看板

まず、最初にお断りを。
今回の記憶のかさブタは通常のバージョンではありません。
扱ってる題材が成人向として作られたものであるため、
未成年の方、そういう物に不快感を抱かれている方には
不向きな内容になっています。
故に、そのことを重々承知の上で退場、もしくは閲覧下さい。
また、当時使用された言葉には現在不適切な表現もありますが、
作品の歴史的価値、研究の視点から修正を行っておりません。
どうぞ御了承下さい。


★未成年の方や、成人アニメに嫌悪感を催す方はこちらから退場して下さい。









昭和オリジナルビデオアニメの世界
大人の番外編

昭和OVA特集の実質第五弾ですが、今回は正直かなり神経を削りました。
光あるところに影がある、ではないのですが、
ある意味昭和アニメの裏カテゴリとでも言いましょうか。

昭和58年(1983)に世界初のオリジナルビデオアニメーション
「ダロス(ネットワーク)」が発売され、OVAのあけぼのとなったその翌年、
早くも初のオリジナルアダルトアニメビデオが世に出現。
気づけばそれ以降、各社メーカーや制作プロダクションが我も我もと
AAV(アダルトアニメビデオ)を発表し続けていきます。
先鞭をつけたメーカーがヒットした様をみて、
二匹目のドジョウを狙った結果なのでしょうが…
結果ははたして?

作品の内容が内容なので、扇情的なパッケージやスチールなどは
出来うる限り掲載しないように配慮しています。
また従来のOVA特集とは異なり、
一シリーズ・一ブランドというカテゴリを主体に紹介しています。
今回は今でも視聴が可能なメジャーレーベル作品や有名シリーズは除外して、
現在再見が困難なものに限定して紹介しております(一部例外もありますが)。
また、作品の性質上・スタッフの明記はありません。
猥雑な目ではなく、日本のアニメの歴史的資料を
垣間見るような感じで見ていただければ幸いです。
では、始めていいのか解りませんが、とりあえず始めましょう。




ワンダーキッズ編



雪の紅化粧/少女薔薇刑(1984.02.21発売 30分)
何日子の死んでもいい/いけにえの祭壇(1984.05.01発売 30分)
仔猫ちゃんのいる店(1984.07.21発売 25分)
変奏曲(1984.12.20発売 25分)
サーフ・ドリーミング(1985.02.21発売 25分)
シーサイドエンジェルMIU(1985.05.25発売 60分)

成人向アニメを13年ぶりに復活させた猛者・その名はワンダーキッズ


昭和40年代に劇場用作品として公開されたポルノアニメ作品が興行的・評価的に散々な結果に終わった為、
以降成人向ポルノアニメという土壌は消滅し、後に続く作品も途絶えてしまいました。
しかし1970年代後半になるとVHS・βという家庭用ビデオ規格が普及。
それにつれてビデオソフトなる新たな市場が開拓。80年代になると一気に開花します。
購入若しくはレンタルでソフトを借りて自室でホームシアターを開き、ポテチ片手に視聴する
ライフスタイルが定着していきました(カウチポテト族、などと呼称してましたな)
そんなパーソナルな視聴空間が新たに加わったことで、それまで冬眠状態だった成人向アニメが
再び胎動を始めます。その先鞭をつけたのが、ビデオソフトメーカーのワンダーキッズ。
当時劇画雑誌に多くの作品を寄稿していた職人・中島史雄を原作者に掲げて、(一部「原案」クレジット)
実に10数年ぶりの成人向アニメ、かつ世界初のアダルトアニメビデオソフト
「雪の紅化粧/少女薔薇刑」を発売します。

その記念すべき第1作の内容はというと…

雪山の奥深い村で病気の祖父と二人で暮らす少女、葉子は同じ村に住む恋人、和夫に
「こんな村から出て俺と東京で暮らそう」と誘われるも、祖父の身を案じて断る。
怒った和夫は不良仲間と一緒に葉子を輪姦。さらに痴呆と化した祖父にまで
葉子は凌辱される。祖父は葉子を姦通した後死亡。和夫ら不良少年は雪崩で全滅。
一人残された葉子はすべてを失い、投身自殺して果てるのだった…(雪の紅化粧)

女学生・京子は下校途中に謎の集団に誘拐され、「鬼薔薇の館」と呼ばれる
謎の洋館に投げ込まれる。そこは借金のカタに多くの少女たちが売られ、肉奴隷として
仕込まれる調教場。京子は親の借金のカタにここに売られたのだった。ここで性のあらゆる
調教を受けて、やがては外国に売り飛ばされる少女たち。京子も淫猥な責め苦を受け、
淫らな華を咲かせ始める。いつ果てるとも知れぬ性地獄の館の壮絶な顛末とは…?(少女薔薇刑)


本作の内容は中島史雄が初期によく描いていた陰惨な凌辱もので、オチも暗く救いのない作品になっていました。
当時の官能劇画の定石の展開、といってしまえばそれまでですが、アニメ自体の作りは非常に誠実で、
まるで教育映画のごとき至極真っ当な凌辱シーンなど、見るべき点は多々あります。
ただ、劇画ゆえに垢抜けないモっちゃりとした感じは否めず、
また「官能劇画を購読している年配の男性」をターゲットにして制作したため、従来のアニメファンには敬遠され、
商業的には失敗しました。ただこの失敗がのちの路線変更のきっかけとなり、
以降のアダルトアニメの方向性を見極める指針にもなったので、単なる失敗作ではなく、
後進の為の大いなる犠牲となった作品、と言えるでしょう。


続く第二作「何日子の死んでもいい/いけにえの祭壇」は、劇画風作画はそのままですが
幾分柔らかいタッチになり、チョイスした原作も犯罪色の濃い前作とは異なり、
比較的明るくライトなものが選ばれました。(あくまで前作と比較して、ですが)
テニス部の先輩に淡い想いを抱く何日子(いつこ、と読みます)の紆余曲折を経ての
先輩との愛の成就を描いた「何日子の〜」、全寮制の聖エレミア学園の女生徒・知世が、
美術教師に性の手ほどきを受けたのをきっかけに、同室の女生徒や
院長先生まで虜にする傍若無人(?)ぶりを描いた「いけにえ〜」の二本立。
姦通場面をキャラが引き裂かれるイメージで描写したり、局部修正をネガ反転で表すなど、
アニメならではの性描写の開拓にも様々な実験精神を見せていきます。


 

以上2作品の反省を踏まえて、第三作「仔猫ちゃんのいる店」
同じ中島史雄の原作ながら、キャラクターデザインを今風のアニメキャラに大胆アレンジ。アニパロ満載のお遊びや
ライトなノリも手伝って、前2作品とは比較にならない売り上げを記録し、業界を揺るがす大ヒット作となりました。
そう、アダルトアニメの購買層はアダルトマニアではなくアニメファンなのだという事を
この時メーカー側もようやく実感するに至ったのです。
時を同じくして発売された「くりいむレモンpart1 媚・妹・baby」も
今風アニメキャラ・陰惨さの排除・ライトなタッチという同様の条件で大ヒット。
アダルトアニメの売れ線の基礎を築いたのは「仔猫ちゃんのいる店」と
「媚・妹・baby」だったと言っても過言ではありません。

 

しかし、この後ワンダーキッズは迷走を始めてしまうのです。
第四作「変奏曲」は、
寄宿舎制の学院に通う美少女・知世は誕生日に美術教師の西脇に呼ばれ、家に招かれるのだが、
そこで行われたのは誕生日パーティーではなく、淫猥な性調教だった。
そこに音楽の女教師も加勢し、知世はいつ果てるとも知れない性の地獄に堕ちていく…

というもの。ヒロインの知世は前作同様今風アニメキャラというライト系にしつつも、
内容は陰惨な調教モノというダークな仕様。キャラとストーリーのバランスが悪く、
「仔猫」ほどのセールスは挙げられませんでした。

 


ならば「仔猫ちゃん」夢よもう一度、と第五作「サーフ・ドリーミング」は「仔猫」のヒロイン・MIUの第二作。
中島史雄の原作から完全に離れて、徹底的にアニメファン向けのストーリーとキャラに。
MIUのキャラは前作以上に可愛らしいものになり、(ややコロコロし過ぎてますが)
作画面でも健闘は伺えるのですが、あまりにアニメファン向けに傾倒し過ぎたためか、
マニアックな展開に走り過ぎ、普通の少女のハズだったMIUが、実は宇宙人でした、という新設定まで登場。
飛び過ぎです。そこまではアニメファンは望んでいなかった…。
ということで、最後の頼みの綱だったMIUからも、ファンの関心は離れだしてしまうのです。

結果、1年3カ月で幕を閉じる事になったワンダーキッズの「ロリータアニメ」シリーズ。
最終作の「シーサイドエンジェルMIU」
過去5作品の名場面集に新作部分を織り交ぜて構成した
総決算的なビデオとして発売されました。MIUが司会進行役DJとなって、
ワンダーキッズのアダルトアニメの名場面集を紹介していくのですが、
本作品には「生えいずる悩み」なる謎のアニメが収録されています。
実はこれ、初期の2本立時代に「仔猫ちゃん」と同時収録予定で作られた劇画作品。
路線変更で「仔猫ちゃん」が一本立でセールスされることが決まったため、
行き場を失いオクラ入りになってしまった悲運の作品だったのです(下画面中央)
結果的に今回総決算編ということで初収録され、ようやく日の目を見たのですが、
残念ながら7分ほどの短縮版。全長版はやはりオクラ…。それでも見た人は相当少なそうです。


ワンダーキッズの作品群は作画動画ともそこまで悪くは無いのですが、
撮影状態が芳しくないせいか必要以上に古臭い画面に見えてしまうのが難点でした。
ワンダーキッズはこれらアダルトアニメのリリース後の1985年10月に
史村翔原作の劇画「酎ハイれもん LOVE30S」のオリジナルビデオアニメを
同レーベルで販売しているのですが(アニメ制作は土田プロダクション)
それを最後に事業から撤退、ほどなくして倒産、消滅しました。



オールプロダクツ編



ステージ1 裸足の放課後(1985.03.10発売 26分)
ステージ2 テレパシストIQ315(1985.04.25発売 26分)
ステージ3 PUNKY FUNKY BABY(1985.05.01発売 26分)
ステージ4 シャイNING・めい(1985.10.15発売 26分)
総集編 シンフォニー 夢・物語(1988.12.17発売 75分 発売元・バンダイ 販売元・AE企画)

僅か4本で消えたレーベル「リトルマーメイド」は引き出しがいっぱい
1985年の3月から10月、僅か7ヶ月の間に矢継ぎ早に4本のAAVを発表し、
あっという間に撤退した幻のレーベル「リトルマーメイド」。
制作はオールプロダクツで、発売はmovicが行っていたとのことです。
発売された4本は4本ともカラーが異なるバラエティ豊かなものだったのですが…。

ステージ1「裸足の放課後」レズカップルの女子学生、ミコとナミのストーリー。
でもナミは両刀使いで、公園でモノホンの彼氏としっかりH。
偶然目撃したミコは(そんなとこでしてたら、そら見られますわな)ショックを受けて街を徘徊。
そこを女教師に保護され、そのまま女教師にヤられてしまうミコ(なんでや!)
…とまあ、ポルノに徹した作りをしようと扇情的にした結果なのかも知れないですが、
登場人物に肉食系が多いというか、まともな神経のキャラが一人もいない。
全体をアンニュイな雰囲気が覆っていて、さながらアングラポルノを見てるようなモヤモヤ感が。
だがそれがいい!という傾奇な「通」もいるようなのですが。

 



ステージ2「テレパシストIQ315」はうってかわって伝奇ファンタジー美少女もの。
異世界でミダラ教の教祖・ダミアが復活し、地球征服を目論み行動を開始した。
ダミアは自らのエネルギーを得るため、IQ300以上の少女を狙う。
これに抗うべくサイキック戦士ジョリーは、恋人カオリに囮になってミダラ教に侵入するよう頼む。
しかしカオリはミダラ教内で淫猥な責めを受ける羽目に。その時…!

ってな内容。正直バカバカしい中身です。
IQ300以上の少女を狙うミダラ教に潜入捜査するためとはいえ、
ジョリーに「IQ300以上のふりをして潜入してくれ」と言われたカオリは
どうすりゃいいのさ。ただの体操少女にムチャ言うな。
生贄は既に宇宙中より99人集められていて(宇宙には美少女がいっぱいなのね)
最後の一人になるのが囮のカオリ。ただバレて性拷問の最中、
カオリが覚醒!本人も知りませんでしたが、実はカオリは最強のテレパシストだったのです!(…。)
やっつけというか御都合主義というか、見てるうちにストーリーなんかどうでもよくなってきます。
開かれたカオリの女性器から、黄金に輝く仏様の顔がバッキーンと出現するシーンは
圧巻というか前代未聞。バチ当たるぞ。



ステージ3「PUNKY FUNKY BABY」はまたまたガラリと路線が変わり、
コミカルSFちんまりアニメというべきか。

ショッピングに精を出す女子コンビのファミとシアンは帰り道、暴走族に襲撃されて乱暴される。
やっと逃げ着いた先は、無法者異星人のたむろする集落で、
そこで狼宇宙人に拘束され、恥辱の攻めを受けさせられる二人。
果たして…?

とにかく驚きのキャラデザイン。四頭身ですからね。これでエロやろうってんですから、
実験作というか異色作。故にのちの総集編「シンフォニー 夢・物語」では唯一収録を見送られました。
キャラモチーフはさしずめロリ版ダーティペア?
作画的にわざとフザけてるような場面も見られ、
また露骨に低予算なんだなぁってトコも垣間見えて、
あんましエロに集中出来ないというのが正直な印象。
主役キャラの頭の悪さも気になるし。特にシアン。

 



ステージ4「シャイNING・めい」はリトルマーメイドシリーズの最終作となった一本。
新人アイドルのめいは今日もグラビア、プロモビデオ撮影へとお仕事。
しかし彼女の心は穏やかではありませんでした。
「芸能界は汚れた恐ろしい世界。私もいずれ芸能界の人たちに無残に汚されるのは間違いない!」
彼女の恐怖心は次第に抑えきれなくなっていきます。(じゃあなんで芸能界に入った?貧しかったから?)
「芸能界で汚される前に、私を抱いて!」
めいはボーイフレンドに懇願し、一晩中愛し合うのでした…。

…芸能界とは怖いところだったんですねぇ…。昔の自販機系劇画誌で
「新人アイドルくん、TVに出たかったらプロデューサー様とスポンサー様に処女を捧げろグフフのフ」な
下っ衆い漫画が山ほどありましたが、まさにそのまんまの内容。
まあ、「芸能界に入るなら親子の縁を切る!」なんてやりとりが昔は頻繁にあったくらい
芸能界に対する畏怖は戦前戦中世代には結構根強いものがありまして。
事実、今では考えられないほど、大昔の芸能・興行界は(以下、自主規制)
しかしこのアニメは1985年の作品。それでいてこの内容。このアンバランスさが味といいましょうか。
ヒロイン・めいのキャラは話によると、他の有名アダルトアニメの没設定を流用して作られたものだとか。
思わぬリサイクル。そんな経緯で生まれたせいで話が歪んでしまったのでしょうか(失礼)

 



リトルマーメイドシリーズは流通自体は好調で、売り上げも悪くは無かったものの評価は芳しくなく、
早々に撤退を表明。直後に各作品も廃盤になってしまいました。
その後バンダイビジュアル販売が販売権を取得し、CMOONレーベルで総集編「シンフォニー 夢・物語」として、
「シャイNING・めい」「テレパシストIQ315」「裸足の放課後」を三つまとめて再販売。
新作部分は当然ありません(イメージショットとして、夢・物語のパッケージ絵が画面に出てくる程度はありますが)
その後、様々な会社から題のみ変更した形で何度か再販売が行われているようですが、
いずれも夢・物語に収録された三作品のみで、「PUNKY FUNKY BABY」だけ廃盤状態が続いています。


オレンジビデオハウス編



スーパーアダルトアニメ 青い体験(1984.11.10発売 25分)
スーパーアダルトアニメ ザ・サディスファクション(1984.12.15発売 25分)
スーパーアダルトアニメ 堕天使たちの狂宴(1985.03.10発売 25分)
直子のトロピックエンジェル〜漂流〜(1985.05.10発売 25分)
ドリームハンター麗夢(1985.06.10発売 25分)
スーパーアダルトアニメ 青い体験2 聖女隊ロストバージン(1985.07.10発売 25分)



劇画からアニメキャラへ 不世出のヒロインを輩出しながらも消滅…
「ギニーピッグ」シリーズなどのスプラッター・ビデオで名を馳せたメーカー、オレンジビデオハウス。
同社がAAV市場に乗り出してきたのは1984年末。
最初の「雪の紅化粧/少女薔薇刑」が発売されて僅か9ヶ月後の参戦と、
かなりスピーディーに動いていた事が解ります。
その販売作も初期はワンダーキッズを見本にするかのごとく、官能劇画が中心。

第一作「青い体験」は羽中ルイが原作の官能劇画。
家庭教師の女子大生・美貴と受験生とのイケナイ関係が濃密にアニメで描写されます。
つい受験生の母親がメイクラブしてるのを覗いて欲情した美貴と受験生(解りやすいにゃあ)
で、受験生にセクハラされる美貴。ダメよダメよと言いつつも、次第にタガが外れて
美貴先生肉食化。トロンとした目の淫乱パワーで受験生を圧倒していき、
やがてメイクラブ。そこにコトを済ませたお母様がお茶菓子持って現れる…

なトコで終了。性交の模様を内部からの視点で描写するなど、アニメならではの表現にも積極的で
そういう意味では意欲作とも言えます。


第二作「ザ・サディスファクション」はあがた有為原作の官能劇画。
学園のマドンナである女子高生・麗子が魔物に凌辱される夢をみたのをきっかけに、
彼女の日常は狂っていく。暴漢に襲われ凌辱され、写真をネタに脅迫され、
次第に性奴隷へと調教されていく…。はたしてこれは夢か現実か…?
という内容。
原作の雰囲気を活かしつつアニメ的に翻訳されたあがた有為キャラは結構魅力的。

第三作「堕天使たちの狂宴」は昭和を代表するハードコア作家・ダーティー松本の、
今のところ唯一無二のアニメ化作品。暗黒街のボスに誘拐された美少女めぐみは、
監禁先で淫らな拷問を受ける母や妹の姿に愕然とし、狂気の炎に身を焦がしていく…
という
かなりブッちぎれた内容。発禁劇画を原作に選んだだけあって犯罪色が濃厚で、
そのテの免疫の無い人には衝撃的に映るかも知れませんが。

いずれも劇画ベースであり、それなりの評価を受けてはいたのですが、
くりいむレモンのヒットを受けて、やがてオレンジビデオハウスも路線変更に舵を切ります。

第四作「直子のトロピックエンジェル〜漂流〜」は作画をガラリと変え、ライトなタッチに。
本当かウソか解りませんが、この作品、現役女子高生・直子(17歳)が
原作・プロデューサーとして参加したというのがウリ。
「直子がサイパンに行ったときに浮かんだイマジネーションを基に描き上げた青春ファンタジー」
という事ですが…
内容は、帰国途中の兄妹の乗る旅客機が突然火を吹いて墜落、
無人島に漂着するところから物語が始まり、共に漂着した外国人少女ジェニーと、
3人の無人島生活がスタート。やがて若さ故のムラムラがはじまり、
気づけば3人は邪魔が入らないのをイイことに、ヤリ放題の乱交ライフに朝から晩まで励むという…

…青い珊瑚礁のエロパロ版というか何というか。
内容は異様にあっけらかんとしていて、とにかく脳天気なまでに明るい。
先の劇画3作品とは天地ほどの違いがありますな。反動でしょうか?

 


そして第五作「ドリームハンター麗夢」の登場とあいなるのです。
よろず怪奇事件引き受けを行う私立探偵、綾小路麗夢。
彼女の元に淫魔に憑かれた娘を助けてほしいという依頼が来る。
娘の夢に入り込み淫魔と戦う麗夢。しかし淫魔の卑怯な手にかかり、
麗夢は淫魔の手にかかり凌辱されてしまう。
しかし、それこそが麗夢の作戦だった。逆に麗夢の虜にされる淫魔。
現実世界に引きずり出された淫魔は退治され、麗夢は仕事を終えて去っていくのでした。

この作品はキャラデザイン・作動画・演出すべてグレードが高く、
それ故に多くのファンに支持された名作となりました。

 

「こういう作品があるという事をもっと他の人にも知ってもらいたい!」という
ファンのボルテージが高まった結果、Hシーンを差し替えた一般バージョンが
1985年12月5日に発売される事に。(スペシャルバージョン 惨夢、甦る死神博士)
以降「麗夢」シリーズはメジャーシーンへと活躍の場を移し、
OVA黎明期の人気作品として名を馳せる事になります。
もっとも、成人向から一般作に変わった事で、伏せられていたスタッフ名がバレてしまったのですが…ね。


そんなスターヒロイン・麗夢を輩出し、AAVでの役目は終わったと判断したのか、
続く第六作「青い体験2 聖女隊ロストバージン」がオレンジビデオハウス最後のAAVとなりました。
2とありますが、一作目の「青い体験」とは何の関係も無く、画風も別物。
内容は軽井沢にやってきたマイという女性が知り合った中年男性に惹かれて、
自分の初体験の相手に彼を選ぶ
というモノ。
なんか女子大生のチョメチョメ初体験レポートのノリだなぁと思ってたら実はこれ、
当時AVグループとして売り出していた「聖女隊」のメンバー、真衣の軽井沢での初体験を元にして
制作されたというアニメ。声優も真衣本人が担当しているんだとか。事実(?)をもとに作った再現アニメだったんですな。

 


この後、オレンジビデオハウスはAAVからは撤退。制作部門サイ・エンタープライズ共々、
親会社テレキャスジャパンの倒産に巻き込まれる形で1987年1月に連鎖倒産し、消滅してしまうのです…。




その他ビデオメーカー編


ワンダーキッズ&フェアリーダストが突破口を開いたアダルトアニメ市場。
二匹目のドジョウを狙うのは業界の常、とばかりに、
様々なメーカーがアダルトアニメ制作に名乗りを挙げ、
一年もしないうちにAAV市場は百花繚乱状態になります。
1984〜86にかけて成人向アニメを制作・販売したメーカーは判明しているだけで15。
多くは1〜3本制作して早々に撤退しているのですが、
有名無名問わず様々なメーカーがアダルトアニメに参加しているこの状況は、
まさに狂乱といっていい状態。ビデオ市場もAAV市場もまだ生まれたばかりの頃。
それ故のパワフルさがみなぎっていました。
だが人よ、名を問うなかれ。闇に生まれ闇に消える。それがAAVの宿命…?

ペロペロキャンデー(1985.05.10発売 25分 製作・富士アート)
受験生のタケシくんは欲求不満にもんどりうっていた。
彼を助けようと、愛犬モモエはご主人様の為に奮戦するのだった。
果たして結果は?


黎明期の独立メーカー系のAAVの珍品。とにかく奇妙かつ支離滅裂な内容と設定。
主人公の両親がお互い不倫の真っ最中に国際電話でテレセし合ったり
ヒロインのさゆりがあっけらかんと不法侵入した男相手に性交始めたりと、
展開がなぜ?の嵐です(比喩が1980年代)
このように、官能場面より全編フザけたようなエロギャグがスパークしていて、
ターゲットはどこ?とお尋ねしたくなる怪作。
ある意味黎明期だからこそ許された作品と言えます。
ちなみにこれ、声優テロップがラストに流れる珍しい作品で、
声優陣には今をときめく大御所の若き日の名前も。
(興味ある人は検索してみて)
発売元の富士アートはこの後、ガラリと路線を変えたアダルトアニメ
「ラブリーシリーズ宇宙元年」「ラブリーシリーズ創世記」を発表。
人類創世をSFとポルノに混ぜて現した、なんとも解説に困る作品を世に送ります。
結局この三本を発表し、富士アートは事業撤退。


ミルキィギャル1 キャッツ・愛(1985.06.21発売 30分 製作・富士ビデオ)
アコ・ヒロミ・キョウコは通称「ミルキィギャル」。
下校途中に3人は夜12時までに「誰が一番カッコイイ男の子と付き合えるか」を競う
シンデレラゲームをしようということになり、
三人は街へくりだす。果たして結果は?


タイトルからしてなんだかなぁ、なノリですが、中身もたいがいなもの。
アコはカメラマンをひっかけてそのままイキオイで結ばれ、
ヒロミは街で偶然ぶつかったアイドル歌手とニャンニャン(昭和の死語)
キョウコは昔馴染みのクラスメイトにバックからイカれます。
じゃあ、誰がシンデレラゲームの勝者?と思ってたら、
実は全部3人の妄想だったというオチ。なんじゃこりゃ。
「五月みどりのかまきり夫人の告白(1975・東映)」かッ!
タイトルに通しナンバー付いてるからシリーズ化の予定があったんでしょうが、
結果は当然の如くこの一本のみ。富士ビデオもこの一本でAAVから撤退しました。
ちなみにヒロイン達のモデルは当時の人気アイドルから。髪形みれば一目瞭然。

ロリコンエンジェル蜜の味(1985.01.10発売 25分 製作・JHV)
アイコ・奈美・ユカは仲良し三人組。ある日ユカの財布が消え、
盗まれたと大騒動。財布盗難の犯人とおぼしき人物に3人はそれぞれ探りを入れていくのですが、
結果そこで三人は思いもよらぬ体験をさせられる事に…


アダルトビデオではアリスJAPANでも知られるレーベルで
確固たる地位を築いていたジャパン・ホームビデオ。
1985〜1986はアダルトアニメにも力を入れており、その記念すべき?第一作目がコレ。
この後も永井豪原作の珍品「超能力少女バラバンバ」
まんが日本昔ばなしのエロパロ「艶笑日本昔ばなし」といった、
独特すぎるAAVを連発。一般作でもあのイカれた迷作
「活劇少女探偵団」もリリースしてしまっております。
で、これもその例に洩れず、あまりにも荒唐無稽かつムチャクチャな内容。
プッツンという言葉が当時流行してましたが、まさに本作品を言い表すと「プッツン」の一言。
ストーリーのきっかけである財布が盗難云々はどーでもよく、
3人がそれぞれ化学教師・クラスメイト・変態用務員とナニがナニして何とやら、な
展開に行くのがメインなのですから(財布盗難は実はユカの勘違いという腰砕けオチ)
変態用務員の性技・メリーゴーランドは数多あるAAVの中でも
最狂技の一つとして好事家に知られております(現実で出来る奴は多分…いないよね?)
官能作としてよりぶっとびギャグとしてみる分にはいいかも。

 


魔法のルージュりっぷ☆すてぃっく(1985.07.10発売 25分 製作・白夜書房)
ユマはおませな女の子。となりに住むお兄ちゃんに恋心を抱きますが、
当のお兄ちゃんは全然気づかない。そんな折、宇宙から飛来したブタのセールスマンに、
ユマは大人になる魔法のルージュを貰います。
美女に変身したユマは憧れのお兄ちゃんに大接近。
それを許さじと恋敵のまなみは戦車や戦闘機で妨害を始める。
恋の行方の結末は?


同人界では有名なスタジオアウォークが実力派のプロスタッフを雇い入れて制作したアダルトアニメ。
森野うさぎ氏がキャラクターデザインを担当し、
美少女コミック雑誌「ホットミルク」「パンプキン」などを発行していた
白夜書房が本格的にAAVに参戦した第一作目でもあります。
が、結局はこの一本限り。官能シーン以上にメカバトルの作画に異様に力が入っていて、
パワードスーツ対重戦車とのバトルシーンなどは「今見ているのは何のアニメなのだ?」と、
自分を見失うほど。実力派スタッフが手掛けただけあって、全体のグレードは高いです。

 

スケ番商会キューティレモン
(第一章ヴァージンロード・1984.12.22発売 30分 製作・ファイブスター)
(第二章グラデュエイション・1985.04.17発売 30分 製作・ファイブスター)
(第三章ラストセレナーデ・1985.08.25発売 30分 製作・ファイブスター)
(第一章)正義のスケ番・れもんグループのリーダー、レモンは、「メンバーは男と付き合ってはならない」との
禁を破って、転校生のアキラに一目惚れしたためグループを追放されてしまう。
それを知った対抗グループ・ブラックエンジェルは「レモンを倒す絶好の機会」として、
アキラを人質にレモンを呼び出す。果たして?
(第二章)レモンは幼馴染の裕之とデート。その間にれもんグループの面々は血桜組のチンピラどもと喧嘩になり、
あげく集団強姦されてしまった。レモンが助けに行くが多勢に無勢でレモンも…。
しかしその後、レモンたちは監禁場所から裕之の手助けで脱出する。
実は裕之は血桜組の組員だったのだ。事がバレ、裕之は組のオトシマエを要求される。
怒り爆発のレモンが反撃を開始する!
(第三章)いい加減スケ番を辞めさせたい、と、レモンの両親はレモンを妹・メロンのいる
名門校に無理矢理転校させる。しかしそこでスケ番グループ・スミレ会のエミに目をつけられ、
それがきっかけで大事件が発生!怒ったレモンとれもんグループは殴り込みをかけ大暴れ。
その結果、学園にいられなくなったレモンは、アメリカへ旅立つのだった…。


キューティー、ではなく「キューティレモン」。
あきらかにくりいむレモンの題を意識したかのようなタイトルではありますが、
内容は全く別物。3部作になってはいますが一応個々は独立した構成。
大半の連作を目指したAAVが未完もしくは尻切れトンボで終わっている中にあって、
きっちり完結させたという点では貴重な作品。部分部分の作画が良い事もあって、
初版絶版から3年後の1988年に、廉価版セルビデオが笠倉出版社から再リリースされています。

 

フルーツバージョン
(お姉ちゃんとわたし・1985.11.21発売 25分 製作・SHOWA)
(お兄ちゃんとわたし・1986年発売(詳細不明) 25分 製作・SHOWA)
(前篇)マキはどこにでもいる平凡な女子高生。
しかしある日電車で痴漢にあったせいで、性に目覚めてしまった。
従姉妹のナミに性の悩みを相談したマキ。
すると、ナミは突然襲いかかり、マキの性調教を始めてしまう。
(後篇)マキの痴態を覗き見ていた兄。
兄は次第に妹マキへのムラムラが止まらなくなってしまう。
マキに性交を求める兄、それを受け入れるマキ。しかしナミはマキを盗られたと嫉妬し、
ある作戦を実行に移すのだが…?


発売元のSHOWAは「ジャガーマン・豹マン」「シルバージャガーの誕生」といった
特撮の没企画パイロットフィルムをわざわざビデオソフト化して販売してた
誰得?な商品で知られるメーカーですが(失礼)、そんなSHOWAもAAVに鼻息荒く参加。
ストーリーはいたってオーソドックスなモノなのですが、
ハードな性描写、時折見せる濃密な作画がウケて人気を呼びました。ちなみにこの作品、
作画監督を務めたスタッフによれば、前篇だけで製作期間に一年費やしたそうです
(他の仕事の合間をぬいながら、の結果みたいですが)
しかしその過激な性描写を憂慮してかビデ倫の審査を通さず、無修正のまま発売したからさあ大変。
怒ったビデ倫の圧力を受けて、発売直後に絶版処分を食らってしまいました。
おそらく数多あるAAVの中で、絶版処分を受けた最初の作品で、
ある意味名誉(?)の勲章かも。そんなトラブルがあったこともあり、
後篇は発売の見通しがなかなか立たず、ようやく発売されたものの、
ビデ倫の審査基準に合わせた比較的大人しい内容になりました(ちゃんと修正してるし)
前篇が1年費やしたのに対し、後篇の製作期間は2ヶ月とのこと。この差は一体?

 





参考資料
美少女アニメ大全集(平成3年1月20日発行・辰巳出版)
アニメV(学習研究社)
月刊グロービアン(ヒロメディア)
ほか

資料提供・つくだやま氏


私はどこへ行こうとしているのだろう…という不安が頭をもたげた記憶87回目。
多分、2回目はやりません。
ちなみに今回紹介した作品は一部を除き、一通り視聴経験あり。無論レンタル。
大昔に「よっしゃ、いっちょ一通り観てみるか」と一念発起した時期があり
地元のレンタル屋をくまなく回って、あらかたの作品は観たんですが、
正直、半分は愚にもつかない出来で、作画も動画もヒドイもの。
部分的に無駄に作画が緻密だったり(主にメカや化物)、意味無くフルアニメのような動きをしてたり、
なんか作ってる側にただのマニアが混じって好きな事してる、みたいな
学生映画のような素人臭さも感じられて、そんなカオスのごとき映像が
ヘッドホン繋げたテレビからにじみ出ておりました。

昔話をすると、当時はレンタルビデオでも、
アダルトアニメは普通のアニメの棚に置かれる事が多く、
ナウシカのビデオの隣にうろつき童子がフツーに置かれておりまして。
ビデオテープにはビデ倫謹製の「成人向」金色シールが貼られてたんですが、
「漫画映画ならべつにいいだろ」という感じで、店員も寛容(?)に対応。
高校生でも普通に借りて見る事が出来ました。
ゾーニングだの有害指定だの「なにそれ?美味しいの?」な1980年代の風景。

一気に規制が厳しくなったのは1985年以降。アダルトアニメの数が増えた事が起因なんでしょうが、
それまで普通にビデ倫の審査を通過してたようなものが一気に通らなくなり、
絶版に追い込まれる作品まで出現。また、製作費が最低でも500万以上というコスパの悪さ、
30分未満で約1万円という価格の高さ(通常AVは当時60分9800〜12800円が基本)などが
ネックになり、セールスは伸び悩み、アダルトアニメビデオ市場が開拓されて3年もしないうちに
多くのメーカーや制作プロが倒産。狂乱の時代は終息に向かいました。

結局残ったのはアダルトアニメの旗手となったフェアリーダスト・創映新社の「くりいむレモン」シリーズ、
壮絶なストーリーと劇映画をもしのぐ完成度で記録的ヒットとなったJAVN・ボイジャーの「うろつき童子」シリーズ、
堅実な作りと緻密な作画で多くのファンを獲得した「リヨン伝説フレア」を始めとする宇宙企画・フレンズの
アダルトアニメシリーズといった感じ。ただこれらも、現在はシリーズとして連綿と続いてはおらず、
時折思い出されたかのように再販版やニュージェネレーション的な新作が出る程度。
無論その後もPCゲームのスピンオフ系や、新興の制作プロによる精力的なアダルトアニメが出現しており、
昭和に誕生したアダルトビデオアニメ市場はいまなお盛況の場にありますが、
老舗が開拓したこのアダルトアニメという土壌の荒野は、今後どのようになっていくのでしょうか?
さらなる飛躍をするのか、それとも…?




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