今回は一時期やたら世に出た
スーパーカーアニメの中でも、
真っ当なカーレースアニメとして描き人気を得た本作品を紹介。
というか、他のスーパーカーアニメが荒唐無稽すぎる感もあるのですが。
アローエンブレム グランプリの鷹
1977年9月22日〜1978年8月31日 全44話
フジテレビ系放映・製作 東映動画
スーパーカーブームの最中制作されたレーシングアニメ
本作は原作漫画を持たない東映動画オリジナルアニメで、
折からのスーパーカーブーム(1976年の漫画「サーキットの狼」から起爆したとされる
ムーヴメント)に呼応する形で企画・制作されました。
原案や監修を担当したのは「大きな古時計」の作詞家としても知られる保富康午氏。
氏はカーレースに造詣が深いこともあって、本作の制作にあたり、
相当綿密な取材を行っていたといいます。
27話以降プロデューサー・横山賢二 |
番組の特徴といったものをひとつ… メカに対してウソをつかないということです。 レース場の取材などは? 国内に関しては富士、鈴鹿はスタッフが実際に行ってますし、 海外はこの番組の原案の保富康午さんが ところどころ実地で取材しています。 また、資料もたくさん使って正確をきしています。 ※月刊アニメージュ1978年7月号記事より |
レース界を舞台に、青春・人間ドラマとして描ききった作品
本作品はスーパーカーアニメではありますが、基本は青春・人間ドラマを軸に置き、
轟鷹也の成長の物語が骨子となってストーリーは進行していきます。
レース界という「スピードに命を掛ける、死と隣り合わせの世界」の特殊な舞台で、
様々な人間模様を紡いでいくという骨太な展開。鷹也自身も成長過程の未熟な人間として描写されることが多く、
時にはいじけ、時には調子に乗り、時には意地を張り…といった
等身大の青年として徹頭徹尾描かれているのが特徴。
轟鷹也自身も超エリートやスーパーヒーローではないので、
連戦連勝どころか、結構敗北を続けたりします。(初勝利は第16話)
なので、同時期のスーパーカーアニメと違って、
悪の秘密結社の送り出す殺人レーサーと戦ったりだの、超エネルギーエンジン搭載だの新兵器を満載した
合身スーパーカーで迎え撃ったりだのといった、スーパーカーアニメあるあるな超展開はありません。
富士スピードウェイに謎の青年が自作のマシンで乗り込んできた。 青年の名は「轟鷹也」圧倒的な自信を覗かせる彼に怪訝なサーキットの面々。 「こんなポンコツマシンで何を偉そうに!」が、レースが始まると状況は一変。 鷹也のマシンはなみいるレーサーをぶっちぎりトップに躍り出た。 「勝った!」 勝利を確信した鷹也だったが、先行リタイヤ車の漏れたオイルを踏んだため マシンはスピンしクラッシュ、炎上してしまう…。 鷹也は無事だった。が、 自分のすべてを注ぎ込んで作った自作マシンが炎上するのを見て 夢も目的も失い、彼はサーキットを去る決意をする。 病室で落ち込む彼の前に現れたのは、謎の覆面男。 全てをつぎ込んだマシンが消えた俺に明日は無い、とふさぎ込む鷹也を男は一喝する。 「事故を起こしショックだから自分の気持ちを誤魔化そうとする、この臆病者め! 君は自分自身に怒っているのだ!その怒りを何故レースにぶつけようとしないのだ! 炎の中でよみがえる者が真の勝利者になるのだ。フェニックスになりなさい!」 覆面男の正体は、かつて事故で大火傷を負いながらも 不屈の闘志で復帰した名レーサー、ニック・ラムダだった。 自身の絶望感と男の熱い言葉の狭間で揺れ動く鷹也の心。 このまま消えるか、男の言う様にレースに復帰するか… 鷹也は病室の小鳥に賭ける事にした。 小鳥が外に飛んだら、俺もレースに復帰しよう…。 そして、小鳥は飛んだ。 男に連れられた先は、香取モーターズの別荘だった。だが彼はまだ素直になれず 「俺は車嫌いになった」と悪態をつく始末。 そんな彼にカトリモータースの社員である逢瀬すず子は彼に語りかける。 「車ギライだなんて言いながら、ホントは運転したくてウズウズしてるんじゃないの?」 鷹也の目の前に現れたのは、試作新型ラリーマシン・カトリスーパーロマン。 興奮した鷹也は、スーパーロマンのハンドルを握る。 鷹也は新たなマシンでのレース挑戦に心躍らせるのだった…。 |
父と子・レースの向こうに見える人間ドラマ
等身大の若者の人間ドラマを丹念に描こう、という意図があったからでしょうか。
主役の鷹也はとにかくメンタルが脆く、よく挫けるし、よくスネます。
その度にニックやすず子が檄を入れるのですが、
もう一人重要なファクターが車モータースの社長・車大作。(柔道一直線じゃないよ)
迷い道フラフラな鷹也に幾度と無く活をいれ、本筋へ立ち直らせる影の功労者。
自らも超一流のドライビングテクニックを有し、鷹也に鬼の如き特訓で教授したりします。
この車大作が実は名前を隠した鷹也の父・轟鷹次であり、
グランプリの鷹のもう一つの縦糸でもある「父と子の人間ドラマ」を展開していくのです。
この時期の東映は「惑星ロボダンガードA」「超電磁マシーン・ボルテスV」「激走!ルーベンカイザー」と、
父と子のドラマがやたら多いですな。
そんな父やニック、父のライバルだった井村、オーナーの香取社長、様々なライバルとの関わりが
次第に鷹也をレーサーとしても人間としても成長させていきます。
様々な苦難や挫折を経ながらも、
香取モータース渾身のF1マシン「トドロキスペシャル」を駆って、
ついに鷹也は日本富士グランプリを制し、名実共に「グランプリの鷹」となります。
影の功労者たる車大作の正体に鷹也がようやく気付いたのは日本富士グランプリ優勝の23話。
しかし直後に祖父の幸造から「おまえの母、亜矢子は鷹次が殺したのだ」と衝撃の言葉を投げかけられます。
いきなり怒涛の展開。
冷戦の代理戦争?第二部「F-0編」とその結末
先の第26話「キリマンジャロの誓い」で、所謂「父と子のドラマ」は決着。
父の死を見届けた鷹也はサファリラリーを完走し優勝。
夕日に染まるアフリカの草原を走り続けるカトリスーパーロマンの画はどう見たって最終回のラストシーンです。
アローエンブレム グランプリの鷹 スタッフ
原案・監修/保富康午
企画/別所孝治(フジテレビ)田宮武 {1〜26話}横山賢二 {27〜44話}(東映動画)
制作担当/菅原吉郎
チーフディレクター/りんたろう{1〜26話}西沢信孝{27〜44話}
オリジナルデザイン/杉野昭夫・小林檀
キャラクター設計/野田卓雄・小泉謙三
美術設定/椋尾篁{1〜26話}辻忠直{27〜44話}
音楽/宮川泰
OP/グランプリの鷹(作詞・保富康午/作編曲・宮川泰/唄・水木一郎・フィーリング・フリー)
ED/レーサーブルース(作詞・保富康午/作編曲・宮川泰/唄・水木一郎)
アローエンブレム グランプリの鷹 放映リスト
放送No | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 演出 | 作画監督 | 視聴率 |
1 | 1977.9.22 | 栄光へダッシュ! | 辻真先 | りんたろう | 南条文平 | 7.5 |
2 | 1977.9.29 | いつか不死鳥(フェニックス)のように | 上原正三 | 芹川有吾 | 白土武 | 9.3 |
3 | 1977.10.6 | 怪物マシーンに挑戦 | 上原正三 | 川田武範 | 森利夫 | 9.0 |
4 | 1977.10.13 | 明日へのスピンターン | 上原正三 | 生頼昭憲 | 野田卓雄 | 10.1 |
5 | 1977.10.20 | 傷だらけの爆走 | 上原正三 | 研次郎 | 富永貞義 | 10.9 |
6 | 1977.10.27 | 仮面(マスク)のかげに炎が燃える | 辻真先 | 山吉康夫 | 上村栄司 | 10.0 |
7 | 1977.11.3 | ロードグリップにかけろ | 辻真先 | 原田益次 | 鈴木孝夫 | 10.0 |
8 | 1977.11.10 | 吠えろ六輪車 | 辻真先 | りんたろう | 南条文平 | 9.9 |
9 | 1977.11.17 | 激走500マイル | 辻真先 | 蕪木登喜司 | 菊池城二 | 12.5 |
10 | 1977.11.24 | 黒い氷の恐怖 | 辻真先 | 石崎すすむ | 富永貞義 | 9.9 |
11 | 1977.12.1 | おれのF1 8輪車 | 上原正三 | 川田武範 | 森利夫 | 11.8 |
12 | 1977.12.8 | スペイン愛の嵐 | 上原正三 | 生頼昭憲 | 青鉢芳信 | 11.1 |
13 | 1977.12.15 | 奪われた轟スペシャル | 上原正三 | 原田益次 | 谷口守泰 | 9.4 |
14 | 1977.12.22 | ラ・マンチャの風車 | 上原正三 | りんたろう | 南条文平 | 10.3 |
15 | 1977.12.29 | 吠えろ ル・マン | 上原正三 | 小泉謙三 | 菊池城二 | 11.4 |
16 | 1978.1.5 | 勝った!おれは走った | 上原正三 | 山吉康夫 | 上村栄司 | 14.1 |
17 | 1978.1.12 | 明日の凱歌は俺のもの | 辻真先 | 小泉謙三 | 菊池城二 | 12.4 |
18 | 1978.1.19 | 田園に吠えるマシンたち | 辻真先 | 原田益次 | 鈴木孝夫 | 10.5 |
19 | 1978.1.26 | シルバーストーンのしぶき | 辻真先 | 佐々木勝利 | 小松原一男 | 13.0 |
20 | 1978.2.2 | モンツアGP(グランプリ)前哨戦 | 辻真先 | 川田武範 | 森利夫 | 10.1 |
21 | 1978.2.9 | 男が翼をたたむ時 | 辻真先 | 小泉謙三 | 菊池城二 | 10.6 |
22 | 1978.2.16 | F1日本グランプリ | 上原正三 | 森下孝三 | 青鉢芳信 | 10.5 |
23 | 1978.2.23 | 父に捧げるGP(グランプリ)優勝 | 上原正三 | 蕪木登喜司 | 鈴木孝夫 | 11.5 |
24 | 1978.3.2 | そしてアフリカへ | 上原正三 | 生頼昭憲 | 菊池城二 | 10.7 |
25 | 1978.3.9 | サファリ5000キロ | 上原正三 | 山吉康夫 | 森利夫 | 12.3 |
26 | 1978.3.16 | キリマンジャロの誓い | 上原正三 | 小泉謙三 | 野田卓雄 | 10.6 |
27 | 1978.3.23 | 東西に敵を迎えて | 辻真先 | 西沢信孝 | 富永貞義 | 10.4 |
28 | 1978.3.30 | ロッキー山に翼たたんで | 辻真先 | 森下孝三 | 鈴木康彦 | 10.9 |
29 | 1978.4.6 | ターゲットは鷹也だ! | 藤川桂介 | 小泉謙三 | 小泉謙三 | 8.9 |
30 | 1978.4.13 | 復帰第一戦に命をかけろ | 藤川桂介 | 葛西治 | 篠田章 | 9.1 |
31 | 1978.4.20 | ロングビーチに迷える鷹 | 辻真先 | 山吉康夫 | 篠田章 | 9.8 |
32 | 1978.4.27 | 炎のジェロニモ | 辻真先 | 森下孝三 | 上村栄司 | 8.3 |
33 | 1978.5.4 | 富士障害物レース | 辻真先 | 西沢信孝 | 兼森義則 | 8.8 |
34 | 1978.5.18 | 生き返れ!!サムライ | 藤川桂介 | 福島和美 | 菊池城二 | 7.5 |
35 | 1978.5.25 | 恐怖のF.0第一戦 | 藤川桂介 | 案納正美 | 篠田章 | 6.8 |
36 | 1978.6.1 | 嵐のトレーニング | 辻真先 | 森下孝三 | 森利夫 | 7.3 |
37 | 1978.6.15 | ローレライは死を招く?! | 辻真先 | 明比正行 | 篠田章 | 6.8 |
38 | 1978.6.22 | 風雲ニュールブルクリング | 辻真先 | 西沢信孝 | 兼森義則 | 10.0 |
39 | 1978.6.29 | 激突!!死線を越えて | 辻真先 | 明比正行 | 森利夫 | 7.2 |
40 | 1978.7.6 | 炎と涙のサーキット | 辻真先 | 案納正美 | 篠田章 | 10.5 |
41 | 1978.7.20 | 走れ飛べ野生の鷹 | 藤川桂介 | 川田武範 | 上條修 | 7.4 |
42 | 1978.7.27 | モスクワに散ったライバル | 藤川桂介 | 森下孝三 | 森利夫 | 7.5 |
43 | 1978.8.24 | 浅間燃ゆ!日本最大のレース | 辻真先 | 明比正行 | 篠田章 | 9.1 |
44 | 1978.8.31 | 鷹よ、雲の彼方にはばたけ! | 辻真先 | 山吉康夫 | 兼森義則 | 8.6 |
と、今回も無事終了。
知名度の割に再放送があまり無い本作。
VHS時代はソフト化も無くて、DVDでようやく全話ソフト化されました。
良作ではあるけど広く知られる人気作ではなかったと
言う事でしょうか。まあ、1977年当時と今ではレースの規定も変わっちゃってるし
(トドロキスペシャルの8輪というのは現在のF1では規定外)
今放送するのはやや難しい側面もありますかね?
では次回。