看板

2023年最後の更新となりました。
今回は前からやりたかった特集だったのですが、本来5本立だったのを時間がかかり過ぎる、という理由で
3本立に変更。第二回があればまた削除分加えてやれればなと考えてますが。

スペシャルアニメ特集

1977年夏、宇宙戦艦ヤマト劇場公開が起爆剤となって始まったアニメ・ブーム。
それに呼応するようにTVアニメの視聴率も軒並み上昇傾向で、
再放送のルパン三世・あしたのジョー・エースをねらえ!・ど根性ガエルといった旧作まで、
夕方にも関わらず20〜30%もの視聴率を獲得。アニメ専門雑誌が次々創刊し、
局やスポンサーが「アニメは稼げる」と躍起になってた、ある意味狂乱の時代。
そんな折、1978年に放送が開始された日本テレビのチャリティ番組
「24時間テレビ 愛は地球を救う」内で放送された本邦初のTVスペシャル長編アニメ
100万年地球の旅 バンダーブック(手塚プロ)」が、同番組内での瞬間最高視聴率の28%を獲得。
大成功を収めます。これで一気に火が付いて、我も我もと飛びついて生み出されたのがテレビスペシャルアニメの数々。
今回はそんな作品群の中から、24時間テレビスペシャルや日生ファミリースペシャル以外の
3本をチョイスしてみました。

大恐竜時代

(1979年10月7日・日本テレビ系放映・放映枠84分/製作・東映動画)

日本テレビが自信を持ってお送りするスーパー・スペシャルアニメ


あらすじはこんな感じ。

生物の声を聞くことの出来る超能力・エムパシー(共感能力)を持つ少年、
ジュンは詩が好きでナイーブな子。
ある日、謎の声に誘われてとある海辺にたどり着く。
そこには同じエムパシーをもった少女レミと弟のチョビも居た。
やがて海岸に巨大なUFOが出現。UFOは三人を連れ去り彼らに語る。
「ある空間・時代へ案内しよう。人間がこれから何をなすべきか学んで貰いたい」
そしてジュンたちが見たもの…それは地球46億年の歴史だった。

地球の誕生・生命の誕生・そして太古の大恐竜時代、人類誕生の瞬間…。
そんな最中、凶暴なティラノサウルスが時の流れを超えて出現し、
クロマニオン人の時代に時空移動。
クロマニオン人の神として君臨してしまう。


やがて人々は立ち上がり、勇気と知恵と愛を結集し、ついにティラノサウルスを倒す。
驚愕のジュンたちにUFOは諭す。
「人類が、巨大になりすぎた恐竜と同じ運命をたどらぬように…」
そう言い残し、巨大UFOは去っていくのでした。

原作・脚本・監督・構成・絵コンテ・ジュンの父の声 石森章太郎
テーマは「知恵」と「愛」。
恐竜が滅んでゆく姿を描くことによって、人類が生きのびてゆくためには、
知恵と愛が必要なのだと問いたい。でも、テーマはテーマとして、
一発勝負のスペシャル物ですから、見せる為には相応のことを考えています。
自分としても相当に力を入れて絵コンテを描いたし、
どうせやるなら自分の思っていることすべてをぶち込んでみたかった。
恐竜が出てくるといっても冒険ものではなく、ファンタジー作品だと思っている。
そのため、主人公にジュンを持ってきたわけです。
注文としてはとにかく自然描写に力を入れてほしいと言っています。
とにかく見てください。その自信もあります。

月刊アニメージュ1979年9月号37頁記事より抜粋・一部文章再構成

プロデューサー 栗山富郎
恐竜というのは、身体だけはいたずらに大きくなったが、頭脳的には小さいままだった。
人間もそれと同じようなものじゃないですか。この文明社会の中で人間は各自のエゴをまる出しにし、
兵器ばかり大きくしてる。人間の目から見れば恐竜も兵器も同じものでしょう。(中略)
そんなわけで、現代社会の実写フィルムも前半に入れることにしました。

この間、夢の島とか高速道路にロケへ行ってきましたが、
そのフィルムを使用して、技術的に新しい試みをしようと考えています。
ブルドーザーを撮影したとしますね。
そのカメラアングルと同アングルでイメージを恐竜におきかえていくといったように…。
実写とアニメをオーバーラップさせるということは今までやっていないので、注意して見てください。


美術監督・作画 原田益次
地球が生まれてからほぼ現代までの長い時間の流れをこの一時間半の作品の中で表現していくわけですが、
どんな時代だったのかぼくは生まれていなかったのでまったくわからない。
百科事典でも詳しい色合いは出ていません。ただ太古は太陽や火山の活動も激しかったでしょうから、
そのへんも考慮に入れて、昼でも空はピンクがかった紫っぽい色で表現し、
恐竜はまず不気味な感じを出して重っくるしいムードを狙い、全体に暗い色をもってくる。
人類が現れると、現代に近い青っぽい空をと考えています。
短い時間で30数億年もの時代の移り変わりを見せなくてはならないので、神経を使いますよ。
恐竜の時代では、植物の形も大きさも違うので、区別が難しい。それだけ見ごたえがあるのかもしれませんが。

月刊アニメージュ1979年10月号32〜33頁記事より抜粋・一部文章再構成



同局の24時間テレビにて放送された本邦初のTVSPアニメ「100万年地球の旅バンダーブック」
番組内最高視聴率28%を獲得した事により、翌年以降日本テレビはSPアニメを次々と世に放ちます。
本作は「バンダーブック」「あしたの勇者たち(国際児童年記念の東映動画製作SPアニメ。)
マリンエクスプレス」に続くNTV発SPアニメ第四弾として制作され、前三作以上に気合いの入った作りになりました。
SPアニメでは初になるステレオ放送を実現し、撮影は映画と同じ35mmフィルムを使用。
「恐竜の生態をこの上なくリアルに描きたい」という石ノ森先生の熱望を受ける形で、
自然や恐竜の描写には細心の注意がはらわれたのだとか。
冒頭、土木作業の重機と恐竜をカットバックで見せるシーンなど、文明批判を全面に押し出した作りになっており、
「人類が巨大になりすぎた恐竜と同じ運命をたどるかもしれない」という警告で終わるラストまでそれは徹底しています。
冒頭、土木工事の作業員にからかわれるナーバスな少年のジュンは石ノ森漫画の人気キャラで、
声を「ケンちゃんシリーズ」で知られる宮脇康之がアテているというのも話題になりました。

日本テレビではこの作品以降も24時間テレビSPアニメ以外にも
「キャプテン(1980.4・エイケン)」
「海底大戦争愛の20000マイル(1981.1・タツノコプロ)」
「ミスタージャイアンツ栄光の背番号3(1981.4・東宝映像・じんプロ)」
「どんべえ物語(1981.4・エイケン)」

立て続けにSPアニメを放送していきます。
ヤマトフィーバー華やかなりしこの頃、SPアニメが視聴率を稼ぐと言う事で、
各局とも凄い数のSPアニメ放送してましたからね。しかし、やがてSPアニメ狂乱の時代は収束。
日本テレビも年一本の24時間テレビ用のみとなっていきます。


大恐竜時代・スタッフ
原作・脚本・監督・構成・絵コンテ/石森章太郎
プロデューサー/吉川斌(日本テレビ)・栗山富郎(東映)
脚本/内藤 誠
演出/森下孝三
演出助手/高山秀樹・川島利子
作画監督/飯野 皓
美術監督/原田益次
絵コンテ/小華和ためお・原田益次・岡迫和之 他
音楽/SHOGUN
ED/愛ある世界
(作詞・ケーシー・ランキン/作曲・杉山政美/編曲・大谷和夫/歌・ケーシー・ランキン)
コロムビア・レコード

キャスト

ジュン(宮脇康之)
レミ(堀江美都子)
チョビ(つかせのりこ)
UFO(近藤洋介)
呪術師(永井一郎)
作業員(佐藤正治)
友人(龍田直樹・鈴木清信・川島千代子)
ジュンの父(石森章太郎)
ジュンの母(小林由利)
ほか


視聴率 14.4%


マリンスノーの伝説

(1980年8月12日放映・テレビ朝日系放映・放映枠81分/製作・NOW企画)

松本零士ブームの只中放送された海洋冒険ロマン
本作品はテレビ朝日がSPアニメに進出した初の作品で、
それまで芸能番組を多数手がけてきたNOW企画がアニメを手掛けた第一号作品でもあります。
アニメブームの起爆作品「宇宙戦艦ヤマト」の松本零士を原作・監督に迎え
ヤマト第一シリーズのスタッフを迎えて制作した渾身の一作。
あらすじはこんな感じ。

人口増加に悩む地球では、対策として海洋都市計画が立案され、海洋都市の建設が進行していた。


沖博士やナミと共に海洋都市建設に携わっていた海野広はある日、
埋立工事現場の爆発事故に巻き込まれてしまう。


事件直後、ナミは現場から姿を消してしまう。ただ「雪の降る故郷へ帰ります」と広に告げて。
しかしナミは鹿児島・指宿の出身と言っていたはず。
雪の降る故郷?どういう意味だ?


やがて当局は爆発事故の容疑者としてナミを捜査しはじめる。
広もナミの真意をさぐるため指宿へと向かう。
そんな折、海洋科学局には海の民の女王イザナミと名乗るものから宣戦布告が告げられる。
地上人による傍若無人な海洋開発を止めさせるための実力行使に出たのだ。


海洋都市計画のスポンサーでもある企業家ドクトル・ゼルバードは
「人口の過密問題を解決する為には大規模海洋都市の建設計画は不可欠だ!
邪魔するものは徹底的に排除する!」と海の民との全面戦争を指示。
互いの生息圏を賭けた血みどろの闘争が開始された。


海底都市でナミに再会する広。しかしそこで驚愕の事実に出くわす。ナミの正体は海の民で女王イザナミの娘。
陸の民の海洋進出を阻止するため、工作員として地上に送り込まれ、
子供のない指宿の老夫婦に育てられていたのだ。
今となっては陸の民と海の民、互いに憎しみ殺し合う間柄になってしまったこの状況を、
もはや二人はどうすることも出来ず、戦争は苛烈を極めていく。


近代科学の軍事兵器の前に次第に追いつめられる海の民。
ナミの婚約者でもある海洋人セイナは旗艦に取り付く事に成功し、この戦争の指揮を執るぜルバートと対峙。
「お前は間違っていた!そして俺たちも間違っていた。
お互いに話し合うべきだったのに、戦いを始めてしまった…!」
セイナはそう言って、ゼルバートを刺殺。刹那セイナも相討ちになって果てる。


沈没する艦隊、崩れ行く海底都市。ナミは広を脱出カプセルに乗せて海上に放つ。おそらく永遠の別れ。
広の目の前に広がるのは、深海に降り注ぐプランクトンの死骸「マリンスノー」。ナミの故郷に降る雪…。


原作・監督・総設定 松本零士
海をテーマにしてなにかやりたいな、とはかなり前…そうですね、「漫画少年」によく描いていた頃から思っていて、
構想も練っていたんです。これまでの作品の中でも少しずつ出してはきたんですけど、
なかなかチャンスがなくて、本格的に取り組むのは今回がはじめて。当然張り切らざるをえませんね。(中略)
地球の七割は海。その意味では海球といってもいいくらいなのに、われわれはあまりにも海について知らない。
そして知らないままに海洋開発に進出しはじめてるワケです。その良し悪しは別にしてボクはこう想像するんです。
我々人類を含めて生命の起源が海にあることは明らかですよね。
その生命が陸に上がり、進化したのが人類ですが、
そのまま海にとどまり進化した「海の人類」というのがいるかもしれない。(中略)
かつてヨーロッパ人がアメリカ大陸に進出した時、先住民族がいたように、
海にも我々の知らぬ先住民がいるとしたら…(中略)
それと、マリンスノーなんですが、あれは極微の生命体であるプランクトンの亡骸。
それが見る者には非常に美しく見える。
ボクとしては生命の神秘さ、悲しさ、美しさといったものをこのマリンスノーに仮託し、
絵としてもできるだけリアルに美しく、効果的に描き出したい。
色出しやカメラワーク、ありとあらゆる方法を駆使して、自分のイメージに近づけていくつもり。
ストーリーにしろ絵にしろ、いままでのボクの作品とはちょっと違う面白いアニメをお見せ出来ると思います。

制作 井上克洋
テレビ朝日から「海をテーマにしたアニメを」という話があった時、これは松本零士で、とピーンと来たんです。
で、すぐに先生のところに相談に行ったところ「ボクも前からやりたかった」とすぐにOK。
局の高橋氏も「松本先生なら全面的におまかせしたい」と、まさにトントン拍子に決定。
私どもとしてはとにかく松本先生のやりたいようにやっていただき、
そして作品のスミズミにまで松本アニメのイマージュが息づくようにしてほしいと考えています。
そのため、絵・音楽・キャスティングにいたるすべてを先生にチェックしてもらっています。
先生自身も「マリンスノー」は以前からあたためていた構想ということで、ヤル気満々。
夏休みにふさわしい、魅力ある作品をお贈りできそうです。

プロデューサー 広岡 修(オカスタジオ)
「海底ものアニメ」というのは、これまでにもチョイチョイありましたし、ボクもあつかったことはあったんですが、
まあ、正直いって、どれも満足のいくものではありませんでした。
表現方法をはじめとして、海底ものはいろいろと難しい面が多いんです。
しかし、今回は御大・松本零士の出馬。原案・設定も彼ならでは面白さがあふれており、
ボクとしてはいままでの経験をふまえ、「これが海底ものの決定版!」といわれるものを
作ってやろうと意気込んでいます。絵はもちろん、ストーリー、音楽…すべての面で最高のものを
追求していくつもりです。ボクは松本先生とは「ヤマト」以来のおつきあいで、
その作風は自分なりに飲みこんでいるわけですが、
今回は逆にこちらのほうから松本零士の新しい方向性をプレゼンテーションして
彼を感激させてやるくらいのつもりでやっています。
果たしてどこまで出来るのか。松本ファンのみならず、アニメファンの方々も乞うご期待ですね。

テレビ朝日プロデューサー 高橋正樹
夏休みに向けてアニメの特番をやろうということで、当初はこちらにもある程度のプランはあったんですよ。
ところが松本先生がやってくれる。それも細部にわたって参画してくれるというんで、
喜んで全てお任せしたんです。もちろんボクのほうでもチェックしますが、
放映時間帯を考えて、設定をほんの少し変えてもらったほかは、まったく文句なし。
内容もチャーミングで、民話的な抒情性にあふれ、夏休みにピッタリ。
ボクとしては「宇宙戦艦ヤマト」や「銀河鉄道999」とは一味違った、
あるいはそれを超える良質な作品になると期待しています。

テレビ朝日では今後もアニメには力を入れていくつもりで、スペシャルなどのほか、
この作品も反響などを見て来年春をメドにテレビシリーズ化も考えています。
ともあれ、この夏の松本零士アニメはすばらしいものになることは間違いありません。


月刊アニメージュ1980年8月号52〜54頁記事より抜粋・一部文章再構成


1980年夏休みのテレビ朝日のアニメ特番(名作アニメをダイジェストで紹介する番組。
水曜スペシャル枠だったかな?「空飛ぶゆうれい船」も紹介されてました。)
では
SPアニメの宣伝コーナーがあって、これと「闇の帝王吸血鬼ドラキュラ(東映動画)」が紹介されてて、
さぞ「夏休みにテレ朝がよい子のみんなに贈る二大SPアニメ!」といった感じで紹介されていました。
当時はまだヤマトブームの延長線上にあったので、松本零士キャラというだけで、それはもうプッシュするったら。
その後レンタルビデオが普及し始めた1980年代中頃にはビデオソフトも発売されてたので、
ビデオで見たという人も結構多そう。海洋アニメという売りもあって海の描写には力が入っており、
東京・太平洋・指宿の海の色を全て違う色で描写するなど、
スタッフの作品に対する意気込みが伺えます。

海底都市というものは、1950〜60年代の少年雑誌の科学記事では未来の夢のように描かれていました。
海底牧場やら海底遊園地やら、科学が人類を幸せにする、その象徴のように。
が、70年代に入ると公害だ自然破壊だ環境汚染だと騒がれるようになって人類は反省期に入り、
それまで称賛していた科学や文明を否定する作品が続出。
「海底少年マリン」「空中都市008」で描かれた未来都市の姿は、
70年代に入ると「宇宙戦艦ヤマト」の地下都市や、「宇宙の騎士テッカマン」の腐った地球の描写に変わっていました。
それらを経て1980年に生み出されたマリンスノーの伝説においてもやはり、
海底都市=人類の飽くなき野望と繁栄のために海洋を乱開発する諸悪の権化、といった捉え方になっていて、
乱開発を進めるゼルバードも他人の意見に一切耳を貸さない独裁者として描写。
最後互いに破滅する大戦争に帰結してしまったのも、「解り合えない者たちの悲劇」として描きたかったのでしょう。
まあ、アニメ的な盛り上げで、艦船が派手にドンパチしたほうが面白いってのもあったんでしょうけど。
ラスト、ゼルバードが指揮するブリッジにあっさりセイナが辿り着いて刺殺するくだりはやや性急かなとは思いましたが、
「戦争に真の勝者などいない」という作者のメッセージを伝える意味でも必要だったかと思います。
にしてもこのナミといい、松本アニメは「想いを寄せる美女が、想いを知りつつも永遠の別れで終わる」
プラトニックなのが多いような。メーテル然り弥生然り。
あ、「男おいどん」からそういうノリでしたね。

今回の取材で「TVシリーズ化も構想にあった」というのは初めての発見で驚きました。
もしなっていたらどういうシリーズ構成にするつもりだったのか…?
松本零士アニメ作品はこの1980年でピークを迎えた感があり
(ヤマトよ永遠に・宇宙戦艦ヤマト3・マリンスノーの伝説・メーテルリンクの青い鳥)
翌年1981になると「機動戦士ガンダム」が台頭。松本アニメ作品は
1982年の「わが青春のアルカディア無限軌道SSX」をもって、一旦の終息をみます。


マリンスノーの伝説・スタッフ
原作・監督・総設定/松本零士
製作/井上克洋
プロデューサー/高橋正樹(テレビ朝日)中村俊也(NOW企画)広岡 修(オカスタジオ)
脚本/藤川桂介
演出/池野文雄
作画監督/山下征二
メカ設定/板橋克己
制作協力/オカスタジオ
音楽/小笠原 寛
OP/海に還る
(作詞・白鳥英美子/作曲・白鳥澄夫/歌・あろ)
ED/ふたりの郷
((作詞・白鳥英美子/作曲・白鳥澄夫/歌・あろ)
ビクター・インビテーション

キャスト

海野 広(古谷 徹)
島岡ナミ(麻上洋子)
沖博士(永井一郎)
Dr.ゼルバート(伊武雅之)
山盛 正(古川登志夫)
島岡謙造(槐柳二)
島岡ハル(中西妙子)
イザナミ(藤田淑子)
ゼイナ(田中秀幸)ほか


視聴率 12.5%


サンゴ礁伝説 青い海のエルフィ

(1986年5月19日・フジテレビ系放映・放映枠84分/製作・日本アニメーション)

NTTアニメスペシャル第一弾は海洋版ナウシカ
1979年より続いたフジのSPアニメ枠「日生ファミリースペシャル」が、
1986年2月の「生徒諸君!心に緑のネッカチーフを」をもって終了。
その後を受け継ぐかのように、当時民営化まもない日本電電公社あらためNTTが
SPアニメ枠を提供。その第一作が本作です。監督に黒田昌郎氏、キャラクターデザインに小田部羊一氏、
メカニックデザインに小泉謙三氏、絵コンテと場面設定に森 康二氏を招くと言う超豪華仕様。
当時宮崎駿監督の映画「風の谷のナウシカ」公開から時間も経っていなかったことから、
TV雑誌テレパル(小学館)では「海のナウシカ」みたいな宣伝のされ方をしていましたね。
あらすじはこんな感じ。

未来の地球。そこは気候変動の影響で殆どの大陸が水没した世界。
残された人類は海上都市に暮らし、日々を生きる。
そこに二人の兄妹、アルカス(13歳)とエルフィ(12歳)がいた。

彼らは産まれた時から海と共に生き、自然を愛しながら暮らしていた。
そんな二人を優しく見守る親代わりの海洋学者ネレウス。
ある日、エルフィが事故に遭い、酸素ボンベを失ったまま海の底に沈んでしまった。
生存は絶望的と思われたが、なんとエルフィは生きていた。

ネレウスはエルフィに出生の秘密を明かす。お前は人間では無い、と。
十数年前、水棲人の夫婦の遺体のそばで唯一生きていた赤ん坊、
それがエルフィだと。自分は人間じゃない。水棲人だと
知ったエルフィはショックを受ける。

時を同じくして、海洋開発に燃える海上都市の政府高官・カリスマ氏が
さらなる開発を進めようと大規模な海底の乱開発に着手した。
「海が…死にかけてる!」エルフィはこの暴挙をやめさせようと訴えるも
独裁的なカリスマは力でこれを封じ込めようとする。

一方の水棲人たちも、このままでは自分たちの生息圏が破壊されると実力行使に出る。
お互いに理解し合えない地上人と水棲人。
やがてそれは一触即発の状態に。

ついに軍艦まで持ち出し水棲人の一斉排除に乗り出すカリスマ。
我が海を死守せんと徹底抗戦を唱える水棲人たち。
いよいよ全面衝突は避けられぬ事態に。
そこに、両者の橋渡し役としてエルフィがあらわれ、戦争を止めるよう叫ぶ。

だが、カリスマの放ったレーザー砲がエルフィを貫く。と同時にエルフィからまばゆい光が。
それはその場にいる全ての人の心を和ませる、命の光だった。
途端に戦意を失い優しい顔になる両陣営。

「お互い解り得ないのなら…時間をかけて…大切な…海を守って…」
エルフィは最後の願いを両者に託した。
戦争は回避されたのだ。だが、エルフィは…
アルカスが悲しみながら見守る中、エルフィは海にかがやく泡となって消えていった。


監督 黒田昌郎
ぼくはおとぎ話を作っているんです。
400年後の地球を舞台にしたおとぎ話を。

エルフィはやさしい平凡な女の子なんです。
なのに、状況に巻き込まれて、ひとり苦境に
立たされてしまう。そして自分の意思とは裏腹に、
みんなに平和を訴える気丈な女の子へと変わる。
人間の愚かさ、軽薄さ、そして自然保護の大切さが根底に描かれている物語です。
それと、コミュニケーションがいかに大切なものかも伝えたいと思う。
人間と水棲人だって、ちゃんと理解しあえる。
親子、友人、人間同士ならなおさらですよね。

(アニメージュ1986年6月号 アニメージュ・レーダー記事より抜粋)


本作は月曜19;30からの90分枠という、所謂『月曜ドラマランド』枠で放送されましたが、
ドラマランドとは無関係の単発スペシャルアニメとして放送されました。
本作キャッチコピーの「海はあなたに愛されたい」関連なのか解りませんが、
「イルカののった少年」で知られる元アイドル歌手・城みちるの再デビュー作品としても知られます。
当時のTV雑誌の番組紹介ではその辺りもウリだったようですね。
テレパル(小学館)では水中スクーターにつかまり酸素マスクを着けて
自由に海を駆け回るエルフィのスチールが紹介されていて、
声も同じ島本須美さんという点を捉えて「ナウシカにそっくり」と紹介されていましたっけ。

本放送時はNTT一社提供の単独枠という事もあって、
アニメ放送前に沢口靖子が番組解説をするコーナーが2分ほど流れていましたっけ。
当時はまだ東宝シンデレラからデビューして間の無い時期。初々しい。

内容は海底開発を強行する人間と、故郷を守ろうとする水棲人との戦いを背景に、
合間に立たされ苦悩しつつ、戦争を止めようと身を犠牲にするエルフィの献身が描かれています。
兄弟だと思ってたアルカスとは血のつながらない他人と知って悲しみにくれるエルフィに
「妹でなくて、よかった。そう思ってる」と告白するアルカスの、禁断の恋心も描かれていて、
その後の展開を考えるとなんともやるせないのですが。
黒田昌郎監督は「おとぎ話をつくった」と言っていますが、
ラスト、泡となって消えるエルフィはさながら人魚姫を彷彿とさせるもので、
一人取り残されたアルカスがエルフィを偲びながら海岸にたたずむシーンはやりきれません。

ちなみに本作が第一作となったNTTアニメスペシャルですが、
翌年87年10月19日に第二弾「瞳の中の少年 十五少年漂流記」を放送。
放映日がこれといいエルフィといい、すべて「19日」になってるのは、
当時NTTが「19日はトークの日」として、
毎月19日は好きな人、想いを寄せる人に電話をかけようという一大キャンペーンを張ってる最中で、
SPアニメも「トークの日」啓蒙活動の一環だったのです。
(薬師丸ひろ子のCMが洪水のように流されてたっけ。バブル絶頂期ですからね。)
しかしNTTのスペシャルアニメは調べた限りこの二本で終了。
SPアニメという放送形態自体この時期になると激減していて、
元祖の24時間テレビのSPアニメも1986年の「銀河探査2100年ボーダープラネット」をもって終了。
この時期は新たなメディア・オリジナルビデオというものが登場した事もあって、その影響もあるのでしょうか。
(厳密には1989年に一回だけ復活。手塚治虫追悼企画として「ぼくはそんごくう」が製作・放映されました。
 その後も「アンパンマン」の長編が流されたり、24時間テレビ枠内のアニメが消えた訳でも無いのですが)



サンゴ礁伝説 青い海のエルフィ
製作/本橋浩一
企画/佐藤昭司・久保田栄一(フジテレビ)
プロデューサー/遠藤重夫・石川泰平(フジテレビ)
脚本/藤本信行
監督/黒田昌郎
キャラクターデザイン/小田部羊一
メカニックデザイン/小泉謙三
作画監督/小川隆雄・小泉謙三
絵コンテ・場面設定/森 康二

音楽/渡辺俊幸
テーマソング・ED/マーメイド・イン・ブルー
(作詞作曲・種ともこ/編曲・武部聡志/歌・種ともこ)
CBSソニー

キャスト

エルフィ(島本須美)
アルカス(城みちる)
ネレウス(鈴木瑞穂)
カリスマ(内海賢二)
リベル(藤本 譲)
ビアス(神山卓三)
ソロン(矢田 稔)
タレース(平林尚三)
ピッタコス(加藤正之)
タウマス(松岡文雄)
ジョー(喜多川拓郎)
スミス(福士秀樹)
水棲人の青年(堀内賢雄)
係員(小滝 進・田中和実)
兵士(古田信幸)
ほか


視聴率 11.5%


いや、今回は大変でした。今再見がなかなか叶わないんですよね。
昭和のスペシャルアニメたちって。
「大恐竜時代」「マリンスノー」「エルフィ」は
私もリアルタイムで見てたのでイイんですが、
結構見逃したSPアニメも多いもので。
当時はネットも無く情報も遅かったから、当日の新聞見て「え?今夜SPアニメ放送すんの?」
みたいな不意打ちも多く、
あとになって「見ておけば良かったなぁ」と思う事も多々あって。

しかし改めて振りかえると、三作品ともテーマが「自然破壊に対する怒りの文明批判」ですな。
作者と局は違えどテーマは同じ。90分かそこらの長尺をもたせる為には
そこそこ太い骨が必要だったからかも知れませんが。この作品の効能については
当時見ていた子供が大人になった今、胸に手を当てて考えてみれば…
という感じですかね。

SPアニメはまた特集してみたいんですが、一回見逃したらそれっきりというシビアな作品
(再放送されたりソフト化される運のいいのもありますが)なんで、
原体験世代以外は馴染みのないジャンルなのかも知れませんが。
ある意味OVAよりレアなのかも?

それではまた次回。




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