今回はやや短めですがこちらがお題。
アニメ本編の話数も短いから、というわけではありませんが。
(1983年5月26日〜1983年10月27日)
全19話 フジテレビ系放映
製作 東映動画
はじまりは尻拭い
本作品は「ゲゲゲの鬼太郎」「ドロロンえん魔くん」に続く東映動画3番目の妖怪アニメ。
60年代の鬼太郎、70年代のえん魔くんときて、
80年代はこのテン丸、となるハズだった…んですが。
原作はかぶと虫太郎。いろいろ調べると元々は有名同人サークル出身の方
らしいですね。原作漫画は講談社の児童漫画誌「コミックボンボン」に連載され、
当初のタイトルは「ベムベムハンター」のみ。主人公の名前も「テン坊」でした。
アニメ化が決まって主人公の名前が「テン丸」に、
タイトルが「ベムベムハンターこてんぐテン丸」にそれぞれ変化。
原作漫画では「天狗族は一生に3度名前が変わる」というくだりがありますが、
これが当初からの予定か、変更のエクスキューズとして後から足したものかは不明。
人間界の裏側にある妖怪の国。 この国を治める天狗大王の息子テン丸は 年に一度の妖怪祭の晩に烏天狗の子供・クロを連れて 立入禁止の「おそれ山」に侵入する。 そこでテン丸は可愛い少女妖怪に騙されて 山に封じられていた大魔王ベムラーら108匹の妖怪の 封印を解いてしまう。妖怪たちは大暴れし、 挙句の果てに人間界に逃亡。天狗大王はテン丸に激怒して、 天狗の誇りである鼻を折り、罪滅ぼしとして 108匹の妖怪すべて人間界に出向き退治しろと厳命する。 こうしてテン丸はクロと妖怪退治の七つ道具を携えて 人間界に旅立つ事となった。人間界にたどり着いたテン丸は 古びたアパート「つぶれ荘」に居候する事に。 そこで大家のおばあちゃんと孫娘のヨーコと出会い、 仲間をふやしていくテン丸。 果たして人間界に仇なす108匹の妖怪と大魔王ベムラーを、 テン丸は見事退治できるのか? |
原作者・かぶと虫太郎 |
雑誌の解説文 現在27歳。九州から上京後、「金はあるが自由が無い」サラリーマン生活ののち、 聖悠紀氏のアシスタントを経て、週刊少年ジャンプ主催の手塚賞を受けたという。 デビューから15作目に初の代表作といえるアニメ化に到っては― 「連載回数も少ないし、ぼくは設定や妖怪などのデザインを提供するだけで、 原作は素材と割り切ってます。それになにより、専門の脚本家の構成や発想を 勉強させてもらおうと思ってるんです。 アニメでのいい話やキャラは逆に原作にも取り入れさせてもらおうと思ってます。」 ‐この作品を描いた狙いについて‐ 「正義の味方が出てきて大義名分を振り回すのは、 見てるとバカらしくなってしまって、ぼくキライなんです。 理屈抜きに捕物帖的な動きの面白さが楽しめる作品にしてほしいと思ってます。 テン丸にしても、自分が逃がしちゃった妖怪だから、 仕方なく退治してまわっているだけの話で、 正義の味方なんかじゃない。むしろ、いたずらな悪ガキなんです。」 (月刊アニメージュ1983年6月号68頁記事より) |
85年版「鬼太郎」の布石
従来の同ジャンル作に比べても全然陽性の作風に仕上がった本作。
結果短命には終わりましたが、本作で試みられた萌芽には、
後年の作品に継承されたポイントがいくつかあります。
まず、可愛いヒロインの存在。えん魔くんにも雪子姫などの
可愛いキャラはいましたが、本作では今で言うところの
「萌え」要素を付加したヒロインが定着しております。
ほどなくして始まった鬼太郎第三シリーズ(1985〜88)に、
原作に登場しないアニメオリジナルヒロイン・夢子がレギュラーになりますが、
本作に登場したヨーコの影響は多分にあるのでは?
また、怪奇や因果応報といったそれまでの定石を取り払って、
こういう脳天気な妖怪アニメがあっていい、という
ある意味開き直った感じの「明るい妖怪モノ」という描写は
それまでの怪奇アニメには無かったことで、ある意味「テン丸」が突破口を開いたとも言えます。
事実、鬼太郎第三シリーズでも妙にコミカルで明るい描写が増えましたし。
以前のシリーズでは考えられなかったことです。
これも「テン丸」を一度経験したスタッフが手がけたから、と言えるわけで。
今じゃ「コミカルで明るい妖怪アニメ」なんて、普通になってますしね。
その先鞭をつけたのが「テン丸」だった、とは言えないでしょうか。
短命に終わった本作。その最終回とは?
けど視聴率的にはさほど健闘する事も無く、
当時の東映動画TVアニメの最短記録たる全19話で放送終了。
108匹の妖怪はデザイン済みで、普通に考えれば1年以上の放映を予定していたのかな?
とも考えられるのですが。
時間枠的にも「銀河鉄道999」「1000年女王」「パタリロ!」などを
放映していた時間ですから、東映動画的にも力は入れていたハズですが
(ちなみに前番組は「スペースコブラ」)。
ベムベムハンターこてんぐテン丸 スタッフ
原作/かぶと虫太郎(月刊コミックボンボン連載)
企画/土屋登喜蔵・旗野義文
製作プロデューサー/横井三郎
製作担当/関口孝治
シリーズディレクター/設楽 博
キャラクターデザイン/鈴木欽一郎
美術デザイン/坂本信人
音楽/筒井広志
OP/おいらテン丸(作詞・冬杜花代子 作曲・小林亜星/編曲・高田弘/唄・藤田淑子)
ED/うちの親分(作詞・冬杜花代子 作曲・小林亜星/編曲・高田弘/唄・松島みのり・藤田淑子)
ベムベムハンターこてんぐテン丸 放映リスト
放送No | 放送日 | サブタイトル | 脚本 | 演出 | 作画監督 | 視聴率 |
1 | 1983.5.26 | ようかいたいじ出発進行! | 山崎忠昭 | 設楽博 | アベ正己 | 8.2 |
2 | 1983.6.2 | ようかいカブレガマ | 山崎忠昭 | 遠藤勇二 | 小松原一男 | 8.5 |
3 | 1983.6.16 | なめくじようかいナメナメ | 酒井あきよし | 笠井由勝 | 及川博史 | 7.2 |
4 | 1983.6.30 | うおんちっと!ようかいトリオ | 山崎忠昭 | 白土武 | 白土武 | 7.7 |
5 | 1983.7.7 | テルテルぼうずは雨がすき? | 酒井あきよし | 設楽博 | 小松原一男 | 6.5 |
6 | 1983.7.14 | ようかいスイトルゾ | 田口勝彦 | 山本寛巳 | 白土武 | 9.3 |
7 | 1983.7.21 | ようかいジャングル・ルーツ | 山崎忠昭 | 遠藤勇二 | 及川博史 | 9.6 |
8 | 1983.7.28 | つぶせ!ようかいナマズ城 | 山崎忠昭 | 設楽博 | 尾鷲英俊 | 7.8 |
9 | 1983.8.4 | カイカイカイの海水浴 | 酒井あきよし | 白土武 | 白土武 | 8.3 |
10 | 1983.8.11 | ばけスイカ・おいしいぞ! | 田口勝彦 | 設楽博 | 小松原一男 | 7.9 |
11 | 1983.8.18 | ようかいタイフーン兄弟 | 酒井あきよし | 山本寛巳 | 白土武 | 7.1 |
12 | 1983.9.1 | 子連れようかい死神 | 田口勝彦 | 遠藤勇二 | 及川博史 | 10.4 |
13 | 1983.9.8 | 絵かきようかい・かくぞう | 安藤豊弘 | 笠井由勝 | 小松原一男 | 10.2 |
14 | 1983.9.15 | 大ぐらいもほどほどに | 山浦弘靖 | 白土武 | 白土武 | 9.3 |
15 | 1983.9.29 | 人形にされたヨーコちゃん | 安藤豊弘 | 梅澤淳稔 | 青山充 | 10.2 |
16 | 1983.10.6 | ニーナちゃんがやってきた! | 酒井あきよし | 設楽博 | 尾鷲英俊 | 11.2 |
17 | 1983.10.13 | ハイキングおばけだ城 | 酒井あきよし | 遠藤勇二 | 白土武 | 8.1 |
18 | 1983.10.20 | 倒せ!妖怪グータラ | 安藤豊弘 | 佐藤順一 | 及川博史 | 10.0 |
19 | 1983.10.27 | 赤いキツネと木七先生 | 酒井あきよし | 設楽博 | 尾鷲英俊 | 11.6 |
と、一年振りの更新終了。
私も最後に見たのは30年前の関西テレビの朝の再放送が最後。
しかもあれ一回しか再放送見たこと無い。
19話という中途半端な話数はTV局も使いづらいんでしょうけど。
そのうち東映チャンネルとかでやるかな?
とはいえ随分更新が遅れました事をお詫びしつつ。
次回はGW以降かと。国会図書館で資料調べないと
記載出来ない項目があって。
それではまたー。