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東映B編まんが映画特集


さて、3ヶ月ぶりの更新です。
今回は劇場映画の特集。といっても、夏休みとかでよくテレビで
流されたものなので、知名度は結構高いです。
かつて「東映まんがまつり」という児童向け興行が行われていた
昭和40年代中盤、本格的な長編動画は基本的に春に公開されていましたが、
夏休みはB編と言われる、一時間以下の中篇が公開されていました。
そんなB編と言われる作品群の中で、特に印象に残るオリジナルSF編を
3本ご紹介します。
今回はこの作品から。




海底 3万マイル
(1970年7月19日東映系封切・カラーワイド6巻 1689m 60分)
観客動員数 185万人
同時上映・タイガーマスクふくめんリーグ戦・もーれつア太郎・ひみつのアッコちゃん・柔道一直線

海底3万マイルポスター

海底国と地底国の大戦争が見られます。
こんなキャッチコピーが堂々とポスターに刷られてたって言うから、
当時の塩梅っていうのはなにかにしろざっくりいってたんですね。
先の「空飛ぶゆうれい船」に続く石森章太郎原作長編カラーまんがといいたいのですが、
石森氏の原作漫画は存在しません。原作と呼べるのははヒントと大まかな流れを示した石森先生直筆の便箋のみ。
これが原作?まあ、殆ど東映動画オリジナルといっていい作品です。
キャストや雰囲気などは前年の「ゆうれい船」を引きずってる感がありますが、
こちらはひたすら陽性な印象。深刻な事態もありますが、なぜかあまり深刻さを受けません。
冒険活劇に全体のカラーが終始してるからでしょうか。あらすじはこちら。

海洋研究学者を父にもち、冒険好きな少年イサムは、今日も火山見物にチーターと出かけ、
そこで海底国の王女エンジェルと知り合った。その時突然、無気味な地鳴りとともに火口から巨大な火焔竜が出現、
その口から溶岩を吐いて周囲をとかしはじめた。怖ろしさに気を失ったエンジェルを助けて、
危うく逃げ切ったイサムとチーターは、海底国へ招待されることになった。
今から何万年か昔のこと、海底人は地上に住んでいたが、
欲のふかいマグマ王が地球征服を企み、炎の湖から火焔竜をひき出したところ、急に暴れ出し、
大地震と洪水をともなって地上を洗いながしてしまった。
マグマの一派は地底に、その他の者は海底に逃げて、それぞれ国を興し、
そして、今また、子孫のマグマ七世は野望を抱き、再び火焔竜を登場させてきた。
やがて、海底を行く火焔竜を尾行したイサムたちは、地底国に迷いこみ、捕えられてしまった。
命からがら牢から脱出したイサムたちは出口を求めてさまようが、
実際は奥へ奥へと入りこんで、マグマ七世が火焔竜をあやつる指令室につき当った。
そのころ火焔竜は平和をのぞむ海底国にまで進撃を開始していた。
対する海底国は戦闘艇からの軟体動物作戦をくり出し応酬したが、苦戦はまぬがれない。
イサムたちは警備隊が戦闘に出はらったのを機会に、一人残ったマグマ王を倒し、
指令室の赤いスイッチを押した。すると火焔竜は一斉に向きをかえ、地底国を攻撃、
こうして地底国は自らの手によって滅び去っていった。




海底3万マイル立看 どうも先の「ゆうれい船」と比較せざるを得ないのですが、
深刻な事件や災厄に見舞われてるのに
軽いというか、脳天気というか。
被害はこっちは全地球規模なんだから
ゆうれい船より深刻なんだけどなぁ。
(世界中の火山が大爆発、なんてラスト、
人類滅亡するでしょうに!)

この映画のベストキャラに
火炎竜というロボット竜がいますが、
デザイン、描写ともに素晴しい傑作です。
口から吐くマグマ弾のデザインはのちの
ヤマトの遊星爆弾そっくりですが
高速で打ち出され、サッカーボールのように楕円に歪みつつ、
目標物の上で閃光となって
一瞬のうちに人間を蒸発させるという描写は
鮮烈な印象として今なお脳裏に焼きついてます。
しかもこの火炎竜、量産型メカなんですね。
大量に作られていて、
一斉に部隊化して攻撃をしかけるシーンは興奮モノ。
海底国と地底国との戦争シーンも、
先制攻撃の地底側、専守防衛の海底側とに
描写がくっきり分かれてます。
科学技術だけををみると、
海底国のほうが数段上っぽいのですが。


でも、物足りないのですよ。
この映画正直言って。
理由は単純で、善悪がくっきり分かれちゃってるからです。
海底国や人間は絶対的な善で被害者。
地底国は絶対的な悪で侵略者という具合にはっきり描写が分けられちゃってる。
ゆうれい船のような「自分の住む世界に潜む組織悪、社会悪に苦悩する」みたいなことは一切無く、
悪の源は地底国の国王マグマとその悪の軍団、という風にされちゃってるんでドラマが広がらないのです。
ただ単に正義と悪の戦いになっちゃった。
主人公の少年が得意のサッカー(オーバーヘッドキック)でマグマ王に戦いを仕掛けて倒し、
最後は火炎竜を暴発させ、結果地底国を全滅させてハッピーエンド、って、単純すぎない?
先のゆうれい船が高度なテーマを扱ってたから、余計にこの安易な「悪を皆殺しにして平和が戻った」という
ラストが空々しいというか、安易というか、物足りなさだけが残るのです。
あえてテーマを読むなら「兵器におぼれたる為政者は兵器で自滅する」ってトコでしょうか。
ひょっとしたら、ゆうれい船の時、会社側にクレームつけられて、結果こういう平板なものに落ち着いたと
いうふうに考えも出来るのですが…ね。

海底 3万マイル 製作スタッフ

製作/大川 博
原作/石森章太郎
企画/山梨稔・茂呂清一・横山賢二
脚本/岡本克巳
演出/田宮武
作画監督/奥多貞弘
美術/山崎 誠
原画/喜多真佐武・奥山玲子・菊池貞雄・金山通弘・角田絋一・森 英樹・小田克也・阿部 隆ほか
動画/生野徹太・山下恭子・相磯嘉雄・円山 智・富永 勤・笠井晴子・長谷川玲子 ほか
製作進行/古沢義男
音楽/渡辺岳夫
テーマ曲/海底3万マイル&大騒ぎのタンゴ(作詞・岡本克巳/作曲・渡辺岳夫/
唄・ザ・ココナッツ /水森亜土 /ボーカル・ショップ)


キャスト

イサム(野沢雅子)
エンジェル(小鳩くるみ)
タトル(人見明)
オクトパス(海野かつお)
地底王(納屋吾郎)
海底王(北川国彦)
イサムの父(梶哲也)
イサムの母(瀬能礼子)
船長(村越伊知郎)
アナウンサー(野田圭一)ほか


魔犬ライナー0011変身せよ!
(1972年7月16日東映系封切・カラーワイド5巻 1365.5m 50分)
観客動員数 170万人
同時上映・仮面ライダー対じごく大使・超人バロム1・国松さまのお通りだい・変身忍者嵐・魔法使いチャッピー

劇場公開時ポスター

へんしん大会に出した東映動画の切り札?
世の子供たちが仮面ライダーなどの変身・サイボーグヒーローに夢中になっていたこの時期、
本家の東映が「だったら長編動画も変身サイボーグもので行こう」と画策し、
ブームに便乗して作られたのが本作。ゆえにこの時のまんがまつりの副題は
「東映まんがまつり・へんしん大会」ときた。あからさまな。
原案はタツノコプロで演出家となっていた笹川ひろし氏が漫画家時代に
少年キング創刊号から連載していた「魔犬五郎」。もっとも、笹川氏自身は一切アニメに
タッチしていません。サイボーグ犬でスーパーメカに変形するというコンセプトは、
その後笹川氏が総監督をつとめたタツノコプロの「新造人間キャシャ−ン」と同様で、
ある種、違うプロダクションで同じコンセプトのキャラが使われた訳で、ライナーとフレンダーは
腹違いの兄弟と言えなくもありません。

が、この「魔犬ライナー」、現在に至るも一切ソフト化がされておらず、
評価もはっきり言って低いです。
「変身ブームに乗った時代の徒花」
これが魔犬ライナーの評価を一言で物語っているといってもいいでしょう。
では、どんな内容だったのか?今回はフィルムストーリーブック風に紹介してみましょう。
(2010.4追記・2010年3月東映ビデオからDVDソフトが発売されました。)

時は未来の1980年代。
富士山に大量の隕石が降り注ぐのが目撃された。
知らせを受けた富士山頂の
観測隊員たちが調査に向かう。
しかし、調査員は全滅。残って電話連絡していた
隊員も、突如不気味な影に襲われ消息を絶った。
それが事件のはじまりだった。

未来都市のニュータウンに住む少年ツトムは、
今日も親友である野良犬クイーン&その子犬たちと
仲良く遊んでいた。そこに、
街頭のテレヴィジョン・ファクシミリが
号外を印刷し街中に記事をばらまいた。
「林博士の宇宙人存在説・学会で敗れる」
林博士はツトムの父である。
「おまえの父ちゃんはウソツキだ」
「宇宙人だって、バッカでぇ。」
ツトムに同級生から浴びせられる罵倒。
ついにツトムと子供たちは喧嘩になる。

世間から孤立し、
嘲笑の対象となった博士とツトム。
そんな博士の元に
謎のサボテンが送られてくる。
不気味に光るサボテンに、
「これを持ってきたのはツトムかい?」
「ううん、知らないよ。」

そのとき、クイーンと子犬たちが
そのサボテンを咥えて、家の外に飛び出した。
「待て!クイーン!なにするんだ!ドロボー!」
刹那、林の中で轟く爆音と爆風。
「クイーン!」「おおっ!ツトム!」
「吹き飛んだ木々の跡を見てツトムは呟く。
「ぼく…謝らないと。クイーンに泥棒って言った…
クイーンは命と引き換えに
僕らを助けてくれたんだ…。
ごめんよ、知らなかったんだよぉ。」

そんな折、富士山が300年の眠りから覚めたように
噴火を始めた。
未来都市メガロポリス富士区は
大被害を被ることになる。
博士は研究所に急行する、が、
出しなにツトムにこう告げる。
「誕生日にすばらしいものをプレゼントするぞ。」
ツトムの誕生日。
テレビ電話から博士が呼びかける。
「誕生日おめでとう。
なんとか間に合わせよう
とおもってね。庭をみてごらん。」

「庭?」ワン!ワン!
ヘルメットを咥えた
クイーンと子犬たちが走ってきた。
「パパ?どうしてクイーンたちが生きてるの?」
実はクイーンたちは脳だけが奇跡的に生きていた。
博士は言う。「4匹をサイボーグに改造したんだ。
見なさい、これがクイーンの構造だ。
補助電子頭脳を持ち、3匹の子犬たちの
エネルギータンクでもある。
頭部は電子冷却装置を備えた
超硬度ドリルになる。」
「すごいや!」
「これはエース。左目に三つの秘密がある。
1つはスターライトスコープ、2つは放射線アイ、
3つは熱線追跡カメラ。右目はあらゆるものを
溶かすプラズマ・ガンだ。
これはジャック。ジャックは口に秘密がある。
口から高圧縮のジェットガスを噴射。
あらゆるものを切断粉砕することが出来る。
最後にジョーカー、
体全体が特殊プラスチックで出来ていて、
ミサイルにもクジラにも変身出来る。」

そのとき、テレビ電話の博士が何者かに襲われる「うわあ!」
「パパあ!どうしたの!」
「ツトム!ヘルメットをかぶれ!
あ!う、宇宙人…!」

電話が切れる。
ツトムがヘルメットをかぶると、
クイーンの声が聞こえてきた。
「命令をどうぞ。」「クイーン、お前の声?」
「説明は後です。早く命令を」
「う、うん。ぼくを研究所に送ってくれ。」
クイーンと子犬はサイボーグに変身。
ツトムはサイボーグ犬にまたがって
疾風のごとく研究所に。
「パパ!大丈夫?」「私の怪我はいい、
それより宇宙人を追いなさい。
サイボーグ犬の性能をその目で確かめるんだ」

「わかったよ、パパ。」
「よし。ライナー、ゴー!」博士が叫ぶと、
クイーンたちは変形を始め、
一体のサイボーグ艇に合体した。
ツトムはコクピットに乗り込み、
敵の追尾に入った。
「いたぞ!ツトム!敵だ!」エースが語りかける。
クワガタの戦闘メカ、マグドロン出現。
ライナー艇は4機に分離。
エースのプラズマガンがマグドロンに命中。
墜落する。が、宇宙人は中には乗っていない。
「敵のかくれ家がこの近くにあるんだな。
エース、富士山があやしい、調べてくれ。」

エースが富士山を透視。
すると富士山の中が完全に
宇宙人の基地と化していた。
「ひゃあ、おっどろきぃ。」
「そうか、
あの噴火はニセモノだったんだな。
よし、行こう!」

火口に進入していくツトム達。
基地のコンピュータールームに
たどり着くが、そこには護衛カマキリメカ・
マンデラスがいた。子犬たちとツトムは
マンデラスに苦戦。
その一方でクイーンは頭部をドリルに
変形させ、基地のポンプ室を貫いた。
みるみる水没するコンピュータールーム。

基地にいた宇宙人、
それはデビル星人だった。
デビル星人…宇宙の寄生虫。
星々を渡り歩いては原住民を殺し
星に寄生する。昆虫から進化した
怪宇宙人であり、ボスの名ははゴルゴス。

ポンプ室の破壊で
マンデラス、デビル星人ともども
河口湖に打ち上げられた。
富士火口からマンデラスに乗った
ゴルゴスが逃げていく。
「パパ!宇宙人やっつけたよ!」
ツトムが研究所に入ってくると、
椅子に座ってた博士が崩れ落ちた。
背中は炭化している。虫の息の博士。
「ツトムよくやった…これはごほうびだ…」
博士はツトムにミサイル装備の
ピストル銃をプレゼントする。
「武器にしなさい…ハンド・ホーミング銃だ。
使い方はクイーンに…」

「パパ!死んじゃやだ!」
「ツトム、泣いてるときではないぞ!
基地を壊しても本拠地が残ってれば
攻撃はつづく。戦いはこれからだ!
パパとともに戦え!ライナーとともに…!」

博士はツトムにピストルを託して息絶えた。

「ぼくは泣かないよ!
宇宙人を全滅させるまでは!」


突然流れるニュース速報。
「臨時ニュースです!
魔犬ライナーによって正体を暴かれた
宇宙人は自らをデビル星人と名乗り、
初めて正式に地球に通信してきました!
地球語に翻訳して、「死」。
ただ一言、「死あるのみ」と…。」
地球上の物質ならなんでも切り裂くマンデラス、
あらゆる物質を腐食させるダニンガー部隊を
つかいデビル星人は一斉攻撃を
しかけてきた。さらに中性子兵器、隕石砲。
そして究極の最終兵器、月を爆発させて
隕石の雨を地球に降らせるムーン・ボム。
ムーンボムの阻止にツトムとライナーは戦うが、
もはやエネルギーが底を突きかけていた。

ムーンボム爆発まであと9分。
デビル星人は爆破を前に
本拠地を月から離陸させようとするが、
ジョーカーによって本拠地のコントロール装置を
破壊される。ボスのゴルゴスのみが司令カプセルで
脱出するが、それを追跡するライナー。
「パパを殺した宇宙人がいるよ!ツトム!」
「逃がすもんか!」
カプセルをエースが透視すると、
「あっ!カプセルの中にムーンボムの
タイムスイッチがあるよ!」

司令カプセルに飛びついたツトムとライナーは
ついにボスのゴルゴスと対決。
タイムスイッチを破壊し、悪を倒したのだ。
地球壊滅までの残されたタイムリミットは
わずか、3分の1秒だった。
「パパ!勝ったよ!見ててくれたね!
パパ!パパ!」




いかがだったでしょうか。まあ、正直な感想をいえば、結構中身だるんだるんです。
「ライナーって誕生日プレゼントだったのかよ!」とか、
「博士が死んだのはツトムとライナーが後始末をきちんとしなかったからだろ」とか、
「今際の際で息子に殺人兵器を形見に渡す父親って一体…」とか、
「デビル星人って高度な武器もってるのに低脳(キーキーしか言わない上にマヌケ)だな」とか、
「そもそもデビル星人って、ひねれよ!」といったツッコミどころ満載なのが今となっては面白いのかもしれませんが。
原画を東映動画の職人、森康二さんが担当されてることもあって絵がかわいいのがちょっと救いになってる?
話の内容は紹介したとおりのものなので、まあ、こんなもんだという事以外言いようもないのですが。
あと、長所挙げろと言われると音楽ですかね。
山下毅雄さんの劇伴、主題歌はカッコいいです。出来のいいBGMなんで、
のちに「バビル2世」にも流用されてます。(イプシロン星人の回ね。)
主題歌もムーディで結構好き。CD化してくんないかなぁ。
ちなみにこの映画、上映当時アンケート取ったらしいのですが、
魔犬ライナーの人気は全6本上映作品中4位だったそうで。合掌。

魔犬ライナー0011変身せよ! 製作スタッフ

製作/高橋 勇
原作/笹川ひろし
企画/飯島 敬
脚本/辻 真先・芹川有吾
演出/田宮 武
作画監督/大工原 章
美術/辻 忠直
原画/奥山玲子・菊池貞雄・金山通弘・角田絃一・森 康二
   木野達児・阿部 隆・的場茂夫・篠原征子
動画/生野徹太・山下恭子・壇合 昇・円山 智・富永 勤・森 英樹
   田村真也・松原明徳・黒澤隆夫・笠井晴子・草間真之介 ほか
製作進行/大野 清
音楽/山下毅雄
テーマ曲/ゴー!ゴー!ライナー(作詞・辻 真先/作曲・山下毅雄/唄・笈田敏夫・音羽ゆりかご会)
     負けるな!ライナー(作詞・辻 真先/作曲・山下毅雄/唄・笈田敏夫・音羽ゆりかご会)



キャスト

ツトム(里見京子)
林博士(山内雅人)
クイーン(北浜晴子)
ジョーカー(曽我町子)
エース(野沢雅子)
ジャック(松島みのり)
アナウンサー(野田圭一)
(千々松幸子)(柳沢美知子)(矢田耕司)
(北川国彦)(山田俊司)(青二プロ)
ナレーター(小林 修)


と、今回は夏休み期間ということもあって
東映まんがまつり中篇動画特集となりましたが
次回はいつもどおりのスタイルに戻ります。それではまた。




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