看板

相変わらずの昨今。
いや、以前にも増して深刻な状況になりつつありますね。
なにが不要でなにが不急かは人それぞれですが。
こういう状況こそ、魔法でなんとかならないものかしら。

魔女っ子チックル

1978年3月6日〜1979年1月29日 全45話
テレビ朝日系放映・製作 東映・大広


アイキャッチ



魔女っ子アニメ端境期にいきなり現れたダイナミックプロ魔女っ子アニメ
魔女っ子アニメの本家、東映動画が「魔女っ子メグちゃん(1974.4〜1975.9)」を放映後、
魔法ものから脱却した大河少女ドラマ「キャンディ・キャンディ」を手掛け、
これが超特大のヒットとなったことで、1966年以降、サリーより連綿と引き継がれてきた
東映動画魔法少女アニメの系譜はぷっつり途絶えてしまいました。
そんな折、実写を中心に子供番組を制作していた東映本社が
広告代理店の大広の企画・制作依頼を受け、提示したのが本作品。
東映本社としては「超電磁ロボ コン・バトラーV」「氷河戦士ガイスラッガー」「激走!ルーベンカイザー」などの
男児むけヒーローものは多く手掛けていましたが、女児向けアニメは本作品が初。
思案した結果、「キューティーハニー」などを手掛けた経験のある永井豪とダイナミックプロに原作を依頼。
当時絶頂期だったアイドルの「ピンクレディー」(女子プロレスの「ビューティ・ペア」の影響も
多分にあるのかな?)
にヒントを得、女の子のペアを主人公にすることを提案。
主人公格が2人存在するという新機軸の魔女っ子アニメが登場したのです。


原作者・永井豪
この「魔女っ子チックル」という作品は明るく、さわやかな魔女の女の子を主人公に、
ほのぼのとした作品にしたいと思っていました。
はじめは魔女ではなく妖精にしたかったんですが、
妖精というとイメージがちょっと弱いので魔女にしちゃったんです。
魔女といっても、絵本から飛び出してきたので、
童話の世界をひきずったメルヘン豊かなキャラクターを
子供たちにイメージしてもらえればと思っています。

(主題歌の)作詞については、この作品のイメージにある言葉を
全部かき並べて、パズルみたいに組み合わせながら作ったんです(笑)。
魔法の楽しさを歌の中でも味わってください。

※月刊アニメージュ1979年1月号記事より



絵本から飛び出したイタズラ魔女

そんな魔女っ子アニメ端境期に生まれた本作の第一話はこんな感じで始まります。

チーコこと小森チーコは小学五年生の女の子。
唯一の親友のミヨちゃんが両親の都合で北海道に行ってしまうと言うので、
友情の記念に手編みのマフラーをプレゼントする事を約束しますが、
届けに行った時には既に家はカラッポ。予定が早まって既に引っ越した後だったのです。
親友との予期せぬ別離にショックで涙ぐむチーコ。帰り際に書店で不思議な本と出合います。

誕生日プレゼントで父にその本を買ってもらったチーコ。
わくわくして本を開くと「たすけてー」という声が。
本を見ると少女が怪獣に追われています。チーコに助けを求める少女。
「助けるったって、どうすればいいの?」
「クルンカ・クルンカ・テコポコテン!早くー!」
言われるままに呪文を唱えるチーコ。すると、本からまばゆい光が。

光が収まると、目の前に本の中の少女が。
少女の名は魔女っ子チックル。
イタズラが過ぎておしおきのために本に閉じ込められていたというのです。
チックルは指を立て、「マハール・ターマラ・フーランパ」と唱える事によって、
不思議な魔法を使います。
チーコは親友のミヨちゃんに渡しそびれたマフラーを届けてほしいとチックルに頼みます。

さて、現代社会に突如解放されたチックルですが、行くあても住む場所もありません。
チックルはチーコの家に住みたいと言い出します。
「親が許してくれない」と困惑するチーコを尻目に、
チックルは魔法を家全体にかけます。
両親は普通にチックルを娘として受け入れます。唖然のチーコ。
魔法で「遠くに預けられていたチーコの双子の姉妹」という暗示を家族にかけたのです。
こうして、ラッキーペア・チックルとチーコの不思議で賑やかしい生活が始まったのです。


という展開。絵本から飛び出した魔法少女というのは、ありそで今まで無かった設定。
従来の東映動画魔女っ子は魔法の国から箒に乗ってやってくるか、
普通の女の子が魔法アイテムを手に入れて魔女を襲名するかだったので、
こういうある意味正統派というか、洋モノっぽい出現はかえって珍しい感じ。
無邪気でいたずら好きというチックルの性格も、
永井先生が言うところの「妖精」に近いものがありますしね。


実は東映動画以外では初の魔女っ子アニメ
意外な風にも感じますが、東映動画以外の魔女っ子アニメは、
実はこのチックルが最初だったりします。何故でしょう?
別に魔女っ子アニメは東映の専売特許でも無いと思うのですが。
各プロダクションでも少女向けアニメは多く製作されていますが、改めてみると
スポ根もの(アタックNo1・エースをねらえ!・あしたへアタックなど)
名作もの(アルプスの少女ハイジ・草原の少女ローラなど)
少女漫画原作モノ(モンシェリCOCO・はいからさんが通る・さすらいの太陽など)
アニメオリジナル(風船少女テンプルちゃん・ラセーヌの星・若草のシャルロットなど)
と、意外というか、魔法少女ものが見当たりません。
あえて避けていたのか、二番煎じより新鉱脈の開拓を狙ったのかは解りませんが。


東映動画以外の制作魔女っ子アニメとはいうものの、スタッフには東映動画になじみの深い方々が集結しています。
実制作を請け負ったのは、木村圭市郎(タイガーマスク・サイボーグ009など)率いるネオメディア、
森下圭介(アパッチ野球軍・マジンガーZ)率いる風プロダクション
(余談ですが「風プロ」の名前の由来は、森下氏がかつて所属していた虫プロの「虫」と
Aプロダクションの「A」を組み合わせた「風」にしたものなんだとか)
など。
音楽は「マコ」「メグ」の渡辺岳夫先生が担当しています。
故に一見すると、従来の東映動画魔女っ子シリーズと同じように見えても変じゃなく。
脚本面でも参加数こそ少ないですが、雪室俊一氏や辻真先氏らも参加しており、
本家東映動画魔女っ子アニメのエッセンスが受け継がれている事が伺えます。

物語の基本展開は人間界に居候することになったチックルが、チーコと同じ学校に通う事になり、
街や学校で起こる様々なトラブルや問題に対峙していくというのがメインです。チックルが魔法界出身という事もあって
人間界の常識や礼儀にはとんと疎く、また元来の悪戯好きが高じてトラブルを巻き起こす元凶になったり
することも。チックルの魔法は失敗も多く、諸問題を魔法で解決できない事もままありました。

そこでもう一人の主人公、チーコの助言や叱咤を受けたり、
クラスメイトや街の人々の力を借りて問題を解決するという展開も多く、
いくら魔法が便利だからといって、魔法にばかり頼っていては物事の根本的解決にはならない、
というテーマが、本作の底流にも流れている事が解ります。
このあたりは本家・東映動画魔法少女アニメに通じるモノがありますね。

しかし改めてみると、やはりチックルのキツい顔立ちが強烈な印象です。
これぞ永井豪といいますか、つまるところの
「ちイ子先生」(「スポコンくん」や「レンコンマン」に出た性悪女教師)顔です。
「てめえこのスケベヤロー!叩きなおしてくれるwwwっ!」という例のセリフが聞こえてきそうですな。
しかしこの永井豪純度高の顔が女児向けアニメにはやや難があると判断されたのでしょうか?
詳細は不明ですが、番組中盤からチックルのキャラデザインが変更されてしまいます。

作画監督・原 完治(14話より参加)
(魔女っ子チックルは)18話からバトンタッチをして受け持ったものですが、(原文ママ)
(キャラクターの)感じが変わったのをお気づきになったでしょうか?
キャラクターを、もっと子供たちに親しみやすい、
やさしい顔に変えてみたのです。

※月刊アニメージュ1979年3月号記事より


ということで、チックルのキャラデザインはこのようになりまして。

これが同じキャラクターの顔かと思うほど、憑きものが取れたように柔和で優しい顔になってしまいました。
ただ、かえって個性が消えちゃったかなぁと。
あのキツい顔立ちこそチックルのアイデンティティと思うんですが。



最終回でチックルの選んだ道は
そんなチックルの最終回は、いきなり現れた魔法界の使者がチックルを強制的に連れ帰るため
様々な策略巡らせた結果、予想外の結末を迎えるラストになりました。

ある日、魔法界からの使者がやってきます。その名は「オジャマ大王」。
人間界に魔女がいるのは許される事ではない。
魔女は魔法界にいるべきであるという理由から、チックルを連れ戻しに来たのです。
オジャマ大王はなんとかしてチックルが人間界にいられなくなるようにと、
あの手この手の妨害工作をしかけ、その罪をチックルに着せていきます。
こうすればチックルは人間界を去らざるを得ないだろう、と目論んで。

そんな最中、オジャマ大王は小森家の台所の包丁を魔法で飛び交わせ、パニックを起こします。
そのうちの一本の包丁が春子に!それを防ぐため、チックルはついに皆の前で魔法を使ってしまいます。
今まで黙っていた事を家族に詫びるチックル。
しかし、以前よりチックルが魔女ではないかと思っていたヒナは
「自分を魔法界に連れてって」と懇願します。人間は魔法界に入れないと告げると、
ヒナはチックルとの別れを嫌がって、魔法の本を奪い取り
庭の焚火に本をくべてしまいます。大慌てなのはオジャマ大王。
本からしか魔法界へは帰れないのです。

本に飛び込むオジャマ大王。チックルを誘いますが、チックルは従いません。
本が燃え尽きたが最後、二度と魔法界には帰れなくなるばかりか、
魔法の力も消失してしまうのです。
オジャマ大王は改めてチックルに魔法界に帰るよう勧めるものの、
チックルは改めてこれを拒否。
小森家の一同もチックルに居てほしいと伝えます。
オジャマ大王はあきらめて魔法界に帰還。
やがて本は完全に燃え尽きてしまいました…。

もう、チックルは魔法界には帰れない。魔法ももう使えない。

これからは魔女っ子ではない、人間の少女「小森チックル」として、
チックルは新しいスタートを切るのでした。


と、これが最終回。
魔女っ子アニメのラストの展開の定石としては
「魔法がバレて魔法界に帰る」「魔法を捨てて人間界に帰化する」「日常は続く」の、
主として三パターンがデフォですが、チックルは帰化パターン。
マコちゃんやララベルと同じ進路を選択したわけですが、
最終回で小森家の両親に改めて「お父さん、お母さん」というシーンは感動ものです。
45話ものエピソードを経て人間界への造詣を深めていったチックルが、
最後に完全な人間の少女になる事で幕を閉じた作品。
東映動画作品ではない為、東映魔女っ子アニメの系譜からは外されている本作ですが、
その最終回は極めて正統派の東映魔女っ子アニメ作品になっています。


魔女っ子チックル スタッフ

原作/永井豪・ダイナミックプロ(ひとみ・てれびくん・テレビランド・小学館学年雑誌掲載)
プロデユーサー/碓氷裕焼(テレビ朝日)松永 英(大広)飯島 敬・小野耕人(東映)
制作担当/西条剋磨
チーフディレクター/久岡敬史
美術設定/加藤 清

制作協力
ネオメディア(1〜13.15.16.18.20.23〜30)
風プロダクション(14.17.19.21.32.34.36.38.40.42)
日本サンライズ(31.33.35.37.39.41.43〜45)

音楽/渡辺岳夫
OP/魔女っ子チックル
(作詞・永井豪/作曲・渡辺岳夫/編曲・馬飼野俊一/唄・堀江美都子・コロムビアゆりかご会)
ED/チックルチーコのチャチャチャ
(作詞・八手三郎/作曲・渡辺岳夫/編曲・馬飼野俊一/唄・堀江美都子・コロムビアゆりかご会)


魔女っ子チックル 放映リスト

放送No放送日サブタイトル脚本演出作画監修作画監督絵コンテ視聴率
1978.3.6ラッキーペアー誕生馬嶋 満高木厚炎木村圭市郎玉沢 武山田秀夫5.0
1978.3.13てんやわんやの新学期田村多津夫高木厚炎木村圭市郎玉沢 武小林ひろみ4.7
1978.3.20すてきなすてきな男の子馬嶋 満高木厚炎木村圭市郎玉沢 武山田秀夫6.0
1978.3.27パーティーにご用心!篠崎 好坂田 透木村圭市郎玉沢 武 雪村 剛5.2
1978.4.3涙、涙のガキ大将富田祐弘久岡敬史木村圭市郎玉沢 武水田 勇8.0
1978.4.10班長さんはくたびれる!富田祐弘高木厚炎木村圭市郎玉沢 武高木厚炎6.4
1978.4.17お姉さんはいじめっ子曽田博久坂田 透木村圭市郎玉沢 武山田秀夫8.4
1978.4.24海の神さまSOS!篠崎 好高木厚炎木村圭市郎玉沢 武浦井 泰9.2
1978.5.1女はだめよ!鯉のぼり篠崎 好坂田 透木村圭市郎玉沢 武高木厚炎7.5
101978.5.8花嫁さんがこわい富田祐弘坂田 透木村圭市郎玉沢 武山田秀夫6.5
111978.5.15はばたけ!母の愛で酒井あきよし坂田 透
内田祐司
木村圭市郎玉沢 武井内秀治6.9
121978.5.22愛情メーターは感度良好曽田博久坂田 透
内田祐司
木村圭市郎玉沢 武高木厚炎6.6
131978.5.29野生の男!お父さん曽田博久坂田 透
内田祐司
木村圭市郎村田四郎6.9
141978.6.5敵はガリ勉スーパーマン曽田博久中野健治森下圭介原 完治あしべつひろし6.1
151978.6.12蛙の命は銀の笛篠崎 好坂田 透木村圭市郎 佐々木勝利6.6
161978.6.19星占いナンバーワン曽田博久内田祐司木村圭市郎湯山邦彦6.2
171978.6.26町のギャングは子猫の親三宅直子中野健次森下圭介原 完治あしべつひろし6.3
181978.7.3秘密がいっぱい曽田博久坂田 透木村圭市郎 高木厚炎6.6
191978.7.10弱虫小虫肝だめし三宅直子中野健治森下圭介高橋愛緒あしべつひろし6.4
201978.7.17ホームランで大事件辻 真先内田祐司木村圭市郎 湯山邦彦6.3
211978.7.24ふるさと行き夜行特別列車曽田博久向中野義雄森下圭介原 完治あしべつひろし6.0
221978.7.31捕まえたお化け相原道子坂田 透木村圭市郎 湯山邦彦6.9
231978.8.7お母さんの結婚!?原島将郎内田祐司木村圭市郎 高垣幸蔵5.0
241978.8.14トラックに乗ってきた古里辻 真先坂田 透木村圭市郎 湯山邦彦5.0
251978.8.21溺れた浦島太郎田口成光内田祐司木村圭市郎 湯山邦彦3.4
261978.8.28おせじ・ごますり大嫌い三宅直子坂田 透木村圭市郎 湯山邦彦5.2
271978.9.4星空がうたう子守唄山本 優内田祐司木村圭市郎 湯山邦彦7.3
281978.9.11空をとぶ少女曽田博久内田祐司木村圭市郎 今 敏郎7.2
291978.9.18双子のたたりじゃ魔法病雪室俊一坂田 透木村圭市郎 今 敏郎6.9
301978.10.2雲から落ちた天使曽田博久坂田 透木村圭市郎 今 敏郎7.7
311978.10.9あぶない友達曽田博久田代文夫阿仁ますお 名輪 丈7.7
321978.10.16皆が主役?シンデレラ三宅直子中野健治森下圭介原 完治向中野義雄7.8
331978.10.23俺たち女の子!?雪室俊一田代文夫小林慶輝名輪 丈7.4
341978.10.30大発明!成功は失敗のもと曽田博久中野健治森下圭介原 完治向中野義雄8.6
351978.11.6泣き出した魔球のエース山本 優田代文夫阿仁ますお名輪 丈7.8
361978.11.13女性の魅力は馬鹿力?三宅直子中野健治森下圭介原 完治向中野義雄8.2
371978.11.20恐龍くん町を行く辻 真先田代文夫福島 正名輪 丈6.4
381978.11.27魔法の料理はフーランパ辻 真先剣竹 青森下圭介原 完治 岡 友美8.2
391978.12.4がんばれ!赤ちゃんゴリラ安藤豊弘田代文夫加藤音次郎名輪 丈6.4
401978.12.11ハートの鬼の泣きどころ三宅直子剣竹 青森下圭介原 完治岡 友美5.7
411978.12.18うわさの魔女屋敷金春智子田代文夫阿仁ますお名輪 丈6.4
421979.1.8振袖姿の初登校曽田博久剣竹 青森下圭介原 完治岡 友美5.7
431979.1.15お手伝いさんはサル山育ち山本 優田代文夫加藤音次郎 名輪 丈4.1
44 1979.1.22島からの便り鷺山京子田代文夫阿仁ますお名輪 丈6.1
45 1979.1.29魔法の国からの使者曽田博久田代文夫阿仁ますお名輪 丈4.9

キャスト
チックル(吉田理保子)
チーコ (麻上洋子)※最終回(45話)のみ、潘 恵子
小森春子・矢野さとみ(北浜晴子)
小森ヒナ(駒沢トヨ子)
小森冬吉・山谷ドン太(大竹 宏)
ポチ(千々松幸子)
アゴ(田の中勇)
校長(山田俊司)
教頭先生(八奈見乗児)
高倉先生(増岡 弘 )
フー子・吉川 正(山本圭子 )
花村先生(杉山佳寿子)




と、今回もなんとか終了。
本作品は東映製作の魔女っ子アニメなのに東映動画製作ではないために
一連のシリーズには数えられず継子扱いを受けている
「キャプテンウルトラ」状態の作品であるのですが、
昭和50年代に子供時代を送った女性には馴染み深い作品なんですよね。
山瀬まみさんも印象深い魔女っ子アニメとして、
チックルとルンルンを挙げていらっしゃいましたしね。
コロナ禍で殆どロックダウン状況の現在。上京はおろか大阪に行くことすらもままならなくなり、
流石に資料が枯渇してきました。
では次回、更新まだ出来るかな…?

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