第八話 |
![]() 四月。クロパン・三好・猿飛の3人は揃って甲子園常連校の強豪・甲龍学園に入学した。 (あれ?光陽学園って中高一貫校だよ…ね?ってことは…?) 野球部に当然の如く入部した三人は新入生歓迎試合に出場。 猿飛の俊足・三好のホームラン・そしてクロパンの剛速球で、 九回二死まで甲龍野球部相手に9-0の完封ペース。 さすがにこれはマズイと思った監督が叫ぶ。 「「は組」じゃ話にならん!「い組」の連中を呼んで来い。」 ![]() 完封直前のクロパンに不敵な笑いを浮かべ豪語する監督。 ![]() 「どうでもいいけど早くしてくれよ。あと一人で試合終了だってんのに…」 「そう急くな。…ほれ、来たようだ。」 ![]() 地平線のかなたから地鳴りと土煙。 突然吹っ飛ばされ、血ヘド吐く猿飛。 驚愕の三好とクロパン。 次々と土煙が守備についている新入生をふっ飛ばし、 血みどろにしてグラウンドに叩き付ける。 死屍累々のグラウンドに唖然としているクロパンの目前で土煙が止まった。 「「は組」の連中をいたぶってくれた新入りのピッチャーつうのはきさまかあ!」 クロパンの目前に現れたのは… ![]() アメフトスタイルの巨人の集団!(裕に三メートルはあるわ。) 「げえっ、な、なんだこいつらは!」 巨漢の三好をして驚愕のデカさ。 そのままのスタイルでバッターボックスに立つ「い組」メンバー。 ![]() あっさりクロパンの剛速球を苦も無くジャストミート。 ![]() 打球はそのまま場外へ! 一方その頃図書室で詩集を見る紅顔の美少年。 ![]() キュウウウ、と打球の音。ガラスをぶち破ってホームランボールが美少年の元に! ![]() 静かに沸々と湧き上がる闘志。 美少年の目つきが変わる(怖えよ。) 「い組」の猛攻は続き、 なんと九者連続場外ホームラン! 「あっという間に同点だ…」 ![]() 十人目、これもバックスクリーンを飛び越え場外…と思いきや、 猿飛の超人的跳躍力でキャッチ。サヨナラは免れた。 「ちっ、捕られたか。」 それを見ていた「い組」キャプテン・剛田は激怒し、 バッターを殴り倒す。グシャリと凹むヘルメット。 「きさまあ。それでも「い組」のメンバーか!きさまはっ、明日から「ろ組」に行けえ!」 「ひいいい…!」 試合は延長戦へ。剛田が叫ぶ。 「光はどこだあ!」 「ここにいますよ。剛田キャプテン。」 現れたのは先ほどの紅顔の美少年。 ![]() キザ野郎め!と奮起するクロパンと三好。 剛田が三好にほくそ笑みながら語る 「打てるもんなら打ってみな!」 「くっ!…さあきやがれ!」 直後、マウンド上の光に驚く三好。 「うっ!」 ![]() 見たことも無い奇異なピッチングフォーム! ![]() 「そんな目くらましに乗るかっ!ボールはただの直球じゃねえか!」 だか、ボールはバットの手前で まるでリモコンで動かされたように軌道を変え、 バットの芯を外す。軽くバットに当たり、 そのままキャッチャーフライに。 ![]() 無敵の魔球・白鳥の舞い。クロパンは策を講じる。 「バットを振らなきゃ一球目でキャッチャーフライにとられることもない! へへっ、見送って球筋を見極めてやる。」 が、それを見越したかのように、 クロパンの構えただけのバットに、吸い寄せられるようにボールが当たる。 まるで誘導ミサイル。 ![]() 結果三者凡退。裏の攻撃は剛田の場外ホームランでサヨナラ。 「へへっ、レギュラー組の「い組」の実力がわかったか! 貴様らは今日から早速草むしりだっ!」 新入生歓迎試合(だよね?)後のグラウンドで、 罰として(歓迎試合…だよね?)延々草むしりさせられるクロパン・三好・猿飛。 (他の新入生の姿は一切なし。みんな血祭りにあげられちゃったし…新入生歓迎試合…だよね?) クロパンが歯軋りしながら光への挑戦を決意。 ![]() 速球だけじゃダメだ。魔球だ!魔球が必要なんだ! いよいよ魔球に舵を切ったクロパン!果たして? |
第九話 出た!!魔球サンダーボルト!!の巻 |
![]() クロパンが「い組」メンバーにメッタ打ちにあったその数日後、 甲龍学園のグラウンドからクロパンが消えた。 「ク、クロパンが行方不明だと?」 逃げたんじゃ?と怪しむ猿飛を怒りでたたきつける三好。 「クロパンはそんなヤワな男じゃねえっ!」 ![]() 一方、甲龍のエース・光はピッチング練習中。 数球のウォーミングアップ程度の練習でグラウンドを去ってしまう。 「甲子園連続出場校のエースにしちゃ優雅な練習だなぁ…」 不思議がる猿飛。 三好はそれを横目に「クロパンは…クロパンは今ごろ必ず、 あのキザ野郎をエースの座から引きずりおろすために 猛特訓を積んでるにちがいねえっ!」 「うん…」 三好と猿飛は互いに頷きます。 ![]() その頃…クロパンは人里離れた山奥にいました。 ![]() 髪は肩まで伸び、ユニフォームもボロボロ。 大木に硬球を何度もぶつけて、威力と速度を確かめている様子。 大木にはボール大の大穴が空くほどに。 「し…しかし、あの「白鳥の舞い」に対抗できる魔球が このオレに生み出せんだっぺか?オレの生み出す魔球はただ 「白鳥の舞い」に対抗できるだけじゃダメだ……」 ![]() 山篭りの修行はその後も続いた。素手と素足で川魚を捕らえ、 自給自足の生活(スゲエ!)。 「あの「い組」のレギュラーメンバーをかたっぱしからなぎ倒す事の出来る魔球! …それが…それが…オレの魔球だっ!」 時同じ頃、甲龍学園野球部練習場。 「い組」が格下の「ろ組」「は組」をシゴいていた。 「きっさまあ〜っ!クロパンに続く脱落者第二号になりたいのかあ!」 「ぎゃあっ!」 バットで殴り倒され、失神し果てる「は組」選手(イヤ、ただの傷害事件ですって)。 「いいかきさまらっ!この甲龍学園が甲子園連続出場を果たしているのも 激しい地獄の特訓があればこそだっ! 地獄の特訓についてこれない者は即刻退部届けを出せえっ!」 剛田キャプテンの号令の下、さらに続くバットでの殴打特訓(イヤ、ただのリンチですって)。 グロッキー状態の「は組」の面々に混じって、三好が呟く。 「クロパンが、脱落者第一号だとぉ!クロパンはそんな腰抜けじゃねえ! 必ず帰ってくる!クロパンは必ず帰ってくる!」 一方、図書室。練習を終え、旧約聖書を読む南大路光。 ![]() が、突然グニャる背景。 「い、いかん!く……。」 十字架のペンダントからカプセルを取り出し服用。 青ざめた顔でカレンダーを凝視する光。 ![]() 更に時は流れ、クロパンの篭る山。 まだ魔球のヒントはつかめない。 ![]() やがて天気は崩れ、黒雲が空を覆い雷鳴が轟き始める…。 ![]() ヒントをつかんだクロパン。 雷の正体を見極められれば、きっと魔球が誕生する! が、落雷は大木に落下、裂け燃えた大木がクロパンの上に! 押しつぶされたクロパン! ![]() 嵐は去り、燃え尽きた大木の残骸。 やがてそれが少しずつ持ち上がり… ![]() 生きていたクロパン!大木を持ち上げ絶叫!響くこだま。 そして…甲龍学園グラウンドに戻ってきたクロパン。 「三好…手伝ってくれ。」 ![]() そのまま三好を引きつれ「い組」キャプテン・剛田のもとへ。 ![]() 前回メッタ打ちにされた剛田と再対決。 はたしてクロパンの編み出した魔球とは…? ![]() ![]() ついに出た!脅威の魔球サンダーボルト!驚愕する三好と甲龍ナイン。 魔球をひっさげたクロパンの更なる挑戦が始まった! |
感想 |
「新構想でスタート」と銘打たれた八回目。 その言葉に偽りは無く、今までの地味ながらも堅実かつ本格的な「人間野球ドラマ」だったクロパンが、 まるで全く別次元の、異次元ファイト炸裂の荒唐無稽野球バトルへと180度転換。 タイトルは同じでもノリが全く異なる作品へと変貌を遂げます。 世代人のクロパンの記憶は間違いなくこの「新構想」以降のエピソードのほうが 圧倒的に強烈と思われるのですが、もし、序盤の骨太の人間模様ドラマが継続していたら どういう展開になっていたんだろう…。そういうエピソードも見てみたかった気もします。 けど、ココまで積み上げた人間模様ドラマを 一度ばっさりと切り捨てたおかげで、というのも変ですが、 クロパンは荒唐無稽野球マンガとして生まれ変わり、 今尚世代人に強烈な印象を残す作品になれた、と言えます。 八話と九話はまさに「生まれ変わった」と印象付けさせる強烈な作品。 巨人族のような甲龍「い組」のメンバー。 南斗神拳でも振るいそうな怪しげな南大路光のキャラクター、 なにかにつけてケレン味大爆発の演出がそこいらで沸騰してあぶくを吹いてる、そんな感じ。 それにつられてか、扉絵のあおりコピーも 「激闘野球の始まりじゃ!」「甲子園に行くんじゃい!」と、 無意味に男回路スイッチ・オン!な豪気な文句があふれかえるようになります。 そして出ました魔球!クロパンといえば魔球、という印象の強い人も多いでしょうが、 登場はここからなのですな。「白鳥の舞い」、そして対抗するために クロパンが生み出した「サンダーボルト」…。理屈や解明など一切ありませんが、 ただただ凄い魔球、というのはお解かりいただけたかと。 そして高校野球編に入った事で、荒唐無稽さとケレン味はこの後、 暴走ターボがかかったようにひたすら上がり続けていく事に。 |