城山昇 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 9.8 |
18 | 1985.2.2 | 嵐の最終ホール | 海老沼三郎 | 三沢伸 | 一川孝久 | 11.9 |
19 | 1985.2.9 | チャンスだ燃えろ太陽 | 城山昇 | 高林久弥 | 奈須川充 | 12.7 |
20 | 1985.2.16 | 本番!研修会テスト | 照井啓司 | 三沢伸 | 宇田八郎 | 12.3 |
21 | 1985.2.23 | 新人殺しの憎いワナ | 照井啓司 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 9.1 |
22 | 1985.3.2 | グリーン上の落とし穴 | 海老沼三郎 | 三沢伸 | 一川孝久 | 9.9 |
23 | 1985.3.9 | 怒りの必殺ドライバー | 城山昇 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 12.6 |
24 | 1985.3.16 | 忍びよる恐怖の影 | 城山昇 | 三沢伸 | 奈須川充 | 9.5 |
25 | 1985.3.23 | 集中力で影を断て! | 城山昇 | 高林久弥 | 一川孝久 | 10.7 |
26 | 1985.3.30 | 最終ホールの試練 | 城山昇 | 石踊宏 | 笠原彰 | 10.4 |
27 | 1985.4.12 | 初挑戦!プロへの道 | 城山昇 | 中村憲由 | 金沢比呂司 | 19.1 |
28 | 1985.4.19 | 秘伝舌出しショット | 城山昇 | 三沢伸 | 一川孝久 | 10.2 |
29 | 1985.4.26 | 快進撃!?の第一打 | 城山昇 | 高林久弥 | 鈴木信一 | 8.2 |
30 | 1985.5.3 | 最終ホールの賭け | 城山昇 | 中村憲由 | 一川孝久 | 8.5 |
31 | 1985.5.10 | 待望のプロテスト | 城山昇 | 三沢伸 | 金沢比呂司 | 8.9 |
32 | 1985.5.17 | ねじ曲げられたボール | 城山昇 | 井上修 | 加藤興治 | 8.4 |
33 | 1985.5.24 | 涙のバンカーショット | 城山昇 | 高林久弥 | 一川孝久 | 8.9 |
34 | 1985.5.31 | 意外な真実 | 城山昇 | 中村憲由 | 金沢比呂司 | 7.5 |
35 | 1985.6.7 | 荒れ模様の神経戦 | 城山昇 | 三沢伸 | 鈴木信一 | 7.3 |
36 | 1985.6.14 | なるか!決勝進出 | 城山昇 | 高林久弥 | 一川孝久 | 8.1 |
37 | 1985.6.28 | 強豪相手の決勝戦 | 城山昇 | 井上修 | 加藤興治 | 6.7 |
38 | 1985.7.12 | 開始!攻撃ゴルフ | 城山昇 | 中村憲由 | 金沢比呂司 | 7.3 |
39 | 1985.7.19 | グリーン上の勝負師 | 城山昇 | 三沢伸 | 一川孝久 | 7.6 |
40 | 1985.8.2 | プロテスト最終日 | 城山昇 | 高林久弥 | 鈴木信一 | 6.4 |
41 | 1985.8.9 | 激突!!バーディ合戦 | 城山昇 | 中村憲由 | 金沢比呂司 | 7.7 |
42 | 1985.8.16 | 飛べ逆転必殺ショット | 城山昇 | 三沢伸 | 一川孝久 | 7.2 |
43 | 1985.8.23 | プレッシャーの18番! | 城山昇 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 9.7 |
44 | 1985.9.6 | 念願のプロ初出場! | 城山昇 | 中村憲由 | 一川孝久 | 7.8 |
45 | 1985.9.13 | 傷だらけのトップの座 | 城山昇 | 藤川茂 | 金沢比呂司 | 8.0 |
46 | 1985.9.20 | 奇跡をよんだ追撃戦 | 城山昇 | 三沢伸 | 一川孝久 | 12.0 |
47 | 1985.9.27 | めざせ!プロ初優勝 | 城山昇 | 高林久弥 | 金沢比呂司 | 10.7 |
と、なんとか終了。
個人的には全英編も映像化してほしかった…
では次回。