一球さん

1978年4月10日〜10月23日 全26話
フジテレビ系放映・製作 日本アニメーション


一球さん(番宣用セル)



豪放磊落自然児一球の無軌道野球
あらすじはこんな感じ。

巨人学園の代行監督として就任した岩風は神宮大学と練習試合を行なう一軍のメンバーを白紙にすると通達した。
翌日の神宮大学との練習試合には監督が推す謎の新人たちを起用するという。
驚愕し憤怒する大友以下の一軍ナイン。
そしてやってきた神宮大学との練習試合。
監督が招いたのは高知の司・北海道の一角・大阪の堀田の「三球士」と呼ばれる天才たち、
そして最後に
「遅くなりました!」と試合中に飛び込んできたのは富士山の野生児・真田一球だった。
三球士の抜群のセンスと天才的技量、
野球をまるで知らないながらも、一球の抜群の運動神経と驚愕動転の奇天烈な行動は
次第に球場全体を飲み込んでいく。

しかし岩風監督代行の強引な手法にプライドを傷つけられたエース大友は
一球と三球士に対して露骨な敵意を剥き出し始めて行く…



シンエイ動画の描く新感覚野球
当時の時代背景を見てみると、
放送当時、水島慎二先生の野球漫画はことごとく映像化されていまして、
その強引とも言える展開とキャラクターの牽引力によって「ドカベン」「野球狂の詩」といった作品は
高視聴率を獲得するに至っていました。(劇場実写映画になった分はおいといて、と。)
両者とも製作を請け負っていたのは土田プロ。日本アニメーションとしてはもう一本と考えていたのですが
週に二本(野球狂の詩は当初月イチ放送(水原勇気編)、のちに週イチに)もかかえてさらに新番組というのは
機能上無理だったようで、当時新興会社として発足したばかりのシンエイ動画に一球さんの製作が
依頼されることになります。シンエイはこの前の年に「おれは鉄平」の製作も請け負っていたこともあって、
日本アニメーションとのパイプは出来上がっていましたから依頼はしやすかったのでしょう。
(鉄平は短命で終わりましたが…)
シンエイ動画としては鉄平に次ぐ二本目の作品という事でかなり力のこもった作品となりました。
ドカベン、野球狂以上に水島原作を忠実に表現しようと、Gペンのペンタッチまで再現。
さらに画面構成もマルチビジョンで表現
(上下二画面にして投手の投げるアングル、打者の打つアングルを一括描写)とか、
斬新な心理描写(画面に「!」のみの表示とか。)など、ややもすると前衛のような画面が続出。
緊張でカチコチになった様を体を石化させる作画であらわしたり、
プライドが崩れる様を自分の硝子像の瓦解で表現したり、
今みるとちょっと笑ってしまうほどストレートなのが多いのですが、こういうオーバーアクションな表現は
当時他に類がなかったので、「一球さん」のアニメの特徴の一つになっています。


  

大場伊紘(日本アニメーションプロデューサー)
―製作意図をひとつ…。水島先生の意図を勿論尊重しながら、
一球という野球を全く知らない若者が凄い努力の末、
いうなれば「自分の野球」を作っていくというところで、
現代の子供たちに欠けているところを
何とか表現したいと思っています。
―原作と比較して…
原作の絵が非常に動きがあるんで一コマに大変気を使います。

水島新司(原作者)
この作品は、雑誌よりもアニメにしたかった作品だ。
「ドカベン」などの野球アニメと違い、野球の知らない子供にルールや楽しさを教えていく作品。
一球さんは不思議な少年で、ランナーになったときに野手を飛び越えたりする。
これはルール違反なのか?わかりやすく興味を持って野球を知ってほしいのです。

「ドカベン」はチームワーク、
「一球さん」は切り開いていく野球だ。


月刊アニメージュ1978年7月号インタビューより抜粋

打つ一球



激闘への予感、そしてライバル
巨人学園における劇的カンフル剤としての一球&三球士の登場は、
大きなうねりとなってそれまでの巨人学園ナインを飲み込んでいく。大友に同調していた一軍ナインも
やがて彼らの実力を認め始めるが、エースの大友だけは意地になって認めようとせず、一球に殺意すら抱くようになり始める。

人一倍プライドが高く、精神的にも脆い部分があった大友は一球と対戦した際
その増長と思い上がりからコテンパンに打ちのめされ、自暴自棄になって野球部を去ってしまう。

バイクを乗り回し、酒をあおり、すさんだ生活のまま堕ちていく大友を助け上げたのは、他ならぬ一球だった。

一球の真っ直ぐさに根負けした大友は野球部に復帰。
つまらぬお山の大将気質の抜けた大友は三球士とも打ち解け、
巨人学園は夏の甲子園の予選にいよいよ挑む。

初心に帰るべくシード枠を返上し、一回戦から戦うことになったものの、
一軍メンバーが体調不良で全員出場出来なくなってしまう。
一球は二軍メンバーを集めて一回戦の相手・弁強高校に挑むも苦戦。
追い詰められるものの一丸野球を最後にやり遂げ逆転勝利する。

復帰した1軍メンバーは2回戦から怒涛の快進撃を開始。
一方、ライバルの五味兄弟も壮絶な猛特訓で一球&巨人学園を返り討ちにしようと牙を研ぐ。
そして鬼桜男子高ナインも打倒巨人学園を標榜し不気味に迫っていた…



すべて積み残しゲームオーバー
しかし、結果として裏番組「ルパン三世(新)」「クイズ100人に聞きました」「魔女っ子チックル」に勝てずに
2クールで打ち切り。ストーリーの流れを見るに2クール以降はいよいよ甲子園での激闘(つまり本番)が
描かれる予定だったはずで、そのために1〜2クールは丹念に一休と大友との確執や和解、
理事長の思い、ライバルたちの背景描写を描いたはず。
が、それらが実を結ぶ前に終了してしまったのだから、このアニメを見るとフラストレーションを溜めずにはいられません。
これから、ってところで「ちょうど時間となりました」的にオシマイ。

結局野球の試合が描かれたのは神宮大学との練習試合と1軍対2軍の試合、
甲子園地方予選の対弁強戦の3つのみ。
(鬼桜との練習試合、25話の徳丸ヶ原戦、京玉戦はダイジェストみたいなもんだし。)

最終回は一球、九郎らが次回対戦する相手、友西学園を偵察に行くも、そこは廃校の決まった貧乏高。
バットも自分たちで木から削って作らないと無い、という(そんな高校が地区予選に出れるのか?)有様で、
見かねた一球がバット作りを黙々と手伝って、彼らと一緒に練習し日が暮れるというお話。

…これが最終回?ちなみに友西高の監督は原作者・水島先生そのもの。
まあ、だから最終回でしょと言われるとそうなんだろうけど。
ラスト、主題歌の「青春の歌がきこえる」が流れ、カーテンコールのごとく巨人学園のナインや、
ついぞ活躍することの無かったライバルたちの顔が映ったあと、
物語では最後まで舞台になることのなかった甲子園球場がドンと現れ、
永井一郎のナレーションが問答無用に流れつつ、このアニメは終了します。

この一球は、絶対無二の一球である。
投げる一球、打つ一球、そして追う一球、
燃える球児たちのその胸に刻まれた
「一球入魂」の四文字。
勝っても負けても、一球にかけた青春の日々は
球児たちにとってそのすべてが「栄光」なのである。



一球さん スタッフ
製作/本橋浩一
原作/水島新司
企画/別所孝治(フジテレビ)・渡辺忠美(日本アニメーション)
プロデューサー/大場伊紘・別紙壮一
制作デスク/真田芳房
文芸/岡部英二・松岡清治
作画監督/本多敏行・富永貞義

製作担当/シンエイ動画
製作協力/東京アニメーションフィルム・アトリエローク・
    富プロダクション・オーディオプランニングユー
    スタジオメイツ・イージーワールド
音楽/丸山雅仁・荒木とよひさ
OP/青春の歌がきこえる(作詞・保富康午/作曲・荒木とよひさ/編曲・丸山雅仁/唄・荒木とよひさ)
ED/一球さん(作詞・保富康午/作曲・荒木とよひさ/編曲・丸山雅仁/唄・堀江美都子)
一球さん 放映リスト

放送No放送日サブタイトル脚本演出
1978.4.10一球登場 松岡清治升 ますか
1978.4.17一球初打席 松岡清治升 ますか
1978.4.24一球と三球士大島武豊吉田しげつぐ
1978.5.1一球対剛速球 みずいでこういち升 ますか
1978.5.8一球猛進中西隆三升 ますか
1978.5.15一球豪打 中西隆三滝沢敏夫
1978.5.22一球頑張れ みずいでこういち升 ますか
1978.5.29唸れ一球 大島武豊升 ますか
1978.6.5一球大特訓 中西隆三吉田しげつぐ
101978.6.12一球走塁中西隆三升 ますか
111978.6.19一球強襲 中西隆三滝沢敏夫
121978.6.26一球大跳躍 中西隆三升 ますか
131978.7.3一球絶叫 みずいでこういち升 ますか
141978.7.17一球友情 大島武豊吉田しげつぐ
151978.7.24一球一路 中西隆三升 ますか
161978.7.31一球伝授中西隆三升 ますか
171978.8.7一球不敵 大島武豊滝沢敏夫
181978.8.14一球無二 みずいでこういち升 ますか
191978.8.21一球讃歌 中西隆三升 ますか
201978.9.4進め一球 中西隆三升 ますか
211978.9.11一球に魂こめて 中西隆三升 ますか
221978.9.18投げる一球打つ一球中西隆三森脇真琴
231978.9.25一球に夢かけて中西隆三原 平了
241978.10.9この一球に悔いなし 中西隆三升 ますか
251978.10.16めざせ!栄光の一球 松岡清治
大島武豊
升 ますか
261978.10.23一球の詩が聞こえる松岡清治
みずいでこういち
升 ますか

キャスト
真田一球(水島 裕)
呉九郎(たてかべ和也)
大友 俊(曽我部和行)
岩風(野島昭生)
芦田麗子(川島千代子)
住吉理事長 (永井一郎)
堀田三吉(古川登志夫 )
一角志郎(滝雅也 )
司幸司(古谷徹)
文六(松岡洋子)
五味連次郎(木原征二郎 )
五味連太郎(飯塚昭三)
丑松(加藤修)
桐野(田中崇)
中沢(三ツ矢雄二)
三ツ縞(辻村真人)
ヤスタケ(野沢雅子)
ミチ(高木早苗)

と、なんとか終了。
個々の作品取り上げたのは随分久しぶりな気がします。
にしても導入部のみで終わってしまった野球アニメというのも珍しいですよね。
水島先生のアニメではこれが今のところ最後の作品になりますか。
出来れば最後までやっていただきたかったなぁ…
美味しいライバルも手薬煉引いて待っていたというのに。
では次回。

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