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秋はまったく更新が出来ずに今年ももう終わり。
故に今回はちょっとテンポアップで更新してみました。
年末にもう一回更新できるといいのですが。

ブロッカー軍団マシーンブラスター

1976年7月5日〜1976年3月28日 全38話
フジテレビ系放映・製作 日本アニメーション・葦プロダクション


マシーンブラスター



日本アニメーション&葦プロ製作のロボットアニメ
1976年といえば、ロボットアニメ百花繚乱の時代。
マジンガーシリーズはまだ継続中であり、ゲッターロボ、ガイキング、ライディーン、ジーグ、コンバトラーX、
ダイアポロン、ガ・キーン、グロイザー、ゴーダム…ゲップ出そうなくらいロボットアニメが
毎日毎日放送されてる時期でもありました。
また、マーチャンダイジングの面からも有益性が見込めるという側面もあって、
多くの新興プロダクションが ロボットアニメを積極的に作っていったものです。
(発足当初の日本サンライズ然り)

本作は珍しく「フランダースの犬」「母をたずねて三千里」の日本アニメーション製作の
ロボットアニメ。ですが、実質的に製作にかかわったのは当時タツノコプロを独立したばかりの
佐藤充彦を初めとした葦プロダクション。故にスタッフにも案納正美、高橋資祐といった
タツノコで御馴染みの名前が随所にチラホラと。
ただ、新興会社ということで作品を作ったところでなかなか買い手がつかないという
状態に陥ってしまったらしく、名前の知れた日本アニメーションが預かる、という形でようやく買い手がつき、
軌道に乗ったと言います。新興にはどこも厳しいのですね。物語はこんな感じ。

2億年前、火星と木星の間の小惑星地帯にあった第五惑星から地球に脱出してきた異星人。
彼らは海底に住み着き、地上へ進出する時を待った。そして20世紀。
彼ら=海底人類の国家・モグール帝国は長年の念願であった地上侵略をついに開始した。
圧倒的な戦力と超破壊兵器カイブッダーの前に人類側はなすすべも無く駆逐されていく。
この時に備え準備を進めていたアストロ基地の由利博士であったが、唯一の対抗兵器である
マシーンブラスターは操縦者がまだ一人しか見つかっていない。四体のマシーンブラスターには
エレパス能力を有する四人の操縦者が必要なのだ。すでに訓練を受けた石田厳介のほか、
急遽、飛鳥天平、ビリー剣城、 早見仁太が集められ、ぶっつけ本番で実戦に投入させられる。
不慣れな機体とチームワークの乱れで 窮地に陥るブロッカー軍団だが、
かろうじて合体技・円月回転で勝利。しかし、この初陣の勝利は
様々な不安と波乱に満ちた船出であり、過酷な戦いへの序曲でしかなかった。

他作品が「合体(コンバトラーなど)」「変形(ライディーンなど)」「換装(ジーグ・ゴーダムなど)」
いった具合にカラーを打ち出していったこの時期。本作では
ロボットそのものに変形などはないものの(コクピットの戦闘機「フリーダム」の変形合体はありますが)
四体のロボットが合体攻撃を加えるという、「ゴレンジャー」的要素を加えたものになっており、
独自の味を醸しだす事に成功。また敵組織も古巣タツノコを意識したような
モグール帝国の敬礼ポーズ「ヘール!ヤッターレ!」などを演出するなど
(キャシャーンの「ヤルッツエ・ブラッキン!」みたいなものですね。)
当時放送されていた数多あるロボットアニメの中でも
独特の雰囲気を持った作品として知られることとなりました。


謎の超能力・エレパス
「君もこのチャンネルにエレパスしてくれ」
天平が予告で決めセリフで言ってた文句ですが、そもエレパスとは?
実は番組内で具体的な説明は一切無かったのです。唯一解ってるのは
「マシーンブラスターを動かすために必要不可欠な超能力」
ということだけ。しかもこのエレパス、通常の人間には無い能力。
人間でも極稀にエレパスを持つ能力者が居るには居るのですが
それこそ1億人に一人というレアな存在らしく、一話の時点で
石田だけしか居なかったという状況が、いかに人間でエレパシスト(とでも言うのか?)
という存在が稀有であるかを物語っています。
結果、正攻法では獲得できなかったエレパス能力者に業を煮やした由利博士が取った手段は
「エレパス能力者を見つけ次第確保しろ!多少強引でもかまわん!」
と、殆ど拉致の状態でつれてきたのがビリー剣城・早見仁太・飛鳥天平だったわけです。
ましてや仁太と天平は少年院にいるところを薬かがされて拉致されたのですから
由利博士、容赦ないなぁ。原作版ゲッターロボの早乙女博士以上だ。

ここまでムチャクチャなパイロット捕獲を強行したのも、
原因はエレパス、という超能力の存在あればこそ。
実は四体のマシーンブラスターはモグール人科学者ノストラーによって
設計されたロボットなので、本当はモグール人専用メカ。
エレパスもモグール人に特有の超能力なので、もともと人間が乗れる
メカではないのですね。しかし、地球人の科学力ではとてもマシーンブラスター級の
戦闘ロボが作れないので、モグール仕様を無理矢理人間で操縦できるように
しなければならなかった訳です。結果としてメチャレアな「エレパス能力者」を
探すハメになるのですが。

しかも人間のエレパス能力はモグール人の比にならないほど低いため、
一体ではとても非力で勝負が出来ず、せいぜい15分が活動限界。
しかも内蔵武器は人類側開発の通常兵器なので相手に大したダメージは与えられない。
結局、相手を倒すには四体が一体になった攻撃(円月回転・武者固めetc)しか
頼りにならないというこの非力さ。
今考えるとこの辺が荒唐無稽さの中にあって妙にリアリズムをもたらせていますよね。

当時スポンサーだったブルマァクの雑誌広告


不良少年・天平の意義
少年院にいた、というとこから解るように、天平は札付きのワル。不良少年です。
♪生まれたときから親は無い、と歌にもあるように、天涯孤独の悪童だった天平。
その正体はモグール人の父と日本人の母の間に生まれた混血児。
(由利博士はすでにそのことに気づいていたようで。すごいぞ由利博士!)
元々マシーンブラスターはモグール人が乗って能力が発揮するように作られた戦闘ロボ。
エレパスはモグール人が持つ特殊能力の一種で、当然混血児の天平が
飛びぬけてエレパス能力が高いというのもそういう理由によるもの。
第三話(哀しみのサンレス銃) で直射日光に弱いこと、混血児に現れる菱形の痣(モグールと人間の混血児には
モグール人の鱗がこういう形で体に残る)など、天平の正体を明かす証明が次々説明されるのですが
これがその後物語の縦糸になるのか?と思ったら殆ど生かされず。
親をモグール人の攻撃で失ったユカが天平をサンレス銃(モグール人のみ殺傷する特殊光線銃。
言わばマシーンブラスター版MF銃)
で撃ちぬくシーンなど、衝撃的な展開があったりして
持って行き様によっては愛憎渦巻く濃厚なドラマが期待できたのですが、
その話以降、その設定は蒸し返されることも無く、ユカと天平の関係も普通に戻ります…
…って、そっちのほうが異常な気も。

さて、不良で一匹狼の粗忽者が無理矢理拉致されて強引に入れられたブロッカー軍団。
当然、反発大爆発で協調性などまるでなし。
「おれは好きなようにやらせてもらうぜ!あんたの指図は受けねえよ!」
ロボットアニメの主役は多少不良っぽいとこがあるのは珍しくありませんが
普通こういうのは2号機パイロット型。コンドルのジョータイプです。
だからリーダーを石田に設定する必要があったのでしょうが。

だからまあ、独断行動、命令違反は当たり前。
だからよくマシンブラスターは統率が取れないままバトルに入り、
敵にいいだけなぶられ、窮地に陥ったときにやっと四体揃い、 逆転勝ち、というパターンがやったら多いです。
ブロッカー軍団がバトルチーム並みにチームワークあったら無敵なのにねぇ。

しかも非情なのは、命を懸けて毎回必死で戦ってる(戦わされてる)にも関わらず、
彼らに大した自由や金銭的補償は無い。そればかりか、
モグールが撤退を宣言したときには「ブロッカー軍団は解散」とされ、
その途端に天平と仁太は拘束され、元の少年院にブチ込まれてしまうのです。
「おいおい!今までの功労や働きは?」とツッコミ入れる暇も無く。
しかもそのあと「どうせあいつはモグールの仲間」という事で殺されかかるという…
いや、何かこの辺妙に生々しいと言いますか。(第20話・愛と憎しみをこえて)

こんな扱いを受けてれば世間に反発しまくってる天平の姿や言動も
むべなるかな、と言ったところですが。

結局、反抗と反発を繰り返し、最後の最後まで協調性は持てなかった天平。
けど、そんな一匹狼の天平だからこそ、
地元のヤーさんと土地の権利書巡って一戦やらかす話や
(第24話・明日につなげ! 命の火)
老練の刑事・カミソリの安との会話が楽しい
(第16話・秘(まるひ)指令!たそがれの潜入/第36話・恐怖!死の谷の脱走)
というエピソードが成立したのかも知れません。

当時の日本アニメーションの暑中見舞い。


最終決戦
ブロッカー軍団の話だとどうしても24話に話題が集中しちゃってる感があるので
(多分、本で紹介されたからだと思うのですが)
それはあくまでも異色編。基本はモグールの作戦にブロッカー軍団が立ち向かう
というのが基本フォーマットなわけです。
そんな展開がいくばくか続いた後に、ついに最終決戦として
第26話「君よ大空に虹を見たか」 にてモグールが総攻撃をアストロ基地に仕掛けてきます。結果、
アストロ基地は破壊され、マシーンブラスターも作動不能に。
勝利を確信しうれし泣きするゴロスキー。しかし土壇場でマシーンブラスターは禁断の技「デインジャーポイント」
(要するにエネルギーを全解放して機体を灼熱の火の鳥(!)にして近隣の敵を全て破壊する技)
を解放。一瞬にしてモグール軍団は壊滅。ヘルクィーンも戦死してしまいます。

このアニメ、見て思うのは、20話・26話とあきらかに「最終回」を意識させる話がやたら多いです。
そのくせ、話は終わらず、27話以降も続くのです。なんかアニメ版「バビル2世」みたい。
28話以降はヘルクィーンの妹のヘルサンドラという少女がモグールの帝王の座に着き、
再び戦争は膠着状態に。本当の最終回は38話「大激突!氷海の死闘!」で、ここでようやく決着します。
最終回は26話のお返しとばかりに、アストロ基地がモグールの本拠地北極に殴りこみ。
攻めの戦いは優位でも、守りの戦いというものは不利を強いられるもので。
この38話はモグールが滅んでいく断末魔を淡々と見せられる、心の痛いものになってます。
(ゴライアスが国防軍に蜂の巣にされて死ぬシーンはかわいそう。)
最終回、マシーンブラスターもピンチらしいピンチも無いし。
そも、ラスト周辺しか出てきませんし。いいのか?主役メカが。

最後、ボスパルダーに脱出円盤をも破壊され、やむを得ず自爆装置を押すサンドラ。
死を覚悟したヘルサンドラが泣きながら笑うシーンは、哀れさを感じます。最後は
「モグール帝国、ばんざーい!」と絶叫。ザンギャック・ゴロスキー共々
炎の中で焼かれフェードアウトしていくヘルサンドラ。
悪の組織の壊滅を描くに辺り、こういう悲劇的な哀れさを出して
描いた例ってあまり無かったのでは?と思いますが。
地球における生存権を争って負けた民族が争いの中で滅んでいく…
まさにそんな感じのラストでした。

全滅したモグール基地を眼下にボスパルダー内のコクピットの天平は
憂いを秘めた表情。ナレーションがそこに被ります。
「しかし、天平の心は悲しかった。体に流れるモグールの血が
そう思わせるのだろうか…」


全38話を通して思ったのは、モグールと天平の関係やその苦悩を
縦糸としてもっと機能できれば面白くなったのに、というトコでしょうか。
初期の話や途中のゲストエピソードでそれを匂わせるものもあったから
出来ればそういうところをもっと深く突いて欲しかったのですが。


ブロッカー軍団マシーンブラスター スタッフ
製作/本橋浩一
原作/葦プロダクション・八田朗
企画/葦プロダクション・佐藤充彦
プロデューサー/小野哲生・安達ひでお
総監督/案納正美
キャラクターデザイン/高橋資祐・坂田ゆう
メカニックデザイン/七戸洋之助・松田豪・清水春雪
作画監督/田中保 他
コンテ/八尋旭・高橋資祐・坂田ゆう・林弘・加奈井華子・井草ふしみ
演出/八尋旭・案納正美・安濃高志・三家本泰美・坂田ゆう・花園浩一・井草ふしみ

製作協力/葦プロダクション
音楽/筒井広志
OP/ブロッカー軍団マシーンブラスター
(作詞・とくら清和/作曲・小林亜星/編曲・筒井広志/歌・ヒデ夕樹 東映児童合唱団)
ED/男天平の唄
(作詞・武者造/作曲・小林亜星/編曲・筒井広志/歌・北原浩一)


ブロッカー軍団マシーンブラスター 放映リスト

放送No放送日サブタイトル脚本演出
1976.7.5運命の大あらし!八田 朗八尋 旭
1976.7.12モグール帝国の魔の手高久 進八尋 旭
1976.7.19哀しみのサンレス銃武者 造安濃高志
1976.7.26唸れ!円月回転小山高男安濃高志
1976.8.2ビリー剣城 危機一髪!三宅直子安濃高志
1976.8.9燃えろエレパス我が心高久 進八尋 旭
1976.8.16おとこ仁太よ!サンダイオー田口章一三家本泰美
1976.8.23飛べピコット!傷だらけの挑戦 吉川惣司安濃高志
1976.8.30地獄の空母! ヘルグライド(前編)八田 朗坂田ゆう
101976.9.6地獄の空母!ヘルグライド(後編)八田 礼安濃高志
111976.9.13友情よ戦火に燃えろ!小川映一安濃高志
121976.9.20起て天平!宿命の鎖を切れ!高久 進三家本泰美
131976.9.27裏切りのバラード鈴木良武安濃高志
141976.10.4見せろピコット! ロボット魂吉川惣司八尋 旭
151976.10.11命をかけろ! 志摩の海に!新井 光八尋 旭
161976.10.18秘(まるひ)指令!たそがれの潜入八田 朗安濃高志
171976.10.25怒りの海に散った恋新井 光八尋 旭
181976.11.1砂漠は燃えているか 八田 礼安濃高志
191976.11.8死の吹雪! 北極圏を突っ走れ高久 進
八田 朗
八尋 旭
201976.11.15愛と憎しみをこえて武者 造安濃高志
211976.11.22逆襲モグール軍団!武者 造安濃高志
221976.11.29呪われたインカの秘薬新井 光八尋 旭
231976.12.6きけ! 戦場の子守り唄八田 朗安濃高志
241976.12.13明日につなげ! 命の火新井 光八尋 旭
251976.12.20ヘルクィーン 地獄の栄光山本 優安濃高志
261976.12.27君よ大空に虹を見たか山本 優八尋 旭
271977.1.10生と死のメロディ山本 優安濃高志
281977.1.17遥かなるマシンブラスター山本 優八尋 旭
291977.1.24走れ!!栄光のアルプスを!新井 光安濃高志
301977.1.31夕映えに踊れ!山本 優八尋 旭
311977.2.7深海に賭ける夢吉川惣司安濃高志
321977.2.14原生林に吼えろ!山本 優八尋 旭
331977.2.21恐怖の魔仏! デスドール!新井 光花園浩一
341977.2.28ヘルサンドラ殴り込み!武者 造安濃高志
351977.3.7意外!ボスパルダーの秘密 吉川惣司井草ふしみ
361977.3.14恐怖!死の谷の脱走山本 優案納正美
371977.3.21死の人喰い花山本 優安濃高志
381977.3.28大激突!氷海の死闘!山本 優安濃高志

キャスト
飛鳥天平(安原義人)
石田厳介(玄田哲章)
ビリー剣城(津嘉山正種)
早見仁太(つかせのりこ)
由利元来博士(加藤精三)
北条ユカ(麻上洋子)
ピコット(小宮和枝)
ヘルクイーン五世(弥永和子)
ヘルサンドラ(弥永和子)
ゴロスキー(鎗田順吉)
ザンギャック(野本礼三)
ゴライアス(立壁和也)
大野安兵衛-カミソリの安-(森山周一郎)
ナレーション(津嘉山正種)他

と、なんとか終了。
秋の更新が一度も出来なかった埋め合わせと週刊単位で更新してみました。
もう1回出来るかな?では次回。

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