高度経済成長の時代、
日本には「下町の太陽」的なジャンルが確実にありました。
清く、貧しく、美しく。雑踏と混濁の社会においても助け合い、
励ましあい、強く正しく生きていこう、みたいな。
21世紀となった現在、殆ど死滅してしまったジャンル(?)と
言ってもいいのかも知れませんが
(梶原一騎も70年代後半には自ら「もうホットなだけでは
通用しない時代になった」とも言ってましたし)、
今回はそんな「下町の太陽」を思わせるこちらがお題。

てんとう虫の歌
(1974年10月6日〜1976年9月26日・
フジテレビ系放映・全104話/製作・タツノコプロ )



たくましく生きる昭和の七人兄弟

先週まで全地球的な壮絶SFバトルを繰り広げていた
時間帯(科学忍者隊ガッチャマン)の後にいきなり現れ始まったのがコレ。
タツノコのフレキシビリティには改めて驚かされるといいますか。
もっとも、ガッチャマンの前番組が「いなかっぺ大将」だった事を考えると、
単に元に戻っただけなのかも知れません。
本作は1973年、川崎のぼる&カワサキプロがいなかっぺ大将の後を受け継ぐ形で
小学館の学年雑誌(小学一〜六年生)で連載された漫画が原作。
主なあらすじはこう。

とある東京の郊外。子沢山の賑やかな一家があった。一週家。
月美(小学6年生)、火児(小学5年生)、水男(小学4年生)、木介(小学3年生)、
金太郎(小学2年生)、土丸(小学1年生)、そして末っ子で就学前の日曜子の七人兄弟は、
父・間太と母・休美と賑やかに、朗らかに生活していました。
ある日、日頃の感謝をこめて、両親に旅行をプレゼントした兄弟たち。
ところがその旅行先で、両親は飛行機事故で帰らぬ人になってしまいます。
突然両親を失った七人兄弟。それまでの経済的支柱も家事の中心も失い、
途方にくれますが、現実は彼らに容赦なく襲い掛かります。
彼らは兄弟だけでもたくましく自立し生きていこう、と決意し、
自分達をてんとう虫の羽の上の七つ星に例え、
兄弟力をあわせて生きていくことを誓います。
表向きは冷たくあしらう母方の父である岩倉鉄之助や、
アメリカ在住(アニメではオーストラリア在住)の母の妹である岩倉明美に
影から見守られながら、彼らは様々な困難に立ち向かっていくのです。

原作では最初の数回は両親は生きていて、一緒に生活しているシーンも丹念に描写されています。
だから突然飛行機事故で死んでしまうシーンはかなりの衝撃でした。
これに対してアニメのほうはというと、
第一話の時点で既に両親は亡くなっているという設定になっていて、
両親との想い出は回想シーンでのみ登場します。
(アニメ版では父・間太が先に病死してて、母親の休美が窮乏生活の末に亡くなる、という、
ある意味原作以上に悲惨な話になっていますが)

故にアニメ版は原作の冒頭の
「両親との生活→両親との突然の別れ→生活の困窮→月美の過労による卒倒」
といった展開は端折られて、最初から親無し兄弟の奮闘記として描かれています。


川崎のぼる&タツノコタッグ第二弾

スタッフは前々作「いなかっぺ大将」の笹川ひろし氏を総監督に迎え、
前作「ガッチャマン」や「キャシャーン」のスタッフが周りを固めるといった磐石の体制が取られました。
(中盤以降は笹川氏が新番組「タイムボカン」の総監督になったため、
後半どのくらい関われたかは不明ですが)

基本フォーマットは兄弟の周りに起きる事件やトラブル、日常の出来事を中心に
ストーリーが進行していくのですが、主な主人公は末っ子の日曜子(ひよ)。
この女版大ちゃんがズッコケドタバタを繰り広げて話を引っ掻き回すのが基本。
ブタや犬に乗って疾走し(あしたのジョーかキャシャーンか、どっちにも取れるなぁ。)
下駄で相手を乱打するというバイオレンス振りも彼女のトレードマークです。

脚本陣と演出陣のチームワークも素晴らしく、結果2年間に及ぶ人気番組となり、
前作「ガッチャマン」以上に視聴者に愛される番組となりました。
放送終了後も度々再放送が繰り返され、
1990年代に入るまでは再放送の定番アニメのひとつと言ってもいいほどの
ヘビーローテーションぶりでした。また、原作者が同じだからということもあって、
第68話ではいなかっぺ大将がゲスト出演しています。
柔道大会に出場するためやってきた、という設定だったと記憶していますが。
あいかわらず、すぐスッパダカになる点も変わっておりません。


悲劇と復活の最終回
その「てんとう虫の歌」の最終回。
原作のほうはというと―

叔母でありアメリカ在住の母の妹、岩倉明美が日曜子を養女に貰いたいという事になり、
兄弟は「まだ幼い日曜子には母の愛情が不可欠だ」という話になりこの申し出を受けます。
日曜子も「明美おばさんとこに行くでしゅら」とあっさり了承。
「アメリカに一度行ったら、もう戻ってこれないことを日曜子は知らないんだな…」
(昭和40年代ですからねぇ。)
車に乗り込み空港に向かう日曜子を涙で見送る兄弟と動物達。
てんとう虫の星が一つ去ってしまった…。

しかしその後、日曜子はあっさりとんぼ返りして兄弟の元に。
やっぱり動物や兄弟の事が気になったのでアメリカに行くのはヤメだ、と言う事で元の鞘に戻り、
これからも七人兄弟で生きていこう

というオチで終わっています。(小学三年生連載版)
(川崎のぼる・カワサキプロの漫画連載はここまで。この後も別作家による漫画連載は続きますが、
こちらは突然連載が尻切れトンボで突如終わってしまい、中途半端なまま終了しているので。)


では、アニメの最終回、第104回「ひびけ!てんとう虫の歌」はというと―

岩倉鉄之助から、母が愛用していたというオルゴールが兄弟のもとに届けられます。
かつて母が窮乏生活中に子供達の食費に充てる為、
質流しした舶来品のオルゴール。鉄之助がこっそり買い戻し、
手元に置いていたのでした。形見らしい形見がなかった母の唯一の形見とも言うべきオルゴールに、
兄弟は感慨深く聴き、想いを馳せます。

幼い兄弟達にとって、オルゴールの物悲しくも優しい旋律は、
母への郷愁をより一層かき立たせるものでした。
その日、日曜子はオルゴールとともに寝ます。母への想いを寄せながら。
しかしその夜、突如火災が発生します。
断線した電線から漏電し、家屋に燃え移ったのです。

あっという間に炎は兄弟の家を包み込んでしまいます。命からがら逃げ出す兄弟。
「母しゃんのオルゴールが!」燃える家には形見のオルゴールが残されたまま。
でもどうすることも出来ず、家は焼け落ち、全焼します。
全てを失い途方に暮れる兄弟達。悲しみに暮れる兄弟に岩倉鉄之助は言います。
「いいんじゃ。形見なんか、無いほうがいいんじゃ…。無いほうが想い出は強く残る。
…こうなってしまった以上、どうじゃ?ワシのところに来んか?」

その時、焼けぼっくりからオルゴールの音が!奇跡的にオルゴールは燃えずに埋もれていました。
兄弟は鉄之助にこう言います。
「あたいやっぱりここに住むんら!」
「うん!母さんは今でもここに生きてるんだ。
家は焼けても「がんばれてんとう虫兄弟」って呼びかけてるんだ!」

「やろう!みんなでまた家を建てるんだ!」
兄弟たちは焼け落ちた家を自分達で作り直し、
そしてあらたなてんとう虫兄弟の家を作り上げたのです。



えらくデザイナーズマンションな感じもしますが、この屋根は日曜子のデザイン。
(実際岩倉鉄之助の資金援助も相当あったと思います。大金持ちの爺さんだし。)
全てを焼け野原となって失ってもまたイチから作り直して再生し再出発を誓う…。
クラッシュ&ビルドを体現したような最終回です。




てんとう虫の歌 製作スタッフ
原作/川崎のぼる(小学館学年雑誌連載)
制作担当/中野政則(タツノコプロ)・内間稔・大野実(読売広告社)
プロデューサー/永井昌嗣
アシスタントプロデューサー&制作デスク/栃平吉和
企画/鳥海尽三・小山高男・酒井あきよし
総監督/笹川ひろし
作画監督/林 政行・源田秀夫・川端宏
美術監督/多田喜久子
キャラクターデザイン/高橋資祐
製作協力/フジテレビ
音楽/菊池俊輔
OP/ぼくらきょうだいてんとう虫
(作詞/若林一郎・作曲/菊池俊輔 ・唄/堀江美都子・こおろぎ,73・ヤングフレッシュ)
ED/ぼくらそろって一週間
(作詞/若林一郎・作曲/菊池俊輔 ・唄/こおろぎ,73・ヤングフレッシュ)
ED2/ひよこでしゅら
(作詞/若林一郎・作曲/菊池俊輔・編曲 /青木望 ・唄/堀江美都子・松島みのり)




てんとう虫の歌 放映タイトル

放送No放送日サブタイトル脚本演出
11974.10.6きょうだいそろってドンといけ!鳥海尽三笹川ひろし
21974.10.13ぼくらきょうだいてんとう虫酒井あきよし布川ゆうじ
31974.10.20できたぞ!天下のチビッ子ホーム陶山 智上梨満雄
41974.10.27授業参観だよ!火児父ちゃん小山高男原征太郎
51974.11.3アルバイトだよ!全員集合鳥海尽三布川ゆうじ
61974.11.10指きりげんまんさようなら酒井あきよし上梨満雄
71974.11.17日本晴れ!修学旅行三宅直子出崎 哲
81974.11.24たたされ大将火児にいちゃん多村映美布川ゆうじ
91974.12.1勝利のノックダウン鳥海尽三
永田俊夫
上梨満雄
101974.12.8幸福のえんどう豆陶山 智出崎 哲
111974.12.15大失敗!土丸たんてい武末 勝布川ゆうじ
121974.12.22サンタがわが家にやってきた落合茂一笹川ひろし
131974.12.29負けるな!でっかい夢くらべ三宅直子出崎 哲
141975.1.5ひよママの子守唄石井喜一
鳥海尽三
上梨満雄
151975.1.12ゲンコツばかりが男じゃない多村映美出崎 哲
161975.1.19走れ!てんとう虫きょうだい酒井あきよし布川郁司
171975.1.26ちっちゃなお手伝いさん多村映美寺田和男
181975.2.2父ちゃんのゲタはひよのゲタ武末 勝上梨満雄
191975.2.9集まれ!七つの流れ星坂本ひろし
鳥海尽三
布川ゆうじ
201975.2.16父ちゃんの動物園を守れ!柳川 茂出崎 哲
211975.2.23父ちゃんはつらいよ
三宅直子寺田和男
221975.3.2カラ兵衛たちも家族だよ寺田信義原征太郎
231975.3.9家出しちゃったひよ宮原和男上梨満雄
241975.3.16ハロー!アメリカのママ陶山 智出崎 哲
251975.3.23ぼくらは大スター 寺島アキ子布川ゆうじ
261975.3.30熊さんのお嫁さんやーい 多村映美上梨満雄
271975.4.6幸せをテニスにかけろ三宅直子原征太郎
281975.4.13金太郎はだれの子?笹川ひろし西牧秀雄
291975.4.20幼稚園はひよの夢鳥海尽三布川ゆうじ
301975.4.27オニババがやってきた多村映美西牧秀雄
311975.5.4月美姉ちゃんの誕生日酒井あきよし原征太郎
321975.5.11教育ママをぶっとばせ!武末 勝上梨満雄
331975.5.18おてんばひよ姫石井喜一西牧秀雄
341975.5.25おさがりはイヤだ!松岡清治原征太郎
351975.6.1親孝行ってなんだ?小山高男西牧秀雄
361975.6.8ハリキリひよ婦警石井喜一布川ゆうじ
371975.6.15ずっこけカウボーイ金太郎多村映美西牧秀雄
381975.6.22海のガキ大将三宅直子原征太郎
391975.6.29ダンプ父ちゃんの子守唄竹内 進西牧秀雄
401975.7.6負けるなラーメンお爺さん武末 勝布川ゆうじ
411975.7.13夏休みだよ!移動動物園武末 勝布川ゆうじ
421975.7.20チビッ子、ゲタッ子、長靴っ子堀田史門上梨満雄
431975.7.27お山の大将オレひとり笹川ひろし西牧秀雄
441975.8.3はじめての海水浴田沢あき布川ゆうじ
451975.8.10嵐の中のゴールイン小山高男西牧秀雄
461975.8.17けったいなお婆ちゃん武末 勝原征太郎
471975.8.24ひとりぼっちのお使い松岡清治上梨満雄
481975.8.31友情のやぐら太鼓
島 惇一西牧秀雄
491975.9.7ゆうれいが出たァー!!三宅直子原征太郎
501975.9.14お面一本!おじいちゃん石井喜一布川ゆうじ
511975.9.21ペットは友だち三宅直子西牧秀雄
521975.9.28みんなのサイクリングコース柳川 茂布川ゆうじ
531975.10.5友情のメダル 小山高男上梨満雄
541975.10.12山寺のモーレツ修行 石井喜一原征太郎
551975.10.19さようなら!金二郎石井喜一原征太郎
561975.10.26お見合いだよ!おじいちゃん酒井あきよし西牧秀雄
571975.11.2わんぱく長ぐつ大将毛利 元西牧秀雄
581975.11.9トランプうらない大さわぎ毛利 元上梨満雄
591975.11.16もらわれて行ったひよすずきよしたけ原征太郎
601975.11.23おしかけモモエ婆ちゃん寺島アキ子久岡敬史
611975.11.30泣き虫大どろぼう武末 勝西牧秀雄
621975.12.7モデルになった月美姉ちゃん竹内 進西牧秀雄
631975.12.14がんばれ!土丸たんていすずきよしたけ原征太郎
641975.12.21ひよの一日セールスマン笹川ひろし笹川ひろし
651975.12.28父ちゃんは名スター石井喜一西牧秀雄
661976.1.4ハトよはばたけ!すずきよしたけ上梨満雄
671976.1.11100点だよ!火児にいちゃん堀田史門西牧秀雄
681976.1.18いなかっぺ大将がやってきた毛利 元原征太郎
691976.1.25おにぎりの歌三宅直子原征太郎
701976.2.1下町ワンちゃん大行進すずきよしたけ西牧秀雄
711976.2.8けんかチビッコ剣士酒井あきよし上梨満雄
721976.2.15それ打て!ホームラン鷲山京子西牧秀雄
731976.2.22もしも大人になったならすずきよしたけ原征太郎
741976.2.29負けるな!マラソン校長三宅直子西牧秀雄
751976.3.7自転車はぼくの夢
寺島アキ子西牧秀雄
761976.3.14熊さんの恋人あらわるすずきよしたけ上梨満雄
771976.3.21東京はぼくらのふるさと山本 優原征太郎
781976.3.28UFOがやってきた!竹内 進上梨満雄
791976.4.4ひよのお料理大修行 すずきよしたけ西牧秀雄
801976.4.11友情の土俵入り 米陀黎子西牧秀雄
811976.4.18家族ってなんだろう?寺島アキ子原征太郎
821976.4.25おれはキャプテン!三宅直子西牧秀雄
831976.5.2雪山に消えたひよ酒井あきよし上梨満雄
841976.5.9ドスコイすもう旅毛利 元西牧秀雄
851976.5.16てんとう虫大パーティー山本 優西牧秀雄
861976.5.23ガキ大将がやってきたすずきよしたけ原征太郎
871976.5.30泳げ!日本一竹内 進西牧秀雄
881976.6.6ひよの潮干狩原田益次西牧秀雄
891976.6.13さようなら曽場先生堀田史門出崎 哲
901976.6.20お姉ちゃんになったひよ三宅直子上梨満雄
911976.6.27ひよのアゲハチョウすずきよしたけ西牧秀雄
921976.7.4走れ!友情の船鷲山京子原征太郎
西久保利彦
931976.7.11がんこ先生は日本一鳥海尽三上梨満雄
941976.7.18正義の味方!てんとう仮面毛利 元原征太郎
西久保利彦
951976.7.25カラ兵衛のママ現わる毛利 元西牧秀雄
961976.8.1ひよの汽車ポッポ竹内 進出崎 哲
971976.8.8帰ってきた金二郎堀田史門上梨満雄
981976.8.15ターザンになったひよ寺島アキ子原征太郎
西久保瑞穂
991976.8.22あこがれのハワイ旅行毛利 元上梨満雄
1001976.8.29ひよの動物大作戦堀田史門西牧秀雄
1011976.9.5ミニサーカスがやってきた石井喜一出崎 哲
1021976.9.12ひよのボーイフレンド
佐藤利男上梨満雄
1031976.9.19てんとう虫幼稚園すずきよしたけ西久保瑞穂
1041976.9.26ひびけ!てんとう虫の歌竹内 進
鳥海尽三
西牧秀雄



キャスト


日曜子(松島みのり)
月美(岡本菜莉)
火児(安原義人)
水男(山本嘉子→松尾佳子)
木介(山下啓介)
金太郎(つかせのりこ)
土丸(丸山裕子)
カラ兵衛(大平透→立壁和也)
岩倉 鉄之助(大平透)
一週間太・伴先生(増岡 弘)
一週休美・岩倉 明美(麻生美代子)
栃成金次郎(松金よね子)
ほか


というかんじでお届けしました記憶70回目。
70回もやりましたか。13年で70回は少ないのか多いのか。
次は何しますかね。それは次回の講釈。




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