日本で海外の名作文学を扱ったアニメといえば、
日本アニメーション製作による「世界名作劇場」シリーズですが、
それ以外にも海外の名作文学をアニメにした日本アニメは多数存在します。

本作はそんな中でも初期の作品に属する作品なのですが、
…また見れる日は来るのでしょうか?

ハックルベリィの冒険

1976年1月2日〜6月25日 全26話
フジテレビ系放映・
製作 グループ・タック


ハックルベリィ・フィン



ヘヴィな時代の逃亡劇。
マーク・トゥエインといえば、アメリカの名作児童文学作家として有名なお方。
「トム・ソーヤの冒険」はアメリカ人の心の故郷的文学として今尚読み継がれてる名作ですが、
氏のもう一つの代表作でもあるのが「ハックルベリィの冒険」。
こちらはトム・ソーヤに比べるとかなり苦くてヘヴィな内容。故に評価も分かれるところなのですが。
そんなハックが1976年、海の向こうの日本でTVアニメになることに相成りました。
名作路線で当てたフジテレビがコマを増やしたい、というのと、海外販売が容易だという点もあって、
新春早々のスタート。

あらすじ(第一話)はこんな感じ。

川のほとりに住むハック。虐待を続ける父から逃れて一人、
小屋にすむ少年であるハックは子供たちとは仲はいいが、
大人からは浮浪児、不良とさげすまれ虐げられる毎日を送っていました。

そんなある日ハックは街の金持ちの家に泥棒にはいろうとする
悪人の計画を聞いてしまいます。それを知ったハックは先回りし、
持ち前の気転で悪人達を返り討ちにします。
一転して街の英雄となったハックでしたが、学校に通わせられる&養子にされそうになったので、
自由を奪われることを嫌がるハックは街から逃げ出したのでした。


第一話を見ると、冒険と少年の日常生活ものかな?なんて勘違いしそう。
ハックが浮浪者という点で大人から蔑まれたり、
差別的な謂れをする点はややヘヴィですが、まだこの1話ではそんなにキツくはない。
問題は2話以降。ハックの親父がアル中の人でなしで、
児童虐待しまくります。嫌気が差してハックは家出、やがて父は死に、
脱走した黒人奴隷のジムとであったハックは、
追っ手を逃れて各地を転々と逃亡の旅を続けることになります。
当時、黒人奴隷は神が白人に与えた労働力とされていて、
奴隷を逃がすこと、それを手助けすることは神に逆らう大罪。
ハックはそんな時代の中で「真の自由」を求めて彷徨うのです。
…子ども向きにしてはヘヴィすぎやしないかな…。
でもこういう重いテーマを扱いながらもハックの陽気なキャラクターは相変わらず。
ややもすると隠滅としそうな物語を明るくしてくれています。
物語はジムとハックがあちこちを旅しながら様々な人間模様に巻き込まれ、
最後、ハックとジムが別れるまでを描いています。





結果は半年で…
ここで製作当時の背景などを。
フジテレビは当時「アルプスの少女ハイジ」「フランダースの犬」と名作アニメで大ヒットを飛ばしており、
1976年には「母をたずねて三千里」をスタンバイ。
フジ側とすれば「名作児童文学ものは当たる!数を増やそう!」と
考えたことは想像に難くありません。ただ、製作元の日本アニメーションも当時、
名作劇場のほかに「みつばちマーヤの冒険」「シンドバットの冒険」「草原の少女ローラ」といった作品を抱えており、
手一杯だった感は否めず(以降さらに作品製作は増加傾向を辿る)
結果、フジテレビは別会社に名作アニメの製作を依頼します。

依頼を受けたのは「ヘラルド」。名古屋の映画配給会社で、
「日本ヘラルド」の名前で覚えている人も多いでしょう。(エマニエル夫人で有名なあそこです。)
ヘラルドは依頼を承諾。アニメーション製作はヘラルド配給で作られた
長編動画「ジャックと豆の木」を作ったグループ・タックに委ねられました。
当時名作アニメ路線を拡大しようというフジテレビの目論見として、
日曜と金曜の二つの枠で名作アニメを放送、という考えはとりあえず実現しました。
しかし、当時の金曜夜7時という枠は激戦区。当時の各局の放送番組を見てみると―

NHK ニュース
日本テレビ 歌まね合戦 スターに挑戦!
TBS 宇宙鉄人キョーダイン
フジ ハックルベリィの冒険
NET 勇者ライディーン→マシンハヤブサ

視聴率では子供番組ではキョーダインが12〜3%。ライディーンが15〜6%を取っていました。
で、我がハックルベリィはというと、

2/13 7.9%
4/9 9.8%
5/14 6.2%
6/18 7.3%

結果から言うと視聴率的には惨敗。調べた限り二桁突破は適わなかったようです。
裏番組が強かった以外にも、キャラクターデザインが写実的だったため
ハイジやネロを見慣れていた子供たちには違和感があったのかもしれません。

ストーリー的には無理の無いように終わっているように思うのですが
結果から言えば打ち切り。というのも、ハックの後番組が
「フランダースの犬」の再放送!半年前に放送したばかりのアニメを
ゴールデンタイムで再放送というのは、非常事態として考えたほうがいいでしょう。
以降グループ・タック&フジテレビの名作アニメは作られておりません。


 

ハックルベリィの冒険第8話シナリオ表紙

 

突然の劇場版・そして消失
半年で終了したハックルベリィですが、その後再放送が繰り返され、
子ども達の間でも認知度は高くなっていきます。が、やはり絵がリアルで可愛げが無いからでしょうか、
日本アニメーションの世界名作劇場に比べても人気は低く、
また人種差別や奴隷問題というヘヴィな内容はやや難解だったともいえます。

そんな再放送が途絶えた1991年8月、突然「ハックルベリィの冒険」が劇場用長編動画として
公開されます。内容はテレビシリーズの総集編で1時間30分。過去ビデオソフト化もされており、
現状唯一視聴のできるのはこの劇場版のみといえます。

しかし、この劇場版公開をきっかけに、TVシリーズは忽然と姿を消してしまいました。
というのも、どうもこの劇場版を編集する際に、
TV版の原版にハサミを入れてしまったらしく、このときTV版は消失し、
完全な形では残っていないと言われているからです。
放送用のフィルムも既に35年の歳月が経っていて、おそらくジャンクされていると思われます。

そして、製作元のグループ・タックが2010年に倒産
「まんが日本昔ばなし」などのメジャー作品は別の会社が管理、商品化という感じになってますが、
「ハックルベリィの冒険」はどうなったのでしょう…。
海外用のフィルムは世界各地で残っていると思うのですが。



ハックルベリィの冒険 スタッフ
製作/鬼丸一平
原作/マーク・トウェイン
企画/別所孝治(フジテレビ)・渡辺忠美(日本アニメーション)
プロデューサー/鬼丸一平
チーフ・ディレクター/光延博愛

演出/光延博愛・小華和ためお・樋口雅一ほか
脚本/佐々木守・吉田喜昭・阿部桂一ほか
作画監督/近藤英輔(前期)・上口照人(後期)
美術/内田好之・阿部幸次
オーディオディレクター/田代敦巳

音楽/越部信義
OP/ほら・ハックルベリィ・フィン(作詞・中山千夏/作曲・越部信義/唄・堀江美都子・コロムビアゆりかご会)
ED/河のうた(作詞・中山千夏/作曲・越部信義/唄・堀江美都子・コロムビアゆりかご会)


ハックルベリィの冒険 放映リスト

放送No放送日サブタイトルストーリー要約
1976.1.2宿なしハックハック登場。
1976.1.9こわいお父さんハックには父がいました。が…!
1976.1.16見知らぬ森の丸太小屋 ハックは丸太小屋でジムと出会う。
1976.1.23自由への旅立ち 鬼のような父から逃げ出した
ハックは無人島へ
1976.1.30お父さんの死父が死んだ。
ハックとジムは協力を誓い合う。
1976.2.6確かなる握手追っ手を逃れ、島を後にするハックとジム。
1976.2.13泥棒だって人間だ難破船上で泥棒の
仲間割れに関わるハック。
1976.2.20ジム危うし賞金目当ての悪党どもが
ジムを狙う!
1976.2.27ジム救出大作戦 ジムを助けるため悪人と
知恵比べするハック。
101976.3.5引き裂かれた友情ジムと別れて名家の世話に
なったハック。だが…
111976.3.12宿怨の家町の二大名家の
骨肉の争いに巻き込まれるハック。
121976.3.19男の約束 ハックは男の約束で敵方の
捕虜を逃がす。しかし…
131976.3.26悲しみを越えて愛し合うトニーとハニーは
駆け落ちを決意する。
141976.4.2旅の驚きハックとジムは渡しの
アルバイトを始める。
151976.4.9渡しを守ったハック町の人のために
渡しを守るハックとジム。
161976.4.16幻のお母さんメリーが幼い頃
別れた母と再開。
171976.4.23荒野の少年たち父を殺されたジョーが
敵討ちに来た。
181976.4.30ジムのおまじないジムが死んだ人の霊を
呼び出すおまじないを始める。
191976.5.7ジム、待っててくれ ハックとジムが盗賊に
捕われてしまった!
201976.5.14空は一つだ!ハックらは黒人のハンク爺さんを
助けて活躍する。
211976.5.21王様と公爵ハックとジムがインチキ仕事に巻き込まれる
221976.5.28イギリスから来た叔父さんメアリーの叔父さんと称する男が現れた。
231976.6.4微笑んだメアリーメアリーの叔父さんと称する男が
2人も現れた!ホンモノはどっち?
241976.6.11売られたジム ジムが奴隷として売られてしまう。
251976.6.18逃げろジム ハックは村の人達に追われ
銃で足を撃たれてしまう…
261976.6.25帰ってきたハックハックとジムの別れ。

キャスト
ハックルベリィ・フィン(野沢雅子)
ジム(山田康雄)
父親(大塚周夫)
ダグラス(武藤礼子)
キャサリン(吉田理保子)
ワトソン(麻生美代子)
サッチャー(北村弘一)


と、なんとか終了。
ハックルベリィの冒険自体ほとんど
資料らしい資料が残っておらず苦労しました。
思いの外、原版の消えたアニメって多いのですね。
いずれ全話再見出来る日が来るといいのですが。
次回は5月末公開予定です。

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