ポールのミラクル大作戦
1976年10月3日〜1977年9月11日 全50話
フジテレビ系放映・製作 タツノコプロ
タツノコメルヘンヒーローの世界
あらすじはこんな感じ。
とある国のとある街に住む少年・ポールはどこにでもいる活発な男の子。 10歳の誕生日を迎えたポールは父親から不思議な縫いぐるみを贈られます。 ポールはその縫いぐるみに「パックン」と名前をつけ可愛がることにしました。 その夜、空より妖精が舞い降り、縫いぐるみのパックンに生命が宿ります。 動き喋りだすパックンに最初は驚くポールでしたが、 やがてその不思議な力に大喜び。ガールフレンドのニーナ、ペットの犬のドッペと共に、 パックンの持つ不思議世界への扉を開く力を持つオカルトハンマーによって、 ポールたちは不思議世界への冒険を開始します。 だが、その不思議世界には2千年前に封印された大魔王ベルトサタンが 復活を目論み潜んでいたことをポールたちは知りませんでした。 彼は人間の少女を手に入れることで封印が解け、魔力が復活するのです。 捕らえられるニーナ!驚愕するポールたち! ニーナを取り返そうとするポールでしたが、パックンのチョーカーのタイマーが点滅し始めました。 現実世界の人間が不思議世界にいるためにはパックンの超能力エネルギーが必要なのですが その限界が来てしまったのです。断腸の思いで現実世界に帰還するポールたち。 現実世界ではニーナが行方不明になったことでニーナの両親がポール宅に激怒して押しかけてきました。 ポールは不思議世界の事を伝えますが、大人は一切信用してくれません。 「娘がいなくなったのは貴様のせいだ!」 ニーナの父・ジェニアールはポールを罵倒し叱責します。 悲しみの中、ポールは再び不思議世界に赴いて、ニーナの救出を決意するのです。 だが、不思議世界は広く果てしない。大魔王ベルトサタンが どこの不思議世界にいるのかすら解りません。 それでも僅かな手がかりを求めて、ポールは気の遠くなるような探索の旅を始めるのでした… |
誰も知らない…メルヘンワールドでの死闘
以上が基本ストーリー。
妖精の織り成す異次元世界が多層的に存在し、
それらを旅して巡るというメルヘン的な要素と、奪われた少女を取り返すべく繰り広げられる
大魔王ベルトサタンとの戦い、というヒロイックファンタジー的側面とが融合し、
それまでの日本アニメにはあまり無かった特異な作品世界を生み出すことに成功しています。
ここで描かれるパックンが連れ出す不思議世界というのは、
不思議の国のアリスに描かれる様な、特定の世界観で染められた異次元というべきでしょうか。
特徴として、絵本のようなその世界は夢見る気持ちを持った子供だけしか入ることが出来ません。
故に夢を失い現実にのみ奔走する大人は一切入ることも見ることも出来ず。
一度だけトッカメール警部が不思議世界に入ったものの、
「わしは夢を見ている」「こんなものはまやかしだ」と、最後の最後まで不思議世界を夢だと断定し、
現実に戻ってしまいました。あくまでも不思議世界は子供と不思議世界の住人だけのもの。
現実が一切介入することの出来ない別次元の話なのです。
とはいえタツノコ独自のリアリティもしっかり健在。メルヘン・ファンタジィの世界でありながらも
ニーナが不思議世界で行方不明になったことで現実世界では両親が大わらわ。
ニーナの両親がポールに行方不明の原因の嫌疑をかけ、
いたたまれなくなったポールが飛び出してしまうという展開を見るに、
あいたたたた、な想いが心をえぐります。
不思議世界の説明をしようにもそんな突拍子も無い話を大人が信じるわけも無く、
ポールは虚言癖の少年たるレッテルまで貼られ、ニーナの父親に怨まれる始末。
現実世界では誰も信じない。故に空虚な孤独感のみが増大されていくポール。
その事を知っているのは犬のドッペのみですが、
現実世界ではドッペは普通の犬。喋ることは出来ません。
…打開策はただひとつ。不思議世界のどこかにいるベルトサタンを見つけて
ニーナを奪い返すこと。その当て所の無い冒険に、パックンのオカルトハンマーの力を借りて、
今日も時間制限の中、ベルトサタンの引き起こす怪異現象と戦いながらニーナを探し続けるのです…。
これって、メルヘンアニメといいながらしっかりタツノコハードヒーローの定石を踏襲してますね。
かつて「タツノコヒーローベスト8」というレコードにガッチャマンやキャシャーンと一緒にポールの曲も
収録されてて「なぜ?」の嵐が脳裏を駆け巡ってましたが、今思うにこのチョイスは納得できます。
孤独に耐え世間の無理解に耐え、
ただ愛しい人を救い出すために巨大な悪魔に戦いを挑み続ける少年…。
ヒーローですよこれは立派な。
大魔王ベルトサタン戦後の第二ラウンド開始
ニーナを取り戻すために不思議世界を巡るポールの旅は16話まで続きます。
主題歌に「僕のニーナを救い出すまで二人で仲良く帰る日まで」とあったように、
当初はニーナの救出がクライマックスと考えられていたようです。
が、視聴率が好調で25%台を放送1ヶ月で記録するなどあったせいか、
ストーリーはニーナ救出劇からベルトサタン討伐劇へと
シフトチャンジすることになります。
第17話、幽閉されていたニーナは監視役のキノコの魔物キノッピーを騙して
外に脱出することに成功。ポールと合流に成功し、
ここにようやくポールはニーナ救出(ニーナ自力脱出だけど)に成功。
ニーナを奪われ、襲い来るベルトサタンも、オカルトハンマーで強化されたヨーヨーで
左角を折られてしまい、動くことが出来なくなってしまいました。
これで一件落着…とはいかず。大魔王によって不思議世界はカオスに歪んだまま。
元はといえば今の不思議世界の大混乱は自分達がきっかけで復活したベルトサタンの影響。
ベルトサタンを撲滅しない限り不思議世界の平和は戻らないと知ったポールたちは
その贖罪の意味もこめて、ニーナを新たに加えて
ベルトサタンの魔力の影響で生まれた悪魔や歪みと戦い続けていきます。
大魔王ベルトサタンは左角が回復し魔力が復活するまで、
代理人たるキノコの子悪魔・キノッピーに命じ、
自らの変わりに悪事を各世界で遂行させていきます。
このキノッピーが(憎たらしい幼児性加虐者)としての描写がふんだんにされており、
またデザインが可愛らしいというのがミソ。
可愛いキャラが残酷な悪事をすることでより恐怖と憎さが増す、というのは、
タツノコアニメのキャラ演出の一つで、キャシャーンやテッカマンでも使用されてきた手法ですが、
ポールもきっちり踏襲。
大団円ながらも悲しい最終回
ニーナ救出後は前述のようにどこかに潜んでいる
ベルトサタンを倒すこと&大魔王の影響で狂いだした不思議世界の異変に対処することが
ストーリーの中心になっていきます。
ベルトサタンは基本動けないので不死身の洞窟に身を潜め、キノッピーに指令を与えるだけ、という
ショッカーの鷲のマークみたいな状態が続くようになり、
復活を遂げる第50話までその状況は続きます。
ポール一行はニーナを新たに加えて不思議世界を旅するのですが、
時折「こんなひどい世界になったのも、お前達がベルトサタンを蘇らせたからだ!」と、
不思議世界の民に批難されることも。ああ、こういうのもタツノコヒーローの王道だなぁ。
そんな一年にわたるポールたちとベルトサタンの決着はというと、
第50話 さようなら!不思議な世界 ポールに角を折られたベルトサタンは、不死身の洞窟の中で再生を計っていました。
そしてついに角も再生し、魔力の完全復活まであと一息。
それまでベルトサタンに替わって任務を遂行していたキノッピーは喜びますが、
ベルトサタンは自分が復活するとみると、用済みのキノッピーを抹殺にかかります。
あわてふためき、逃げるキノッピーをサタンは攻撃。
負傷し川に落ち流されるキノッピー。それをポール一行が救います。
キノッピーはベルトサタンの非情さに落胆し、ポールに改心を告げるのです。
やがて完全復活したベルトサタンは猛烈な攻撃を
ポールや不思議世界にしかけます。必死に応戦するポールたち。
だが、パックンのオカルトハンマーの力が尽きようとしています。
そこにベルトサタン自らが登場!
圧倒的な力で攻撃を弾き返す猛烈な嵐を巻き起こします。
絶体絶命のポールはパックンにオカルトハンマーの力を使うように告げます。
しかし、もうオカルトハンマーに力は殆ど無い。いまハンマーを使えば、
もとの世界に帰る事が出来なくなるかも知れない。
それでもいい!この世界を救うことが出来るのなら!
ポールやニーナはヨーヨーにペンダント、ドッペは首輪を出し、
オカルトハンマーで巨大化され、一斉にベルトサタンにぶつけました。
その攻撃でベルトサタンは両方の角を切られ、
断末魔を残してベルトサタンは消滅。
ついに不思議世界に平和が戻ったのです。
だが、ベルトサタンの嵐によってキノッピーは瀕死の重症を負ってしまい、
ポールの見守る中でキノッピーは死亡。
魔力が消えたのか、小さなキノコに戻ってしまいました。
そして、残された最後の力でもとの世界に帰る扉を開いたパックン。
と同時に、パックンの縫いぐるみから妖精が飛び出し、
ポールたちに別れを告げて去っていきます。
元の世界に戻ったポールたち。もうパックンは普通の縫いぐるみだし、
ドッペも言葉を喋れません。この不思議な世界の事を知っているのは
ポールとニーナの二人だけ。誰も信じてくれそうもありませんが、
二人だけの大切な思い出としていつまでも心に残ることでしょう…
ポールのミラクル大作戦 スタッフ
製作/吉田竜夫
企画/鳥海尽三・柳川 茂
原作/タツノコプロ企画室
プロデューサー/九里一平・柴田 勝・永井正嗣
チーフディレクター/笹川ひろし
キャラクターデザイン/下元明子
作画監督/野部駿夫(前期)福山政敏(後期)
美術監督/中村光毅
製作協力/アドコスモ・トップクラフト
音楽/菊池俊輔
OP/ポールの冒険(作詞・若林一郎/作曲・菊池俊輔/唄・大杉久美子&コロムビアゆりかご会)
ED/オカルトハンマーのうた(作詞・若林一郎/作曲・菊池俊輔/唄・大杉久美子&コロムビアゆりかご会)
ポールのミラクル大作戦 放映リスト
放送No | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 演出 |
1 | 1976.10.3 | よみがえったベルト・サタン | 鳥海尽三 | 笹川ひろし |
2 | 1976.10.10 | 恐怖のクモの巣城 | 毛利元 | 上梨満雄 |
3 | 1976.10.17 | ウツボカズラの追撃 | 滝三朗 | 笹川ひろし 西久保瑞穂 |
4 | 1976.10.24 | 岩石巨人の秘密 | 久保田圭司 | 小笠原秀樹 矢沢規夫 |
5 | 1976.10.31 | ガイコツの逆襲 | 鈴木良武 | 上梨満雄 |
6 | 1976.11.7 | 雷電魔人の対決 | 毛利元 | 笹川ひろし 佐々木皓一 |
7 | 1976.11.14 | 恐怖のローラー巨人 | 佐藤道雄 | 小笠原秀樹 矢沢規夫 |
8 | 1976.11.21 | サボテン国に花よ咲け | 山本優 | 西久保瑞穂 |
9 | 1976.11.28 | 悪党鳥人を倒せ | 三宅直子 | 上梨満雄 |
10 | 1976.12.5 | めざめよ! 青銅の騎士 | 高山由紀子 | 西久保瑞穂 |
11 | 1976.12.12 | 思い出のニーナの花 | 鈴木良武 | 佐々木皓一 |
12 | 1976.12.19 | ドア城の少年 | 山本優 | 上梨満雄 |
13 | 1976.12.26 | 夜の怪物アクナイター | 鳥海尽三 毛利元 | 西久保瑞穂 |
14 | 1977.1.2 | 燃えろ炎! もう一度 | 山本優 | 上梨満雄 |
15 | 1977.1.9 | 巨人の国にアタック | 佐藤道雄 | 小笠原秀樹 矢沢規夫 |
16 | 1977.1.16 | おりがみ国の決戦 | 鳥海尽三 毛利元 | 西牧秀雄 |
17 | 1977.1.23 | ベルト・サタンの角を狙え | 鳥海尽三 毛利元 | 佐々木皓一 |
18 | 1977.1.30 | スペード魔女の涙 | 山本優 | 笹川ひろし 植田秀仁 |
19 | 1977.2.6 | 時を忘れた時計国 | 三宅直子 | 上梨満雄 |
20 | 1977.2.13 | 悲しみの花火城 | 陶山智 | 小笠原秀樹 矢沢規夫 |
21 | 1977.2.20 | 巨大レンズの怒り | 山本優 | 西牧秀雄 |
22 | 1977.2.27 | メカタウンの最後 | 毛利元 | 西久保瑞穂 |
23 | 1977.3.6 | アベコベ大騒動 | 毛利元 | 小笠原秀樹 矢沢規夫 |
24 | 1977.3.13 | ユラユラ影よ立ちあがれ | 山本優 | 上梨満雄 |
25 | 1977.3.20 | 絵本に描け! 自由の街 | 山本優 | 西牧秀雄 |
26 | 1977.3.27 | トッカメール刑事の冒険 | 毛利元 | 小笠原秀樹 矢沢規夫 |
27 | 1977.4.3 | 聖母マリアの涙 | 山本優 | 植田秀仁 |
28 | 1977.4.10 | 音符人間よ平和をよべ | 加賀美しげ子 | 西久保瑞穂 |
29 | 1978.4.17 | よみがえれ! 良心の灯 | 三宅直子 | 鳥海永行 矢沢規夫 |
30 | 1977.4.24 | 未来を盗まれた国 | 山本優 | 西牧秀雄 |
31 | 1977.5.1 | 太陽を失った野菜人 | 海老沼三郎 | 上梨満雄 |
32 | 1977.5.8 | 魔の細菌世界 | 陶山智 | 鳥海永行 矢沢規夫 |
33 | 1977.5.15 | 七つの色をとりもどせ | 毛利元 | 植田秀仁 |
34 | 1977.5.22 | パックン故郷へ帰る | 山本優 | 西牧秀雄 |
35 | 1977.5.29 | 陶器人の変身 | 加賀美しげ子 | 小笠原秀樹 矢沢規夫 |
36 | 1977.6.5 | ミニミニ国よ手をつなげ(前編) | 山本優 | 上梨満雄 |
37 | 1977.6.12 | ミニミニ国よ手をつなげ(後編) | 山本優 | 上梨満雄 |
38 | 1977.6.19 | オモチャが作った愛の橋 | 山本優 | 植田秀仁 |
39 | 1977.6.26 | ふしぎな数字人間 | 吉川惣司 | 福島和美 |
40 | 1977.7.3 | 海の中の冒険野郎 | 三宅直子 | 西久保瑞穂 |
41 | 1977.7.10 | 希望と勇気のなる木 | 吉川惣司 | 上梨満雄 |
42 | 1977.7.17 | 立ちあがれ! アニマルナイツ | 毛利元 | 矢沢規夫 |
43 | 1977.7.24 | シャボン玉よいつまでも | 佐藤和男 | 布川ゆうじ |
44 | 1977.7.31 | トーテムポールの怒り | 三宅直子 | 西久保瑞穂 |
45 | 1977.8.7 | 花の妹リッピー | 山本優 | 矢沢規夫 |
46 | 1977.8.14 | ベルトサタンの復活 | 毛利元 | 植田秀仁 |
47 | 1977.8.21 | お菓子の国のカーニバル(前編) | 山田ひろし | 島田政子 |
48 | 1977.8.28 | お菓子の国のカーニバル(後編) | 島田政子 | 植田秀仁 |
49 | 1977.9.4 | 追いつめろ! ベルトサタン | 山本優 | 布川ゆうじ |
50 | 1977.9.11 | さようなら! 不思議な世界 | 山本優 | 上梨満雄 矢沢規夫 |
実に17ヶ月ぶりの更新になりました。
昔と違っていまは相当マイナーな作品でもソフト化されたりCS放送されるようになったので、
そういう意味では有難い時代になりましたね。
次回はどうしますか全く未定ですが、
何か面白いテーマがあればという事で。