看板

70年代、マジンガーの特大ヒットでアニメ、玩具業界が一変したこの時期、
どこのチャンネルひねってもやれ合体だ変形だ侵略者を迎え撃て
というのが百花繚乱状態でしたねぇ。おもちゃ買う側も大変。
今回の作品はそのライン上ではありますが
様々な工夫が施された変化球的作品です。

宇宙魔神ダイケンゴー
(1978年7月28日〜1979年2月15日・
テレビ朝日系放映・全26話/製作・鳥プロ、東映エージエンシー )


ダイケンゴー対チラノザウラー

広い銀河の果てまでも 悪を叩いて流れ星
行く手を阻むか宇宙の地獄
怒れ正義のダイケンゴー!


宇宙を駆けるスペースオペラ風ロボアニメ
時は1978年。宇宙戦艦ヤマトの超特大ヒットにより
アニメフィーバーなどと世間が大騒ぎしていた年。スター・ウォーズの日本公開もこの年ですね。
そんな折に登場した本作品は、両者の影響を多分に受けつつも
独特の味付けによって存在感を示した異色作です。
あらすじはこんな感じ。

無限に広がる大宇宙。
銀河系宇宙はエンペリアス星を中心に銀河系連盟が成立し、
銀河に住む人々は平和で豊かな暮らしを謳歌していた。

ところが、ある日突然、銀河征服を目論むマゼラン大帝率いる
マゼラン軍が押し寄せてきた。冷酷な女総司令官バラクロス、そのバラクロスの下、
作戦を指揮する戦闘隊長ロボレオン、そして縦横無尽に暴れまわる
破壊兵器・獣骨メカの大軍団。エンペリアス星人はこの侵略に立ち向かわんとするが
圧倒的軍勢の前に劣勢に立たされていく。エンペル王の3人の王子も必死に戦うが
第一皇子・ザムソンはロボレオンの卑怯な罠にはまり殺され、銀河連盟は敗北。
マゼラン軍の勝利で戦争は幕を閉じる。

全てを失い、失意のどん底であえぐ銀河の民。最愛の兄を失った第二皇子・ライガーは
マゼラン軍への復讐を誓う。家督継承権を弟の第三皇子・ユーガーに譲り、
マゼラン軍の追跡を決意。その時、950年周期でエンペリアス星に近づく彗星・「魔神の星」の
光を浴びて、伝説の守護神・ダイケンゴーが覚醒する。
ライガーは仲間たちを集めて、宇宙戦艦・戦闘宇宙艇にもチェンジできる
宇宙魔神ダイケンゴーを駆って、マゼラン軍に戦いを挑んでゆく。

ダイケンゴー・ライガー・クレオ

スペースオペラをモチーフにしつつもお家再興モノを絡ませるあたりが日本的といいますか。
主人公の第二王子・ライガーは多分に若き日の織田信長を意識したかのような
荒くれものの大たわけ(失礼)。本来家督を継ぐ長男が戦死したため、
代わって後を継ぐことになったものの、
家督継承者としての教育を全く受けていないため
ダイケンゴー全景 ストーリーを通じて成長していくという展開になっていきます。
宇宙の星々を旅して、人と出会い、別れ、
悪逆非道なマゼラン軍と戦い、そして旅立つ。
基本一話完結なので
おおまかなフォーマットはこんな感じですね。
ライガー一行の目的は銀河を荒らしまわるマゼラン軍を
追撃し討伐するという目的のほかに、
かつての同盟星でもある銀河連盟の星々を巡って
共闘、奮起を促す目的もあるのですが、
その星々の大半はすでにロボレオン率いる
マゼラン軍+獣骨メカ軍に支配されていて、
そうとは知らないライガー一行が星につくなり
捕らえられ、牢に入れられ、処刑台に乗せられ…
なんかそんな話は覚えてます。
そう。ダイケンゴーの世界観は基本、
主人公側が圧倒的不利な立場から始まります。
故郷の星は乗っ取られ、行く先々の星も敵の手に落ち、
かつての仲間も敵となり…。
こういう「見てて痛くなるストーリー」って、
子供心に敬遠しちゃうんですよ。辛くて。
それが「タツノコテイスト」でもあるんですがね。

ダイケンゴーも異色のロボットです。
見かけはいかにも当時のスパロボらしく
トリコロールカラーの合体ロボですが、
じつはこの方エンペリアス星の守護神様。
つまりは神様なワケです。
神様のわりには合体変形はもとより
宇宙船になったり剣で暴れたり
ヌンチャク振り回したりと
なかなか芸達者な神様です。
合体・変形シーンも結構凝っていて
(今見ると多少特殊効果がウルサすぎる感もありますが。)
3機分離合体マシーンの部では
かなりの完成度を誇る部類に入ると思うのですが。
とはいえ、一番の特徴はやっぱしマスクを開いて出てくる
「お口」でしょうね。
ぶ厚いタラコくちびるの中にひかえるは、するどい牙。
カッコイイかそうでないかは別として、インパクトは充分。
おまけに火まで吐いてくれちゃいます。でも、子供心に
「マスクしたまま戦ってくれよ」と思ったのもまた事実。
当時の子供の意見を言わせて貰うなら、ロボットの顔は
人間的パーツが目立たないロボットのほうが好きなんですよね。
唇や瞳、鼻の穴や耳の穴といったパーツが付いてると「だっせー」と
思っちゃったのも事実。その辺の塩梅がまだ乱立期かつ過渡期だったから
今見ると味ありすぎなデザインのメカもこの時期結構ありますよね。

原作・酒井あきよし氏のコメント
-製作意図を。-

ロボットものでもテーマを設定して、それにそって宇宙ロマンアクションというものを
製作していきたい。したがって単なる活劇をやるだけではなくて、
本来の意味での芝居をやるようにしたいと思っています。
スターウォーズのようにね(笑)。

-対象年齢はどのへんですか。-

内容がかなり高度なので、中・高校生が中心となるでしょうね。
また小学生や大学生、それに大人が見ても楽しめる部分もあります。

-その他、苦労話をひとつ。-

鳥プロが出来て、わずか半年たらずですので、
作品を原作で作ること自体が大変な苦労!
プロデューサー・陶山 智氏のコメント
-力点はどこに?-

他の作品との違いをどう出すかということで、
やはり、ストーリー展開の面白さ、良さを強く押し出していかないと
だめだと思うんですよね。

-ご苦労などをひとつ。-

私はこれがプロデューサーとしての初仕事。
以前、タツノコプロでは企画文芸部、それ以降
フリーのライターだったんです。したがって、
企画の段階から現場と密に連絡を取りながら、
局などと営業的な仕事をするのが大変です。

作画監督・田辺由憲氏(グリーンボックス)のコメント
作画上でもっとも苦労する点は、舞台が地球ではないということですね。
地球以外の感じをだして、なおかつ地球的なイメージをこわさない
ようにするのに気をつかいます。
それから、主人公は日本の剣豪的なものと
西洋のスパルタカス的なもののイメージの組み合わせですから
いままでのアクションものと違い、銃ではなく剣を武器とするので
チャンバラの要素をどういう形で取り入れるか、
頭をなやましています。


タツノコテイスト満載

宇宙の男ライガー

ダイケンゴーには、それまで蓄積されたタツノコテイストがふんだんに散りばめられています。
侵略者マゼラン皇帝の率いるロボレオンの立ち位置はまさしくガッチャマンのベルクカッツェのそれでいて、
容貌はキャシャーンのブライキングボス。1000年単位の周期で巡って来る彗星の力で目覚める
ダイケンゴーは、「キャシャーン」のホーリー彗星接近で使用可能になった決戦兵器・スプレーザーそのままです。
OPの納谷悟朗のナレーションは、もう言うに及ばず。
冒頭で死んだと思われていた最愛の兄が謎の仮面騎士ブライマンとなって弟のライガーを支援するというのも
「マッハGOGOGO」の覆面レーサー、あるいは「ガッチャマン」のレッドインパルス。
ましてやサイボーグとして蘇生、というのは「ガッチャマンU」のコンドルのジョー…あ、
こっちが時期的に先だからこれはいいか。タツノコ独特の「重い人間ドラマ」も健在で、
ヒロインのクレオ(当時の雑誌ではやたら「クオレ」と誤植されてた悲劇のヒロイン。)の父親・ダレスが
ロボレオンに密通していた裏切り者のスパイで、それを苦悩するという役柄。あげくクレオも敵に捕らわれた際に
人質としてダイケンゴーと交換交渉に利用されてしまいます。後ろめたさばかりか、主人公の足を引っ張る
役目まで担わされたクレオの心中いかばかりのものか。ライガーたちの機転でダイケンゴーは守り抜き
クレオも無事救出されますが、ライガーはクレオの頬を一発しばき、
「お前はお前だ。俺たちの仲間だ!」とクレオを迎え入れてくれて
一件落着。ライガーは基本的に熱血単細胞なので、複雑な人間ドラマの際はカンフル剤的
役割を果たしてくれてます。こういうときこういう熱血漢キャラは助かります。胃にもたれなくて。

エンペル王とルーガー皇子


宇宙全体が舞台なんですが、たま〜に地球も舞台になります。
「第三惑星の友情」では、ロボレオンがダイケンゴー以上のスーパーロボットを
地球人に作らせようと侵略を開始します。(そんな博士は地球にいっぱいいるからなぁ。)
結果、ダイケンゴーに防がれてしまいますが。
その後も再び「危うし!第三惑星」で地球に目をつけるロボレオン。
今度は地球人をすべてマゼラン軍のサイボーグ兵士にしてやろうと
侵略を開始します。(ソフトからハードへの転換か。堕ちたなぁ地球人の価値も。)
無論、またもやダイケンゴーに防がれてしまいます。お手数掛けますダイケンゴー様。

いざいざ必殺十字剣


結末・そして解散
ダイケンゴーとライガー一行の必死の反抗に 次第においつめられるマゼラン軍。
終盤ではそれまで敵側だったクレオの父・ダレス
(裏切りに裏切りを重ねてきた卑劣漢。その甲斐あって今はマゼラン軍の軍務大臣)が、
娘の言葉&ロボレオンの非情なふるまいに我に返り、
ロボレオンを裏切って(何回裏切るねん。)反乱を起こしますが、
ブライキングボスのようなロボレオンに人間が勝てるわけもなく、
ダレスはロボレオンに殺されてしまいます。
(哀れ、というより、今までの裏切りを見てる側にすれば「いい気味だ」とも思えてしまったり。)
父を殺されたクレオの怒りとともに、ダイケンゴーは
最終決戦に参ります。

実は最終回を見れていません。
(関西でのオンエアは平日朝8時だったこともありまして、多分登校上の兼ね合いかと。)
話によると、実は仮面騎士ブライマンの正体が第一話で殺されたと思ってた
兄がサイボーグになってよみがえった姿であると解り、
ここにエンペリアスの三王子が集結。
(とはいえ、ライガーたちに兄は自分の素性を明かしてはいない。)
最終決戦で兄・ブライマンは一話同様ロボレオンと決闘。
今度はブライマンの勝利でロボレオンは爆死。司令官のバラクロスは逃亡。
んでもって最後は首領のマゼラン皇帝を打ち倒し、
銀河に平和を取り戻した後、ライガーは再び宇宙の彼方に旅に出た、という内容だったと
伺っています。すみませんなんか曖昧な情報で。

タカトク製合体ビルドプラン合金 ダイケンゴー(現在はプレミア価格で21万円!)


当時、視聴率がよければ1年の延長も考えられていた「ダイケンゴー」ですが、 視聴率は芳しくなく
(下記リスト参照)
お試し期間の半年であっさり終了。
その後、製作元の鳥プロは解散してしまうのですが、
この「ダイケンゴー」のみ産み落としていった
鳥プロとは、どのようにして生まれ、消えていった会社だったんでしょうか?

鳥プロのころ/原作者・酒井あきよし
僕は(鳥海)尽三さんが独立する1年ちょっとぐらい前にフリーになってたから。
幸運だったのは、フリーになっても暫くやっていけるようにって、尽三さんが当時やってた
「ヤッターマン」のシリーズ構成(クレジットは鳥海氏と連名で「企画」表記)
契約でやらせてくれたんだよね。ホン(脚本)も書かせてくれたからさ。で、1年半くらいしてから、
陶山さんと尽三さんが(タツノコを)辞めて、鳥プロを一緒にやらないかって誘われたんですよ。


(ダイケンゴーについて)

あれは会社を作ったからって、スポンサーに「お祝い」でもらったのよ。
尽三さんがタカトクの人と仲良かったこともあって。
それで東映に話を持っていったら、制作費が下りることになって、
製作をどこにするって言った時に、グリーンボックスの佐藤みっちゃん
(佐藤光雄=グリーンボックスの代表)が聞きつけて
「ウチでやらせてくれ」って、飛んできたわけですよ。
尽三さんはみっちゃんを可愛がってたからね。
ところが、アレが大変でね。陶山さんがプロデューサーになって
しょっちゅうグリーンボックスに通ってたんだけど、
やっぱりほら、グロスで出してるでしょ。だから上がりが解らないし、
遅れるし、その後、火事出したりなんかしたよね。
それに関してはそんな被害は受けなかったんだけど、
「ダイケンゴー」自体はそんなに儲からなかったんだよね。



(ダイケンゴーのあと)

「ダイケンゴー」のあとが決まらなかったから、僕は鳥プロ1年くらいで
辞めちゃったんだよね。
なぜかというと、(鳥プロには)営業がいないんだよ。
要するに、机に向かって字を書く人間ばかりじゃない?(笑)
だから、誰かそういう人がいれば
また違ったかもしれないけどね。


(「タツノコプロ・インサイダーズ」2002.12.20発行 講談社刊インタビューより抜粋)

営業がいない、というのは、製作プロにとっては致命的。
いくら良質の作品を作ろうとも、売り込む手段がなければどうにもならないわけで。
ましてや処女作「ダイケンゴー」が視聴率的に芳しくなかった事もあり
次の仕事も決まらないまま鳥プロは1年余りで解散・消滅してしまいます。
(1979年10月放映開始の「科学忍者隊ガッチャマンF(製作・タツノコプロ)には企画・鳥海尽三の横に「鳥プロ」と記述があったので
 この時期までは存続していた模様。」)


多くのアニメプロダクションが生まれては消えを繰り返すこの業界、
製作プロを維持することがいかに困難なことであるかは
これまでの歴史が物語っていると言えますね。




宇宙魔神ダイケンゴー 製作スタッフ

原作/酒井あきよし
プロデューサー/陶山 智・佐藤元雄
企画/鳥海尽三(鳥プロ)
総監督/八尋 旭
作画監督/田辺由憲
美術/中村光毅
キャラクターデザイン/高橋資祐・井口忠一・岳本周明
メカニックデザイン/大河原邦夫
製作協力/グリーンボックス
音楽/筒井広志
OP/宇宙魔神ダイケンゴー(作詞/鳥海尽三・作曲/小林亜星・編曲/高田弘 ・唄・堀江美都子・ザ・チャープス)
ED/宇宙の男ライガー(作詞/酒井あきよし・作曲・小林亜星・編曲/高田弘 ・唄・MOJO・ザ・チャープス)


宇宙魔神ダイケンゴー放映タイトル

放送No放送日サブタイトル脚本演出視聴率
11978.7.27あらくれ星雲児鳥海尽三八尋 旭2.8
21978.8.3孤独の星武者陶山 智
山村一朗
古川順康2.4
31978.8.24さすらい星ブライマン酒井あきよし
福島みちお
山内重保1.6
41978.8.31二つのはぐれ星鳥海尽三
毛利 元
古川順康1.5
51978.9.7友情の小惑星陶山 智
山村一朗
古川順康3.3
61978.9.14さらばゲリラ星酒井あきよし
福島みちお
八尋 旭2.7
71978.9.21第3惑星異常なし鳥海尽三
毛利 元
山内重保3.5
81978.9.28愛の裏切り星酒井あきよし
福島みちお
八尋 旭2.9
91978.10.5二連星の誓い鳥海尽三
毛利 元
古川順康8.2
101978.10.12泣くな母恋星酒井あきよし
福島みちお
山内重保7.0
111978.10.19地獄星雲の対決鳥海尽三
毛利 元
八尋 旭7.4
121978.10.26嵐を呼ぶ王星酒井あきよし
福島みちお
古川順康6.2
131978.11.2ブライ星の秘密酒井あきよし
福島みちお
古川順康5.4
141978.11.9移動星の設計図海老沼三郎
酒井あきよし
八尋 旭7.0
151978.11.16魔の怪物星酒井あきよし
福島みちお
山内重保6.0
161978.11.23星の渡り鳥酒井あきよし
福島みちお
古川順康4.0
171978.11.30第3惑星の友情鳥海尽三
毛利 元
八尋 旭5.6
181978.12.7謎のゆうれい星酒井あきよし
福島みちお
古川順康6.0
191978.12.14銀河のはぐれ星鳥海尽三
毛利 元
古川順康6.6
201978.12.21母なる星の危機福島みちお八尋 旭5.8
※11978.12.28さらばゲリラ星(再)--5.9
211979.1.4星の十字架
福島みちお古川順康5.4
221979.1.11危うし第3惑星福島みちお八尋 旭5.7
231979.1.18マゼラン星の陰謀酒井あきよし
福島みちお
八尋 旭3.6
※21979.1.25愛の裏切り星(再)--4.2
241979.2.1星魔王の挑戦福島みちお古川順康6.1
251979.2.8星雲灯台]−01 福島みちお古川順康4.3
261979.2.15戦え!王星三剣士 陶山 智八尋 旭5.0




キャスト

ライガー王子(石丸博也)
クレオ(堀江美都子)
エンペル王(藤本譲)
エリザ王妃(樽井京子)
ユーガー王子(島田敏)
ザムソン王子(山田俊司)
ブライマン(納谷悟朗)
アニケ(西尾 徳)
オトケ(井上 遙)
ダレス(筈見純)
マゼラン大帝(田中崇)
ロボレオン(青野 武)
バラクロス(友近恵子)
ナレーター(納谷悟朗))ほか


というかんじでお届けしました記憶52回目。
まあ、今回の御題は大変でした。なにせ資料がほとんどない。
独立プロの唯一の作品、放送後即解散、当時的な人気もイマイチで
現在も特に再評価の声が聞こえてこないということもあって
完全に埋もれた作品になっちゃってます。
一応版権は東映エージェンシー預かりになってるんで
東映さんがその気になればソフト化あり、かな?
一応短期集中的に続いたスパロボ特集も今回で一段落。
次回はまた違ったの取り上げます。それでは。




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