看板

最近だとドラマ版、胃腸薬のCMアニメで認知してる人も多いのかしら。
今回は再放送ヘビロテの昭和ギャグアニメの第二作がお題。

新・ど根性ガエル
1981年9月7日〜1982年3月29日・日本テレビ系放映・
全30回60話(1回2話)

製作・東京ムービー新社




ムービーアニメ旧作リメイク路線のアンカー
本作はかつての大ヒットギャグアニメ「ど根性ガエル」のパート2として作られた作品で、
当時の東京ムービーがやたらと制作していた「人気アニメのリメイク路線」の最後を飾った作品でもあります。
実はこの放送に先駆けて日本テレビは旧作「ど根性ガエル」の再放送を月〜金夕方18時から行っていたのですが、
再放送にも関わらず21.4%もの視聴率を叩き出していまして。新シリーズの制作は滞りなく決定。
「あしたのジョー2」の後番組として放映されることとなったのです。


スタッフは旧シリーズの芝山努・小林治コンビが担当。
キャストはひろし・ピョン吉・梅さん・町田先生は前作と同じキャスティングですが、
実はそれ以外のキャストは総入れ替え。今回調べて初めて知りました。
主題歌作詞作曲は当時イケイケ状態だった横浜銀蠅が、歌を当時結成1年目の新人だった
とんねるずが担当。「お笑いスター誕生」特別敢闘賞のご褒美?
 

 
第一話のあらすじはこんな感じ。

今日も下町はいい朝を迎えました。
そこに大慌てで走っていくのは、毎度おなじみひろしとピョン吉の名コンビ。
今日も遅刻ギリギリです。ショートカットで空き地を抜けようとしたところ、
石につまずいてコケてしまい、結局そのロスがたたって遅刻確定となりました。
校長から呼び出されたひろしは「今後このような遅刻が続くなら落第だ!」
と最後通告を受けてヘコみまくり。
「ちくしょ〜!あの空き地の石が悪いんだ!あんな石掘り返して捨ててやる!」
その空き地の石は、実はひろしがつまづいて、ピョン吉を貼りつかせる
きっかけになった思い出の石でした。
多少感傷にふけったものの、やはり掘り出そうということになり、
スコップで掘り返しだします。が、掘っても掘っても
石は地中深く埋まっています。
やっと全貌を現したそれは、巨大な岩塊!
先っちょがちょっぴり地面から顔を出していたに過ぎなかったのです。
その巨大さに一同ガクゼン。

ご覧のように、本作品は別にリメイクという訳ではなく、
仕切り直しといった感じで始まっています。
ひろしやピョン吉の紹介もとくに無く
「毎度おなじみひろしとピョン吉の名コンビでござい」といった感じ。


高橋靖二(日本テレビプロデューサー)
一話完結で、我々の言葉でいうところの「2回出し」、
所謂30分で2話放送するというやつですが、
学園ホームドラマであり、ドタバタあり、ウェットありで楽しいものになりますよ。
前回のは当然、10数年前の時代設定ですが、
今回は今の時代設定にして、よりナウにしていくつもりです。
監督が芝山努さん、作画監督が小林治さんと、
前回と同じですし、手慣れたものですから
期待度は倍価していただいていいと思います。


芝山努(監督)
やっぱりギャグものなんだろうけど、
生活を基盤にした作品にしたいんです。
実際にセットを組んだ中でキャラクターを動かす、そのくらいのつもりでやります。
背景設定を緻密にしておくことで
話に臨場感も出てくるはずです。見ている人たちが「本当にありそうな街だ」と
思えるくらいにしたいんですね。


小林治(作画監督)
とにかくオトナが見ても子どもが見てもおもしろい作品です。
なにせ主人公が受験勉強なんかスッとばして
積極的に遊んで生きてることが魅力だと思うんです。
それに前作と違って親子関係や
教師と生徒の関係をはっきり描き出しますから、
生活感がうまく出ると思います。
ぼくらが中学生だった頃のイメージを
再現したいんです。


吉沢やすみ(原作者)
今度のど根性ガエルは7年前放送していたものの改作なんですけど、
改作といっても全部変えるんじゃなくて、今の時代に合うように設定を
新しくしなおすというのかな。
7年前のものをリフレッシュするというのが一番あたってますね。


月刊ジ・アニメ&月刊アニメージュインタビュー記事より抜粋


旧シリーズの担当者でもある芝山・小林コンビがそのまま担当するのですから、まず間違いは無い、と
言えるのですが、最初見たときその絵の違いにビックリしました。
オーバーにもとれるキャラのデフォルメ、なんかグネったような描線、真っ黒に塗りつぶされた口の影など
旧作の絵とは明らかに一線を画した独特のタッチ。
おそらく「まんが日本昔ばなし」の制作に関わった際に、さまざまな実験的なタッチを試した結果
このラインに行きついたと思うのですが。そう思うと7年という月日は短いようで長い。
小林治氏の作画はこのあとの劇場アニメ「対馬丸〜さよなら沖縄〜」「カッくんカフェ」
同じようなタッチで描かれていましたね。コロコロしていて可愛いタッチなんですが、
旧作のスマートな作画でど根性ガエルを刷り込まれた世代には違和感があったと言いますか。

視聴率は旧作再放送の勢いのままに、初回から16.5%をマーク。
前番組「あしたのジョー2」の最終回(真っ白に燃え尽きたアレです)の9.4%を軽く凌駕。
これは!と関係者も期待が膨らんだのですが…。




厳しい制作環境を逆手に取って


本作品はご覧になった方はご存知と思いますが、
Aパートの冒頭部
(昇る朝日に下町の家々が煌々と照らされていくシーン、ひろしがダッシュで梅さんの横を走り抜けていくシーン)

Bパートのラスト部分
(夜、ひろしとピョン吉が11PMのテレビをつけっぱなしにしながら居眠りしてしまうシーン、
その家の横を町田先生がジョギングしながら一言添えるシーン)

ほぼ毎回同じです。実はこれいろいろな理由が重なって生まれたフォーマットで、
意図的なもの、そうでないものもひっくるめて言うと、
「同じ街のシーンを繰り返し映し出すことで、
視聴者に街のイメージを刷り込ませて、本当にその街にいるような疑似体験をさせる」

と、監督の芝山努氏は雑誌のインタビューで語っています。
一方予算面ではかなり厳しいものだったらしく、
一回放送分(2話分)の使用セル枚数は3000枚前後で
抑えるようにとされていました。それを実現するためにと考えたされたのが
冒頭とラストの同一化、さらにはコンテの旧作からの流用、
ライブラリー映像からの編集エピソードとして形になりました。
「枚数を使えばいいってもんじゃないですから」と芝山氏は答えていましたが、
相当苦しい条件下での制作だったことは想像に難くありません。
本作品はその後も順調に放送を続けていたのですが、
翌1982年1月から裏番組で「あさりちゃん」が始まると視聴率は急降下。
あさりちゃんが平均15%の視聴率を稼ぐようになると、新ど根性のほうは4%前後にまで下降。
結局当初の予定通り番組改編期までの放送、
全30回で放送終了とあいなった次第。
関係者いわく「すごい視聴率を叩き出せば延長が無いわけでもなかったが」だそうですが…。
月曜19時台は激戦区ですからねぇ。



黄昏と失われた風景への邂逅

前番組「あしたのジョー2」にも言えることですが、
この頃の東京ムービー新社のリメイクアニメって、
70年代にパワフルに暴れていた主人公たちが、
黄昏てしまった80年代に居場所を求めて彷徨ってるような、
物悲しさみたいなものが画面から染み出ているんですよね。
もう自分たちの時代ではなくなってしまった、とでも言わんばかりに。
夕陽にそまる下町の風景はリアル云々ではなく、
「今はもう失われてしまった情景」として描かれている感がひしひし出ていて。

ひろしが下町の子どもたちを引き連れて、夕焼け空の空き地に遊びに連れていくシーンが
何度か描写されていましたが、
昭和の昔は年上の子どもが年下の子を面倒見するというのが当たり前の風景で、
子供社会のルールでもありました。
核家族化や受験戦争の激化で、子供社会も様変わりし、
「新・ど根性」で描かれた、かのような描写は
1981年の時点で「失われた風景」でした。
ジョーが夕焼けの茜色に染まる泪橋のほとりでドヤ街の子ども連中と遊ぶ、
それと同じように。



謎の劇場版「ど根性・夢枕」

本作品には実はあまり知られていませんが劇場版作品が存在します。
1982年3月20日に東宝東和系で公開された「新ど根性ガエル ど根性・夢枕」という作品で、
尺は40分。おそらく併映公開作品と考えられるのですが、
映画雑誌やアニメ雑誌を見ても何と同時上映されたのか、
全国何館で公開されたのかさっぱり解りませんでしたが、
当時の新聞の映画案内欄で「おはよう!スパンク」の劇場用長編の横に「短編」と書かれた上映情報を発見。
スパンクも東宝東和系で同時期の上映でしたから、
おそらくこの「短編」と書かれているのが「ど根性・夢枕」のことではないかと推察します。
とはいえ確たる物証も何も無いので断定は出来ませんが。
あらすじはこんなの。

ここは下町中学校2年B組。
今日もひろしは英語の授業中に居眠り。
夢の中は江戸時代。ひろしが大福を売っている。
そこに町娘が現れてひろしと知り合う。
かわい子ちゃんっぷりにひろしはすっかりホの字。
実は町娘はお城から抜け出した京子姫だった。
番所では姫が行方不明だと大騒ぎ。
そんなことも露知らず、ひろしは京子姫扮する町娘にプロポーズ。
が、突如現れた新八に姫はさらわれ…たところで夢から覚めたひろし。

こちら現実。ひろしは例の夢の話をしながら京子ちゃんとデート。
イイ雰囲気になったのをいいことに、
「本当に結婚しよう京子ちゃん」とプロポーズ。
なぜか五郎が媒酌人となって教室で結婚式。
それを聞いた校長先生が大激怒。
「中学生同士が結婚などもってのほかじゃ!」
南先生の機転で騒ぎは収まるが、
京子ちゃんは「いい加減にして!もうイヤ!」と
飛び出してしまうのだった。

なんかよく解らないというか、筋立てがフガフガしてるなあ、と思ったら実はこの劇場版、
TVシリーズのエピソードからそれっぽいシーンを抜いてジグソーパズルのように
組みなおした総集編、というより再編集版。ストーリーのみ新作で絵はライブラリーから
賄ったという「富野マジック東京ムービー新社版」ともいうべき劇場映画だったのです。
当時TVシリーズはまだ放送中だったから、新作劇場版ってよく作れたなぁと思ってたら
こういう事だったわけですね。やはりいろいろ制作環境は厳しかったようで。



新・ど根性ガエル 製作スタッフ

原作/吉沢やすみ(月刊少年ジャンプ連載)
企画/吉川 斌
プロデューサー/高橋靖二・加藤俊三
制作担当/青野史郎
文芸担当/飯岡順一
チーフディレクター/芝山 努
作画監督/小林 治
美術監督/水谷利春
制作協力/亜細亜堂
音楽/小六禮次郎

OP/ピョン吉・ロックンロール(作詞・作曲・横浜銀蝿・/唄・とんねるず)
ED/夢行きチケット(作詞・大津あきら/作曲・加藤邦彦・/唄・とんねるず)

新・ど根性ガエル 放映リスト



放送No放送日サブタイトル脚本演出・コンテ視聴率
1981.9.7名コンビひろしピョン吉の巻
ひろしの兄弟1ダースの巻
高屋敷英夫
高屋敷英夫
F.H.キノミヤ
伊吹はじめ
16.5
1981.9.14ピョン吉ガマの油の巻
メチャメチャ避難訓練の巻
高屋敷英夫
高屋敷英夫
小泉謙三
清水玲子
15.5
1981.9.21恐怖のおできの巻
ぼくたち結婚しますの巻
高屋敷英夫
高屋敷英夫
伊吹はじめ
F.H.キノミヤ
16.5
1981.9.28恐怖のピョン吉シャツの巻
父兄参観日の巻
高屋敷英夫
高屋敷英夫
河内日出夫
石倉八木
16.2
1981.10.5ジャンボスッシーの巻
マラソン大きらいの巻
金子裕
金春智子
伊吹はじめ
小泉謙三
12.6
1981.10.12ゴリライモはねらっていたの巻
やめないで町田先生の巻
高屋敷英夫
金子裕
亀井典
川島あきら
13.0
1981.10.19遊園地脱出の巻
焼肉ジャージャーの巻
桜井正明
金春智子
沼尻東
石倉八木
13.5
1981.10.26さらばヨシコ先生の巻
根性あるクシャミの巻
浦沢義雄
浦沢義雄
山田みちしろ
川島あきら
12.4
1981.11.2おでん文化祭の巻
とうちゃんなんていらないの巻
高屋敷英夫
桜井正明
清水玲子
F.H.キノミヤ
11.2
101981.11.9スネーク団大逆襲の巻
梅三郎の家庭教師の巻
高屋敷英夫
浦沢義雄
伊藤幸松
小泉謙三
14.3
111981.11.16恐怖のマジックショーの巻
ぶってもいいわの巻
金春智子
金春智子
川島あきら
須田裕美子
11.6
121981.11.23出世梅三郎の巻
高い高いイヤー! の巻
桜井正明
金子裕
伊藤幸松
伊吹はじめ
8.6
131981.11.30愛の逃避行の巻
かあちゃんハートで勝負の巻
浦沢義雄
桜井正明
亀井典
石倉八木
9.1
141981.12.7かあちゃん女らしくの巻
スポンサーは宝寿司の巻
金春智子
金子裕
須田裕美子
小泉謙三
10.6
151981.12.14恐怖の夜まわりの巻
カゼに御用心の巻
金春智子
金子裕
川島あきら
山田みちしろ
12.5
161981.12.21メロンが来るぞの巻
梅さんのクリスマスプレゼントの巻
金春智子
浦沢義雄
川島あきら
亀井典
11.4
171981.12.28大そうじはしたけれどの巻
除夜の鐘は大騒動の巻
高屋敷英夫
桜井正明
山田みちしろ
沼尻東
9.8
181982.1.4ひろどんと京子ひめの巻
2001年夢中の旅の巻
川島あきら
川島あきら
F.H.キノミヤ
伊吹はじめ
7.8
191982.1.11ホッカホカラグビーの巻
成人の日の作文の巻
浦沢義雄
桜井正明
清水玲子
伊藤幸松
9.7
201982.1.18ゴミは俺のものの巻
こわい手紙の巻
桜井正明
金春智子
亀井典
小泉謙三
8.9
211982.1.25雪が降って…そしての巻
京子ちゃんの理想の男性はの巻
金春智子
浦沢義雄
川島あきら
石倉八木
4.2
221982.2.1この道ひと筋25年の巻
出前もち見習い中の巻
桜井正明
浦沢義雄
角谷哲生
山田みちしろ
3.5
231982.2.8愛と希望のマフラーの巻
バレンタインデーはきらいの巻
桜井正明
金春智子
亀井典
伊藤幸松
4.4
241982.2.15どれいピョン吉の巻
くたばれ寒中水泳の巻
浦沢義雄
久利一
川島あきら
河内日出夫
3.4
251982.2.22梅ヨシコ先生の巻
日本一のヘアデザイナーの巻
金春智子
金子裕
北原健雄
F.H.キノミヤ
4.7
261982.3.1ミス桃の節句は誰だの巻
町田先生の自転車を探せの巻
浦沢義雄
松下幹夫
児玉兼嗣
石倉八木
4.6
271982.3.8くに子ちゃんは大スターの巻
母ちゃんの家出の巻
浦沢義雄
久利一
川島あきら
亀井典
5.2
281982.3.15ヨシコ先生愛のゆくえの巻
シャツ20枚大当たりの巻
桜井正明
杉和幸
F.H.キノミヤ
児玉兼嗣
5.9
291982.3.22ビックリ爆弾大騒ぎの巻
京子ちゃんの晴れ姿の巻
松下幹夫
浦沢義雄
小泉謙三
河内日出夫
6.0
301982.3.29出張花見ずしの巻
タバコ地獄の巻
神崎貢
神崎貢
伊吹はじめ
須田裕美子
5.4
1982.3.20ど根性・夢枕川島あきら芝山努

※赤字スタッフ名個所は(コンテより採録)との注釈付き。
 旧作、新作放映分のリメイク・総集編という位置づけと思われる。

キャスト


ひろし(野沢雅子)
ピョン吉(千々松幸子)
かあちゃん(斉藤昌)
梅さん(原田一夫)
ゴリライモ(青空球児)
京子ちゃん(富井淳→黒須薫)
五郎(堀絢子)
ヨシコ先生(戸田恵子)
南先生(田中秀幸)
町田先生(永井一郎)
モグラ(青空好児)
宝寿司の旦那(緒方賢一)
ほか


と、今回も無事終了。
これから夏の作業にスパートかけますんで、
それ済んだらまた更新します。
次回なにしようかな。考え中。

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